大人世代ならではの「バリュパ消費」に注目
――下半期のトレンド予測について、特に働くアラサー女性に深く関わってきそうなのはどちらになりますか?
「バリュパ消費」は若年層とアラサー以上でとらえ方が異なっていて、考え方をアップデートする必要があるのかなと思います。
――「タイパ」というとZ世代のイメージが強かったところから、大人世代にも徐々にその考え方が浸透してきているのでしょうか。
そうですね。ただ、「タイパ」と「時短」って同じ意味のように使われることもあり、しかし、「タイパ」には「時短」とはまた違った意味合いもあり……と、ひとくちに定義できないというのが若い世代には自然に身についているように思えますが、年齢が上がるについてそのニュアンスを理解してもらうのが難しいかもしれません。
ただ、お伝えしたいのは、「本質的な価値」を追求すると「自分がもっと楽になるんだよ」ということです。「時短」ってなんとなく罪悪感があるものだったと思うのですが、「タイパ」と言われるとポジティブな消費のイメージになりませんか?
めんどくさいとき、疲れたときに罪悪感を持って選択するのが「時短」だとすると、「タイパ」は「これが良くて、あえて選んでます」と自分を肯定してくれるような感覚になるというクチコミもアンケートで見られました。そこの部分が気持ちも変わってくるポイントかなと思います。
――たしかに、「タイパ」の方がより効率良く、賢く選択している印象があります。「時短」が忙しい中でなんとか時間を捻出しているイメージだとしたら、「タイパ」は浮いた時間をまた別の楽しいことに使えるようなイメージです。
ただ使う単語、呼び方が変わるのではなく、意識や生活にも変化をもたらしてくれる概念なのではないでしょうか。
――本質的な価値を重視するという流れでミドルコスメは今後さらに伸びていきそうですね。
そうですね、ミドルコスメの今後の伸びに期待しています。一気に景気が良くなることは無さそうですし、材料費の高騰などがまだまだ続きそうと考えると「この商品にその金額をかける価値があるのか?」というところは今後もシビアに判断されるのではないかと思います。
――大人世代は若年層に比べてコスメにかけられる金額も上がってくると思いますが、そうなると大人世代の「バリュパ消費」にはデパコスも「投資する価値があるもの」なら多く選ばれてきそうですね。
最近人気のクレ・ド・ポー ボーテのクレンジングシートは4,000円くらいするのですが、むしろ使いたいと思えるような使用感が話題になるなど、これはまさに「バリュパ消費」を代表するようなアイテムですね。
デパコススキンケアのライン使いも、最初にお金がかかりますが、成分の組み合わせの情報やさまざまな商品が世にあふれているなかで、ライン使いにすることで間違いない組み合わせになっていて選ぶ時間を短縮できるとなると、選ぶ価値があると思われ始めているようです。
メイクツールも最初にそろえる金額がかかるうえに手入れの手間も使う時の手間もかかりますが、最終的なクオリティが上がったり、一日トータルで見ると化粧崩れが防げるなどのリターンが得られるという点で注目されています。
ロージーローザの「マルチファンデパフ 2P」が総合3位に入っていることがこの流れを象徴していると思います。ツールがこんなに上位に入るのは珍しいことなんです。
「成分買い」はSNSの影響で新たなフェーズへ
――次は「おくち美活動」について詳しく教えてください。コロナ禍でオーラルケアに関心が集まりましたが、そこから少し時間を経てオーラルケアの中でもどのようなトレンドがあるのでしょうか。
ニオイケアから見た目に興味が移っていると思います。ベスト日用品1位になった「歯磨撫子 重曹歯ぬぐいシート」は今後さらに跳ねるかもしれません。今、リップメイクで「粘膜カラー」「うさぎ舌リップ」が流行っていて、粘膜カラーってどんな色? うさぎ舌ってどんな色? と考える機会も増えていると思います。
じゃあ実際自分の舌ってどんな色なんだろう……という流れで歯、舌の見た目が気になるのではないでしょうか。
――次は「旅備コスメ」について教えてください。1月1日に能登半島で大きな地震があり、防災意識が高まっているということでしょうか。
正直、継続的に「防災コスメ」「備え」といったワードが投稿され続けることはあまりないのですが、やはり一月はそういったワードがクチコミに増えました。好ましくはないことですが、災害をきっかけに防災について考える人が増えるようです。
――「旅備コスメ」であげられているドライシャンプーはこの上半期、お風呂がめんどうな時に便利という文脈でも話題になりましたね。
猛暑の対策としてドライシャンプー自体に注目が集まっていますよね。本来、衛生用品であるものが注目を集め、定番化したことで新たな使い方が生まれるという流れがあると思います。
ドライシャンプーでいえば、本来緊急時や体調を崩したときなどに使われていたものが一般的に使われるようになった……と、逆ルートをたどっているようにも思えます。
――最後に「成分フリーPick」について教えてください。酸化亜鉛フリー、グリセリングリーが例に挙げられていましたが、今後注目されそうな「○○フリー」は何ですか?
「アルコールフリー」も肌が敏感な方から注目されていて、クチコミでも少しずつ増えているように思います。去年のベストコスメ総合ランキングに入っていた「ハトムギ化粧水」はリニューアルでアルコールフリーになった点が高く評価されていました。
ただ、何の成分が何をきっかけに話題になるかというと、インフルエンサー発信のことが多いです。そういった意味で何が注目されるかはなかなか読みづらいですね。酸化亜鉛フリーもインフルエンサーさん発信です。
――今後もSNSは美容のトレンドに大きく関わってきそうですね。ありがとうございました!