気温がグッと低くなり冷え込む夜は、温活が欠かせません。また、暖かさをキープできれば、自然と良い睡眠へと導かれます。そこで帰宅してから寝るまでに過ごす部屋の環境づくりから過ごし方まで、夜の温活術をレコメンド。
帰宅後、お風呂上がり…熱を逃がさない部屋って?
仕事から帰ったら、暖かい部屋でゆっくり過ごすに限る。そこで温活に適した部屋づくりから、リラックスできる服装、夜に食べるべきものまで、部屋で実践すべき夜の温活を指南します。
副交感神経を優位にし、休息モードに導く。
「体温は日中をピークに、夜にかけて緩やかに下がっていくことで、脳と体の休息を促します。だから帰宅後は心地よい空間でリラックスしながら過ごすことが大切。すると心拍数や血圧が低下し緊張から解放され、睡眠スイッチが入り、深く眠れるようになります」とは内科医の石原新菜先生。
さらにお風呂上がりの過ごし方について教えてくれたのは、睡眠コンサルタントの友野なお先生。
「入浴中は深部体温が一時的に上がりますが、その後、体は放熱で冷まそうとして深部体温は下がります。よって入浴後はゆったり過ごすことが大切。好きな香りを嗅いだり飲み物を飲んだり、リラックスすると、副交感神経が優位になりスムーズに入眠できます」
1、部屋の壁までしっかり暖める。
窓同様、壁にも冷気が溜まりやすいため、エアコンをつけている時は、空気だけではなく壁までちゃんと暖まっているか確認を。「壁を手で触って、ひんやりしなければ暖まっている証拠です」(友野先生)。もし壁がなかなか暖まらない場合は、壁用の断熱シートを貼ることで、保温や断熱効果を上げることができる。
2、リラックスできる香りで安眠効果アップ。
いい香りを嗅ぐと、気持ちが落ち着く。「香りは自律神経を整えてくれます。またラベンダーやベルガモットの香りは鎮静作用があり、睡眠の質の改善にもよいです」(友野先生)
3、温活晩酌には赤ワイン、熱燗、焼酎のお湯割りを。
ビールやハイボールは体を冷やすため温活では控えるべき。「アルコールは血管を拡張する効果があるため、飲みすぎなければリラックスタイムに飲んでOK。ただし温かいものがベスト。赤ワインも温めて、シナモンを振ると美味しいだけでなく、すぐに全身がぽかぽかしてきます」(石原先生)
4、温かいハーブティーで心身ともにリラックス。
ハーブティーはリラックス効果が高い。「体を温める作用や寝つきを良くするなど、お悩みごとにブレンドされているものがあるので、それを選んで飲むのも◎」(友野先生)
5、ロンT&スウェットで心地よい室温が最適。
冬の部屋の適正温度は20~23°Cといわれているが、建物によって構造が異なるし、個人差もある。「自分が最適だと思える温度を、室温計で測って、それを基準にするのはあり。ただし室温計がない場合は、ロンTとスウェットを着用して、心地よく過ごせるぐらいの温度を目安にして、環境を整えましょう」(石原先生)
6、目元をじんわり温める。
目元を温めると手足の温度が上がることが、ここ数年の研究で明らかに。「目の周りを適度な温度で温めると手足の皮膚温が上がり、体の熱を手足から外に逃がす放熱が促進されます。なのでお風呂を上がってから寝るまでの間に、ホットタオルや、蒸気が出るアイマスクなどで温めるとよいでしょう」(石原先生)
7、レッグウォーマーで足元を温める。
足元が寒いと、末端の冷えを招きやすい。「心臓から離れた足首からふくらはぎの部分は、冷えやむくみが出やすいため常にレッグウォーマーで温めておくのがおすすめ。私もふだんからレッグウォーマーをはいています」(友野先生)。「体温は上半身が高く、下半身が低いため、体温差を少なくするために足元を温めることが大事です」(石原先生)
8、ゴルフボールなどで失眠(しつみん)のツボを刺激。
夜になってもなかなかリラックスできない時は、足裏のかかと中央にある「失眠」というツボを刺激すると安眠効果が高まる。「手だと押しにくいので、ゴルフボールなど硬めのもので刺激するのがおすすめ。ついでに土踏まず周辺もほぐしてあげると、足元がぽかぽかしてきます。夜のリラックスタイムに取り入れてみてください」(友野先生)
9、発酵食品&食物繊維を摂取して睡眠の質を向上。
腸内細菌は睡眠の質に関与しているため、発酵食品や食物繊維を摂ると寝つきが良くなる。「味噌汁にショウガや唐辛子を入れると腸に優しく、体も温まります」(石原先生)。「ごはんをよく噛むと『食事誘発性熱産生』効果で、栄養素の一部が体熱となり代謝が上がるので、ゆっくりしっかり噛んで食べるようにしましょう」(友野先生)
10、夜ごはんは積極的にタンパク質を摂取。
「タンパク質は、筋肉の合成を促進するだけでなく、エネルギーの約30%が体熱産生に使われるため、体温が上昇しやすく、温活にもピッタリな栄養素です」(石原先生)
11、寝る前は激しい運動を控え、ゆったりと過ごす。
夜はメラトニンの分泌が高まり、その作用で深部体温が下がり、体が眠る準備を始めるため、動き回るのはご法度。「手足を温めたり、温かい飲み物を飲んだりと適度な温活はOKですが、心拍数や血圧を上げるような運動で、無理に体温を上げようとするのは、睡眠の妨げになる可能性があります」(友野先生)
12、窓から逃げる58%の熱を厚手のカーテンで防御。
部屋がなかなか暖まらない原因のひとつが窓。「室内の熱は、窓から58%が逃げるといわれているため、窓の断熱が必要不可欠。厚手かつ少し丈長めのカーテンを使用して対策を。それでも寒さが気になる場合は、窓に気泡緩衝材を貼ったり、シャッターがある場合は夜だけ下ろしてみて」(石原先生)
プロフィール
石原新菜先生
内科医。イシハラクリニック副院長。温活の大切さを伝える活動に尽力。講演、メディア、執筆活動と幅広く活躍中。新著に『免疫力アップ! 温活ランニング』(主婦の友社)。
友野なお先生
睡眠コンサルタント。SEA Trinity代表取締役。行動療法からの睡眠改善、快眠を促す寝室空間づくりが得意。講演活動、商品開発やコンサルテーション、執筆活動などを行う。
イラスト・ユリコフ カワヒロ 取材、文・鈴木恵美
anan 2425号(2024年12月4日発売)より