店主の個性が色濃く反映された店が路地に点在しているのも京都の魅力。買い物の合間に足を運びたくなる、居心地のよいカフェも増加中。夏の街歩きをゆっくり楽しんで。京都在住のライター、コーディネーターの大和まこさんがセレクト、取材しました。
店主のセンスに触れる時間こそ京都旅の醍醐味。
京都は小商いの街だというけれど、実際、店主の個性をそのまま映したような店も数多い。セレクトショップにギャラリー、古着店、書店、焼き菓子店、そしてカフェまで。幾分個性強めの店が成り立つのも、懐の深い京都の街ならではだ。ビルの上階に、路地の奥に、ひょっこり現れる店を見つけたときの嬉しさもある。店主と言葉をかわして、思いもかけないものを手に入れたときの喜びったらない。店主それぞれのセンスを買いに、味わいに。暑さ対策を万全に、昼の街へ繰り出してほしい。
余波舎(なごろしゃ)/NAGORO BOOKS[西陣]
心に残る波をいくつも立てる本と出合う喜びを伝える。
名物喫茶『西陣ほんやら洞』があった場所に、新刊を担当する涌上昌輝さんと、古書担当の佐光佳典さんの2人が開いたブックストア。「たとえ売れなくても、自分の手元にあっていいと思える本を並べたい」と涌上さん。新刊は文芸書から料理本、リトルプレスに香港で買い付ける雑誌まで。古書は文芸と人文が中心。屋号の余波とは風がおさまった後もまだ残る波のこと。その時差が読書体験に通じると名付けたという。
新刊と古書が半々ほど。一角にはギャラリーコーナーもあり、不定期に企画展が開催されている。
香港の雑誌『Being Hong Kong』や、書店『MOUNT ZERO』が出版した本も扱う。
1階にはイタリアンレストランが入る。料理本が充実しているのはそのため。
●上京区大宮通寺之内上ル前之町443‐2F 13:00~19:00 月曜休(祝日の場合は営業) @nagorobooks
歩く鳥[冷泉川端]
ストーリーを持った、北欧ヴィンテージと洋服。
琵琶湖疏水沿いのビルの上階に現れるセレクトショップ。人気雑貨店でバイヤーを務めた酒向歩実さんとディレクターの八尋鶉さんが、好きが高じて店を構えたという。北欧ヴィンテージはグンナー・ニールンドやエリック・ホグランの作品、デンマーク・スーホルム窯のランプを中心に、実用性の高い食器も充実。洋服は国内ブランドのJensや、欧米の古着まで。丁寧に選ばれたストーリーのあるアイテムが輝きを放つ。
デザイナー、ヨハネス・ハンセンが1960年代に手掛けたNoddeboシリーズなど和食器にインスピレーションを受け作られた器は、日常の食卓にも取り入れやすそう。
ビルの1階にはパンとワインとアテの店『mati』が入る。ビル内を巡るのも楽しい。
●左京区聖護院東寺領町8‐1‐3F TEL:050・3138・2701 13:00~19:00(土・日・祝日11:00~) 水・木曜休
cite(シテ)[河原町六条]
パリ経由で京都に着地した古着×コーヒーの組み合わせ。
パリでパターンの勉強をしていた吉田明史さんは、いつしか蚤の市などで古着を収集するように。一方、フルート修業のためパリへ渡った台湾出身のテイさんは、休憩中に飲んだコーヒーに魅了され、旅先のオスロでスペシャルティに開眼。台湾で自家焙煎の修業を始めた。そんな2人が営むのは、コンディションのよいものを厳選した古着と、浅煎りコーヒーが主役のカフェ。片方を目的に足を運んでも、両方の虜になってしまう人も続出の様子。
コロンビアやコスタリカの豆をセレクト。コーヒー¥570~、パイナップル入りマドレーヌ¥390。
ハイブランドからミリタリーまで、レディースとメンズの両方を扱う。ほかにシルバーのアクセサリーや花器も。
入り口はカフェ、奥が古着の空間。
●下京区紺屋町375‐4 8:30~17:00 火・水曜休、ほか不定休 @cite_kyoto
利口.[河原町六条]
プロダクトから納豆まで“利口”なものをセレクト。
近ごろ注目が集まる五条界隈にあって、ひときわ異彩を放っているのが『利口.』。店主は納豆雑誌『納豆マガジン』編集長にして、納豆アパレルブランド『ネバネバビーン』を主宰する村上竜一さん。メガネや時計、照明といった近未来感のある古物から、オリジナルの洋服、陶芸家・寺田安那さんの作品、古道具『itou』に別注したニョロニョロ棒、そして納豆まで、村上さんが利口だと感じるいいものが並ぶ。
ラッキーなっとー黒豆(右)、赤大豆×青大豆のオリジナル京納豆(左)各¥440。
不定期でブランドやショップのPOP‐UPも企画。
京都と聞いて連想するものを描いたRICOW×モリモトアオイによる、はしやすめTシャツ¥6,800。
●下京区本塩竈町534 R5.5 1D 11:00~18:00 不定休 @ricow_kyoto