「年齢を重ねたら、セックスはしないもの?」答えはNO。いくつになっても楽しく、健やかな性生活を送りたいと思うのは、当然のことです。だけど実際は、年齢による体の変化などで若い頃のようにセックスできない、セックスが痛い、セックスが怖いといった悩みも少なくないようです。性の健康に関するアクティビストでありメノポーズカウンセラーの小林ひろみさんに、40才からの性生活をより良いものにするためのアドバイスをいただきます。
セックスに関する最新調査でわかったこと
「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階に理論化(ピラミッド図)にした心理学者アブラハム・マズロー(1908-1970)。ピラミッドの広い底の部分にある生理的欲求には「呼吸」「排泄」「食」「睡眠」「性」があり、生命維持に必要なものがほとんどですが、性欲だけは食欲、睡眠欲などと比較しても我慢できないほどのものではないかもしれません。むしろ、性=セックスとするならば、女性の中にはさほど重要と感じない方もいるのではないでしょうか。それを裏付ける数字が、最新のセックス調査ジェクス ジャパン・セックスサーベイ2020にありそうなので見てみました。
この調査の中の「セックスしたいか」という質問の回答で「あまり思わない」「全く思わない」という回答を合わせると
30代……42.7%
40代……51.7%
50代……69.2%
60代……82.0%
実に、40代以降の半数以上の回答が「セックスをしたいと思わない」結果に。「私だけではない」とホッとしている方もいるではないでしょうか。
セックスがしたくないのはわかりましたが、実際に1年以上セックスをしていない女性はというと
30代……31.2%
40代……46.8%
50代……65.8%
60代……69.4%
婚姻関係のあるカップルのセックスレスは51.9%とこの調査で過去最高に。もちろん、セックスは重要と思う人もいるし、性に関する欲求には個人差があります。私は、潤滑ジェルの販売や性交痛と人に関わる活動家として仕事をしていますが、どちらかというと、セックスはあってもいいし、なくてもいいとも思っています。要は、なくても困らないと個人的には感じています。
セックスしたくない理由は性欲減退?それとも
でも生理的欲求に性欲が含まれているのに、なぜセックスをしたいと思わない女性が増え、セックスレス化が進んでいるのか。そのヒントになる「セックスに関する悩み・コンプレックス」という質問がありました。女性の回答の半数は「特に(悩み)なし」ですが、その次が「快感が得られない」と「オーガズムに達することができない」。もしかしたら、気持ちよくないからセックスレスになっているのかもしれないと思えるような結果でした。私がよく耳にするのは「性欲がなくなった」という声。その背景には気持ちいい体験の少なさが関連しているのかもしれません。
全国民が回答したわけではないし、あくまでも20〜60歳男女を対象とした5029サンプルの結果の一部。仮にセックスレスの人が半数いたとしても、私はその方たちが幸せならセックスレスのままでいいのではと思います。ただ、マズローの欲求5段階説にある生理的欲求に含まれる性欲は、呼吸や睡眠などと一緒に自然と体が欲求する項目なのです。私たちがあまり必要と感じない「性欲」をそのままにしておいていいのか考えさせれました。
あって悪くない、あってもいい、あった方が良い…快楽は悪いことではない
そこでふと先日LINEでやりとりした友人との会話を思い出しました。
友人が、セックスレス5年のお友達に使い捨てのラブグッズをプレゼントしたそうです。1回分の電池が切れたら捨てるので自宅で保管する必要がなく、気軽に使えるタイプのものだったそうです。そのお友達は「まさか自分に(グッズが)必要だと思わなかった」と喜びの感想をくれたそう。そして自ら別のグッズを購入したと報告があったとのこと。アダルトグッズというと性欲旺盛な人が使うものという印象があるかと思いますが、それは昔の話。今は女性が楽しめるよう実生活で悩んだ女性たちが開発したジェルやグッズがあります。それらは共通して色や形などのデザイン、素材の細部に至り思いやりや優しさを感じられるものが多いです。潤滑ジェルのように潤いをサポートしてくれたり、性交痛などで挿入に抵抗がある時は、あてるだけで気持ちがいいグッズもあります。カップルで使ってもいいです。しかしセックスは相手とするものとは限らず、一人で行うセックス=ソロ・セックスだっていいということ。相手と行うセックスで気持ち良さがなく、オーガズムを得られなくても、自分でコントロールできるソロ・セックスなら多少練習は必要かもしれませんが、気持ち良くなれるかもしれません。先ほどの女性のように、セックスレスでも普通に生活できているし問題なかったけど、その快感「あって悪くない」から「あった方がよい」となるのかもしれません。ラブグッズの使用のハードルが高ければ、段階的に最初は潤滑ジェルを使用してタッチングから、心地よさを得たらラブグッズと進むといいかもしれません。ネットショップではラブグッズは18歳以上の年齢確認のフィルターが出てきます。このフィルターが女性にとってハードルを上げてしまうようにも思えますが、制限年齢は異なりますが酒類と同様、未成年の購入防止用の規定ですので驚かないでくださいね。
その快楽、「あって悪くない」から始めてみるのもいいかもしれません。
参考資料:一般社団法人 日本家族計画協会ジェクス ジャパン・セックスサーベイ調査報告書
ライター/小林ひろみ
メノポーズカウンセラー。NPO法人更年期と加齢のヘルスケア会員。日本性科学会会員。性と健康を考える女性専門家の会 理事。デリケーゾーンブランドYourSide、潤滑ゼリーの輸入販売会社経営の傍ら、更年期に多い性交痛について情報発信を行う。幅広い性交時の痛みに関する情報サイト「Fuan Free (ふあんふりー)」を運営。