暑くなってきてなにかとニオイが気になる季節ですが、一方で自分ではなかなか気がつきにくいのが「加齢臭」です。実はあなたも気がついていないだけでニオっているかも…!?今回は、女性の加齢臭の特徴や原因、そして、加齢臭の防止対策を紹介します。
1.加齢臭が発生しやすい6つの箇所って?
加齢臭とは油が酸化したもので、脂と青臭さの混ざった臭いがします。この臭いは汗とは異なり、モワッと漂うのが特徴です。ツンと臭うタイプではないため、本人が加齢臭に気づきにくい点が厄介なところ。加齢臭は男性が持つイメージが強いかもしれませんが、実は年齢を重ねるにつれ女性も加齢臭を放つようになります。
さらに女性の加齢臭の方が男性よりも長期間続くとも言われているのです。男性は加齢とともに皮脂量が減少していきますが、女性は年齢を重ねると皮脂量が増加していきます。このため、女性の方が加齢臭の発生期間が長いと考えられているのです。
加齢臭は皮脂の分泌量が多い場所から発生し、特に注意すべき場所は下記の6箇所です。
□頭皮
□背中
□お腹
□脇
□耳の後ろや裏
□首の後ろ
このうち最も皮脂の分泌量が多いのは頭皮。フケなど常在菌のエサも豊富にあり臭いが発生しやすい環境が整っています。
2.なぜ年齢を重ねると加齢臭が出てくるの?
独特な加齢臭の原因は、皮脂に含まれるノネナールという物質。ノネナールは、皮脂に含まれる「パルミトレイン酸」と、体内で活性酸素が脂質を酸化させた「過酸化脂質」が結びつき、皮膚に存在する細菌によって酸化されたり分解されたりすることによって発生します。
脂肪酸の一種であるパルミトレイン酸は、若い人の皮脂にはほとんど含まれておらず、加齢によって増えていくと考えられています。さらに、加齢によって抗酸化力が低下し過酸化脂質も増えやすくなるため、年齢を重ねるごとにノネナールが生成されやすくなってしまうのです。
女性の場合、更年期を迎え女性ホルモンの分泌量が減少し始めると、加齢臭が強くなることがあります。女性ホルモンには皮脂の分泌や酸化を抑える作用がありますが、女性ホルモンの分泌量が減ることで相対的に男性ホルモンの量が徐々に優位になり、皮脂量の増加や酸化が進みやすくなるからです。女性の場合は30代後半から加齢臭の原因であるノネナールが増え始め、40代になると急激に増加し加齢臭が発生することが多いのです。
3.加齢臭を防ぐためのするべきセルフケアって?
加齢臭を防ぐためには、体の外側と内側の両方からアプローチしましょう。今日からすぐに始められる対策法を紹介します。
①シャンプーや体の表面の対策
皮脂を適切にケアして加齢臭を防ぎましょう。特に、皮脂の量が多い頭皮や背中はしっかりとした対策が必要です。
ただし頭皮の臭いを気にするあまりシャンプーで洗いすぎるのは逆効果。市販のシャンプーは洗浄力が強く、洗いすぎると必要以上に皮脂を洗い流して頭皮の乾燥を招きます。頭皮が乾燥すると過剰に皮脂が分泌されてしまうため、かえって加齢臭を強くする原因になってしまうのです。
シャンプーは1日1回。力を入れてゴシゴシ洗うのではなく指の腹で頭皮を優しくマッサージするように洗いましょう。また、頭皮が湿っていると雑菌が繁殖しやすくなるため、お風呂から上がった後はしっかりとドライヤーで乾かしてください。
頭皮以外でも、皮脂や汗をこまめにケアして清潔に保つことが対策のコツ。体臭ケアに対応した汗拭きシートや制汗剤、薬用石鹸の活用がおすすめです。
頭皮と同様に、体をゴシゴシ洗うと皮膚常在菌のバランスが崩れて皮脂分泌が過剰になってしまうことがあります。体を洗うときは、ボディソープをしっかり泡立てて、背中や首など臭いが出やすい部位を中心に優しく丁寧に洗いましょう。
特に表面積が広く皮脂量の多い背中は念入りにケアして。
②衣服の臭いを消す
1日着た衣服はすぐに洗濯して臭いを消しましょう。衣服には皮脂が付着していたり繊維に臭いが染み込んだりしているので、着回したり脱いだ衣服を放置したりしていると、臭いの発生源となってしまいます。こまめに洗濯して、衣服から皮脂をしっかりと落とすことが重要です。
臭いが強く洗濯してもなかなか消えない場合には、つけ置きがおすすめ。40度以上のお湯に弱アルカリ性洗剤を混ぜた洗浄液に、10分程度つけ置きしてから通常通り洗濯を。臭いが消えない場合は少しずつつけ置きの時間を延ばして調整するといいでしょう。ただし一晩中つけ置きするのはNG。つけ置きしている洗浄液は衣類から多くの汚れが出ているため、一晩中つけ置きすると洗浄液の汚れを再吸収してしまう可能性があります。
③食事は動物性脂質の多いものを控え、抗酸化作用のあるビタミンを摂る
体の内側からの老化防止策には、食事の改善も重要。食べ物も臭いに大きく影響します。脂肪分は加齢臭の原因になる過酸化脂質を増やすため、牛肉、豚肉、バター、チーズ、揚げ物など、動物性脂質の多い食品は控えましょう。野菜や果物、発酵食品など、抗酸化作用のある食品は積極的に取り入れるのがおすすめです。
特に、ビタミンA、C、Eには活性酸素を抑える抗酸化作用があるため、脂質の酸化を抑制し、加齢臭を軽減させる効果が期待できます。これらのビタミンを豊富に含む食材は、以下のようなものがあります。
【ビタミンAを豊富に含む食品】
・レバー
・にんじん
・ほうれん草
・卵
【ビタミンCを豊富に含む食品】
・パプリカ
・ブロッコリー
・キウイ
【ビタミンEを豊富に含む食品】
・かぼちゃ
・アボカド
・ごま
意識して日々の食事に取り入れてみてください。
④腸内環境を整える
体の内側からの臭い対策として、腸内環境の改善も重要です。ヨーグルトや納豆などの発酵食品を積極的に摂取しましょう。腸内環境が悪化すると活性酵素が増加します。活性酸素は脂質やパルミトレイン酸を酸化させる働きがあるため、加齢臭の原因であるノネナールの生成を促してしまうのです。
発酵食品を摂取するときは、善玉菌のエサとなる海藻類やキノコ類、イモ類、ゴボウ類などのオリゴ糖や食物繊維を多く含む食品と一緒に摂ると腸内環境の改善により効果的です。
⑤漢方薬を試してみる
加齢に伴う体臭の改善には、漢方薬の活用もおすすめ。
体臭対策には「自律神経を整えてストレスを軽減する」「水分代謝を整え過剰な汗を抑える」「臭いの原因となる老廃物を排出する」といった漢方薬を選ぶといいでしょう。
漢方薬は症状を和らげるだけでなく体質改善も得意としているため、加齢臭の根本改善を目指せます。
・知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
泌尿器系の働きを高め、水分代謝を改善して体にたまった余計な熱を冷ます効果が期待できます。手足の火照りや、更年期のホットフラッシュにも用いられます。
・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
体にたまった熱を冷ますことで、精神を安定させイライラや神経の高ぶりを抑える効果が期待できます。精神不安、神経過敏、寝汗などにも用いられます。
漢方薬は、自分の体質や症状に合ったものを選ぶことが重要です。うまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく副作用が起こる場合があります。漢方薬を使う際には、漢方薬に精通した医師や薬剤師に相談して、体質や症状に合ったものを選んでもらうことをおすすめします。
教えてくれたのは…「あんしん漢方」薬剤師 碇純子さん
編集/根橋明日美 写真/PIXTA