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わっ、かわいーっ!…話題の「考え抜かれたヘタウマ絵」を見てきた!

ヘタウマ絵で人気の画家、熊谷守一の展覧会が東京国立近代美術館で開かれています。そのルックスや生き方などから “超俗の画家” とも呼ばれた彼の作品は、シンプル&ユーモラス。見ているだけで何とも幸せな気持ちになれちゃうアート展をご紹介します!

なごめるアートがいっぱい!『没後40年 熊谷守一 生きるよろこび』

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【女子的アートナビ】vol. 96

この展覧会は、熊谷守一(1880~1977)の没後40年を記念する大回顧展。97歳まで生きた画家の代表作《猫》をはじめ、絵画やスケッチ、日記など250点以上が集まっています。

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ゆるカワな絵で人気を博した熊谷画伯、ルックスが個性的で、20年間ほとんど自宅から外に出ることなく絵を描いていたことから “超俗の画家” とも呼ばれていました。いかにも自由気ままに生きてきた画家のようにも見えますが、実はかなりの苦労人。

岐阜県に生まれた熊谷は東京美術学校(現・東京藝術大学)を卒業後、故郷に戻って材木を扱う仕事などにつきます。その後ふたたび上京し、友人の援助を受けながら作品を制作。しかし生活は苦しく、戦争や家族の死などの試練が彼を襲います。そんななかでも描き続け、おなじみのシンプルな画風を確立したのは60代になってから。代表作といわれる作品の多くは晩年に描かれています。

花も餅も超シンプル!

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熊谷作品の特徴は、明るい色彩とシンプルな形。例えば《ハルシヤ菊》という作品は花びらが何枚もあるキク科の花を描いたものですが、花の部分が単純な円形になっています。まるで目玉のようにも見えて、何ともユーモラス。また、地面には花と同じような円い形のカタツムリも描かれています。

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《伸餅》もたまらなくシンプル。3個の餅と包丁が1本描かれているだけなのですが、とても印象に残る絵です。餅はそれぞれ微妙に形が異なり、さらに白い絵の具を塗る筆の方向なども変えて奥行きが出るようにしているとのこと。シンプルなものほど絵にするのは難しいといわれますが、餅をこれほど味わい深く表現できるなんて、熊谷画伯、やはり只者ではございません。

代表作はゆるカワ猫!

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熊谷守一の代表作といえば、《猫》。見ているとほっこりしてくる作品です。さらりと描いた絵のように見えますが、猫の骨格や体の特徴などが正確にとらえられていて、技術的にはかなりハイレベル。シンプルな絵なのに猫のやわらかさまで伝わってきます。この作品を描いたのは、彼が85歳のときでした。

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会場では、ほかにもさまざまな猫作品を見ることができます。

考え抜かれたヘタウマ

素朴な作品が多いため、もしかして熊谷画伯ってちょっとヘタ…? と思ってしまうかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。展覧会では若いころに描いた裸婦像や肖像画なども展示されていますが、デッサン力の高さに驚かされます。

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重厚な油彩画から次第に明るくシンプルな画風に変わっていきましたが、ただ単純化したのではなく、色彩学などの科学的根拠に基づいてヘタウマ画風を確立。

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例えば《稚魚》という作品では青地の背景に赤い魚を描くことにより、色彩の効果で魚が動いて見えるように計算されているとのこと。ヘタウマの背景には画家のさまざまな努力と工夫が盛り込まれていたようです。

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会場では油彩画のほかに水墨画や書も展示。特に、即興で仕上げられたという書が何とも味わいがあり、画家の人柄が伝わってきます。

この展覧会は3月21日まで開催。ぜひ足を運んで熊谷画伯の魅力に触れてみてくださいね。

Information

会期:~3月21日(水・祝)

休館日:月曜日(ただし 2月12日は開館)、2月13日(火)

時間:10:00 ~ 17:00(金、土曜日は20:00まで、入館は閉館30分前まで)

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