日本では「若者の恋愛離れ」が深刻だといわれています。一体理由は何なのでしょうか? ライターの仁科友里さんに、詳しく教えてもらいました。
仁科友里
こんにちは、ライターの仁科友里です。
「若者の恋愛離れ」という言葉をみなさんも聞いたことがあると思います。なぜこのような現象が起きるのか、一緒に考えていきましょう。
日本の「若者の恋愛離れ」の現状とこれまで
楽天オーネットが2019年に新成人となった若者に「恋愛・結婚に関する意識調査」 を行ったところ、交際経験のある男性は59.2%、女性は62.5%で、2017年の調査より上昇していることがわかりました。2019年現在交際相手のいる男性は27.5%、女性は32.7%です。
恋愛する気になれない現代の若者
同社が調査をはじめたのは1996年ですが、この年の交際相手がいる率は50%です。しかし、リーマンショックが起きた翌年の2009年には26.9%と約半分に落ち込んでいます。もっとも交際相手がいる率が低くなったのは、東日本大震災が起きた2011年。これらから考えると、おカネがなかったり、災害が起きて安全性が脅かされた状況では恋愛する気にならないといえるのではないでしょうか。
現在と対照的なバブル期の恋愛
恋愛至上主義といえば、バブル期が思い出されます。日経平均は3万円を超え、就職も超売り手市場。こうなると、学生の特権である、自由な時間を恋愛にあてようと思っても不思議はありません。
当時大学生だった男性に話を聞くと、「9月1日になったら、ホテルのスイートルームを予約する。彼女がいなくても、とりあえず予約」「彼女にティファニーのアクセサリーをプレゼントするために、道路工事のバイトをする。彼女がいなくても、とりあえず」と話していました。お金をかけなければ、女性はついてきてくれない時代でしたし、好景気なのですぐに割のいいバイトが見つかったそうです。
男性が女性をリードするものという考え方が強かったので、男性は「慣れていない」と言われることを恐れ、恋愛マニュアルを熟読した時代でした。
第二次ベビーブーマーも恋愛至上主義だった
バブルがはじけても、恋愛至上主義は残っていました。私もこの世代生まれなのですが、第二次ベビーブーマーといわれる時代に生まれた人は、ともかく人数が多い。受験も大変でしたし、氷河期といわれる就職難の時代の中、内定を勝ち取らねばならぬという、「人生是競争」という空気の中で育ちました。
常に“勝ち負け”をつけてしまうクセがあるので、恋人がいる人>恋人がいない人という見方をしている人も多かったのです。
負けていると思われるのが嫌で、無理に彼氏を作っていた人もいるのではないでしょうか。
このように恋愛をしていた時代というのは、好景気や若者ならではの競争心にあおられていたといえるでしょう。
当然の結果? 若者が恋愛から離れる理由
今の若者は経済的にも恵まれていませんし、少子化で人数も少なく、人間同士の摩擦も嫌います。男女平等教育が浸透し、男性だからリードすべきという考え方もなくなっていることでしょう。
それに加えて、恋愛をしなくなった原因の最たるものは、SNSではないかと私は思っています。
恋愛がSNSに取って代わられた
いいね! やフォロワーが増えるとうれしいでしょう。インフルエンサーとなれば、商品の宣伝を企業に頼まれるかもしれません。SNSの世界で有名になれば、ちょっとした芸能人気分に浸れるかもしれませんし、芸能界デビューも夢ではありません。
実はこれとまったく同じことを、昔は恋愛でしていたのでした。
男性から誘われることはいいね! と一緒。告白される人数が多いことは、フォロワーが多いのと同じことです。きれいな子、モテる子は店の格を高めるからという理由で、ディスコでは無料で遊べたそうです。かわいい子が集う店に芸能プロダクションの関係者も出入りし、そこからスカウトされて芸能界デビューした人もいました。
かつての若者は恋愛で承認欲求を満たしていましたが、今の若者はそれがSNSにとって代わったのではないでしょうか。
バブル時の男性は性欲を発散しようと思ったら、お金を握りしめてお店に行くか、女性を口説き落とさなくてはいけませんでしたが、今は出会い系サイトもありますし、過激な動画も簡単に手に入ります。
恋愛とSNSのちがう点といえば、恋愛をすれば、一度くらいは意見が合わず喧嘩をしたり、相手に幻滅したりすることもあるでしょう。しかし、SNSは嫌になったらブロックして終わりにすることができます。
傷つくかもしれない恋愛より、手軽にいい気持になれるSNSを選ぶのは、無理もありません。