私を幸せにできるのは私、美容のモチベーションも自分のため。誰かのためでなく、“自分のために綺麗でいること”が心地よく幸せに生きる基準になり、周りをもハッピーにできる。自愛をテーマにした下着ブランドのプロデューサーでもある俳優の長谷川京子さんに自分自身の愛し方について伺いました。
考えすぎて悩むことも落ち込むこともたくさんあるけど、自分で思考のスイッチを緩めてあげるようにしています
お話を伺ったのは…… 長谷川京子さん(45歳)
《Profile》
1978年7月22日生まれ。雑誌『CanCam』専属モデルとして活躍し、2000年に女優デビュー。ドラマ、映画、舞台CMなど多数出演するほか、TV番組のMCも努める。自身のブランドESS byではプロデューサーとして新たな分野にチャレンジしている。
実際の私は考え込んで根を詰めすぎちゃうタイプ。もしかすると、世間の持つイメージとはちょっと違うかもしれません(笑)。周囲のわずかな違和感や、自分の中での微差を繊細に受け止めて、しんどくなってしまう性質なので、たえず自身に「適度な適当で」「のらりくらりと」という声かけをしてガチガチの思考を緩めるようにしています。それが私にとって自愛の大きなテーマ。
それでも落ち込むことや心がザワザワすることもしばしば。いろんなものに影響されて自分をコントロールできなくなる時があるのですが、感受性に従いすぎると、日常生活では生きづらい。完璧な物事も完璧な人間もいないですから、ニュートラルを心掛けて敏感さと鈍感力のバランスを取るように努力しています。
それに、自分が幸せでないと人も幸せにできないと考えているので、家族、息子や娘のためにもまずは私が自愛できていないと(笑)。朝5時起きでのお弁当作りもあるし、子どもは分かりやすいボリュームご飯じゃないとテンションが上がらないので、毎日のご飯作りも手を抜けません。長男はママっ子でなかなか手がかかるし、長女は私に似て少しエモーショナルなところがあるので、分かってあげられつつ、似ているからこそぶつかってしまって喧嘩になることも。女同士の難しさが早くも表面化しているところなんです(笑)。
それでも物理的に体力的に子育ての大変さがピークだったころは30代だったので乗り切れたのかな。今は漠然と不安になったり、若いころとは違う体の不調が出てくる年代になったので、これからも自分の体調やメンタルと上手く付き合いながら、自愛を極めていきたいですね。
「自愛」をテーマにした下着ブランドを作っているほど、自身を愛する大切さについては深く考えてきました。答えを本に求めて日本文学や自己啓発本などを読み込んできましたし、今も読書は心の糧のひとつ。それでも不安が消えない時は、何が心を曇らせているのか知るために気になることをノートに書き出して、原因を探ります。表面的なポジティブを装ってもくさいものに蓋をするだけですから。
その作業を繰り返して気づいたのが、いつも同じことでつまずいている、つまり「やりたいことが充分にできていない」ことで自愛にかげりが出ているということ。お気に入りの香りに癒されたり、ドラマを楽しむご褒美タイムも大事だけれど、結局は自分のアイデンティティが確立される根本、本質的な部分を満たして初めて自愛が叶うんじゃないかな。
私の仕事は待って受けて期待された以上のものを返すのが基本ですが、もう少し自分発信の表現をアウトプットしていけたらいいなと考え始めました。このような心境に至ったのは、実は45歳という年齢を迎えてから。それまでの私は過去を引きずっていた部分がありましたが、最近はちょっと楽になれたというか、見る角度が変わって、フェーズが変化したという気がしているんです。
20代は無我夢中で忙しすぎてほとんど記憶がないですし、30代でも覚悟がまだできていなかったけれど、これから年齢を重ねていくことにも希望を感じていることも大きいですし、ようやく腹が決まったという感じかな。真面目に考えるあまりに、自分の感受性に従いすぎて苦しくなってしまうこともありましたが、年を重ねて力みが取れ、自愛の第2ステージに上がれた、そんな気がしています。
《衣装クレジット》
カーディガン¥27,500(デターム/ザ・ウォール ショールーム)パンツ¥74,800(ハルノブ ムラタ/ザ・ウォール ショールーム)チョーカー¥121,000、ピアス¥220,000(ともにエネイ/エネイ松屋銀座)パンプス¥124,300(ジャンヴィト ロッシ/ジャンヴィト ロッシ ジャパン)
2023年『美ST』12月号掲載
撮影/須藤秀之(TRIVAL) ヘア・メーク/美舟(SIGNO) スタイリスト/竹岡千恵 取材/柏崎恵理 編集/長谷川千尋