大人も子供も慣れない暮らし方を求められ、ストレスもそろそろMAXに……。ソウル五輪シンクロ・デュエット銅メダリストで現在はメンタルトレーナーの第一人者・田中ウルヴェ京さんに、新時代を生き抜くための発想の転換について伺いました。
田中ウルヴェ 京さん
ソウル五輪シンクロ・デュエット銅メダリスト。米国大学院で修士号取得(スポーツ心理)。IOCマーケティング委員。スポーツ庁スポーツ審議会委員。なでしこジャパン・車いすバスケ男子日本代表等のメンタルトレーナーを務める。夫はフランス人、一男一女の母。
Q.何もやってくれない夫に腹が立っているのですが
ー 家族が家にいる時間が増えて、家事が増えたにもかかわらず「何もやってくれない夫」に腹が立っているのですがどうすればいいでしょうか?(T.Sさん 45歳 会社員)
A.本当に手伝ってほしいなら、何をしてほしいのか具体的に伝えましょう。
この質問には2つの回答ができます。
まず本当に手伝ってほしいですか? とお聞きしたい。 私の経験上、こういったご相談の場合、ほぼ7割は本当は手伝ってほしくない本音があります。
例えば旦那さんが台所に立ち、自分より効率よく上手かったら、私の存在意義が危うくなる。本当は手伝ってほしいんじゃない。じつは美味しいねとか、いつもありがとうとか、ねぎらいの一言がほしいだけ、という人もいます。そうであればその思いをちゃんと伝えましょう。
逆にもし本当に家事を分担してほしいなら、ただ「手伝って」ではなく、「お皿をシンクに持っていってくれると助かるわ」とか、何をしてほしいのか具体的にお願いしましょう。
あなただっていきなりシステムエンジニアの手伝いをしろと言われてもできないですよね?慣れないことを手伝うのがいかに難しいか想像してみましょう。
夫が不慣れで不器用だからとイライラすると、やる気が削がれます。これから先夫婦で年を重ねていくのですから、双方にとって得になる「意思の伝え方」を工夫したいものです。
Q.姑やご近所さんの距離を詰めてくる振る舞いに困っています
ー 姑やご近所さん、「ジワジワと距離を詰めてくる振る舞い」に困っています。いい距離感を保つにはどうしたらいいでしょう(K.Tさん 42歳 主婦)
A.〝よい塩梅〟は人それぞれ。 相手がなぜそうするのか 想像してみてください。
職場、夫婦、お姑さん……どんな人間関係にもちょうどよい塩梅の距離感というものがあります。難しいのは、お互いの〝よい塩梅〟が違うからなんですね。
ウザいと思ったら、一呼吸おいて相手はどういう感情で距離を詰めてきてるのかな? と考えてみて。
高齢者の方はコロナの感染予防のために不要不急の接触を避けて、と言われていたし、お姑さんは寂しいだけかもしれない。ただ誰かと繫がりたい、あなたなら許してくれると思っているのかもしれません。
相手の気持ちを想像するだけで、接するときの表情が変わります。あなたが嫌だと思ってることをうまく伝えられるようになるのです。「ちょっと今立て込んでいて……ごめんなさい」といった断りの言葉も、あなたの表情によって伝わり方はまるで変わってきます。
旦那さんへ愚痴るときも同じ。おばあちゃんの気持ちもわかるんだけどね、と。表には見えない人の思いを想像し、冷静に状況を伝えられると周囲もあなたを助けやすくなる。そういうママの背中を見て育った子もまた人の気持ちを想像する、表には見えない大切なことを推し量れる、つまり感情指数が高い子に育ちます。
これはとても大事なこと。STORY世代のママが皆これができるようになると世の中変わると思います。
Q.子供に怒ってしまうことが増えています
ー 授業や習い事がオンラインとなり、在宅時間が増え、「ゲームばかりする子供に怒ってしまうことが増えています」。また、学習意欲も低下しているようですが、モチベーションを上げるような声かけなどあったら教えてください。(M.Iさん 44歳 派遣社員)
A.怒りは愛情の表れ。でも 怒っても何も変わりません。
この場合の怒りの感情は愛情による表現のようですね。気持ちはよくわかりますが、でも怒って何かをやめさせられたこと、ありますか? そして怒られたからやめる、そんな子に育てたいでしょうか?自分で責任をもって行動を選べるようになる、それができるようになることが重要では。
また、怒りの本当の原因は母親自身の体裁のためということも多いんです。自分の心の中を見つめてみることも大切ですね。
家で勉強もせずゲームばかりしている。まあ、ゲームのシステム開発はそりゃ巧妙ですからね、ゲームは脳が没頭するように仕込まれている機械ですから。ゲームを続けるメリットとデメリットを一緒に考えるということは私が子育てでよくやっていたこと。子供には行動に責任を持つ方法を伝えたかったから。
母親の自分が先回りして答えを出さないことが大事です。また、「モチベーションを上げる」という言葉には違和感があります。お母さんにできるのは、まず自分自身のモチベーションとは何かを考えること。
あなたもお子さんの隣で勉強してみてはいかがでしょう。そうすると、勉強って楽しい時も嫌な時もあるな、とか、親から怒られるとやる気は削がれるな、と気づけたりもします。
人からモチベーションを上げてもらわないと行動できない子供には育てたくないですよね。人生を真に楽しむとはどういうことか母親の背中で見せられるといいですね。