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「顔が好き」だけでは恋愛がうまくいかない理由

恋愛・結婚

今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回はものすごい愛さんのイタい恋。

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親愛なるマイナビーウーマン読者のみなさま、ごきげんよう。薬剤師として働く傍ら、エッセイストとして活動をしております、ものすごい愛です。

主に夫との幸せな結婚生活についてのエッセイを書いたり、読者の方々の恋愛相談にお答えしたりしているせいか、たまに「ずっと順風満帆にここまで来たんだね」「相談に乗れるくらいだから恋愛マスターなんでしょ」なんて言われることもあるのですが……そんなわけあるかーーーい!!!

えぇ、そりゃあわたしにもたくさんあります、過去のイタい恋愛エピソード。たまにふと思い出しては「ギャー! 黒歴史が襲ってきたー!」と大きな声を出してしまったり、「どうしてあの頃のわたしはあんなことを……はっず……」と顔を覆ってしまったり……。

そんなわたしの数あるイタい恋愛エピソード中からひとつをお話ししますので、反面教師にしていただければ幸いです。

顔が好きだから全て許せる

大学生の頃、友達とたまたま入ったバーでとある男性と知り合いました。

彼は、その店で働くバーテンダー。その彼を一目見た瞬間、「スパーーーンッ!!!」と鳴り響くわたしの心のキャッチャーミット。

そう、彼の顔面がわたしの好みドストライクだったのです。

当時彼氏はおらず、特に欲しいとも思っていなかったのですが、兎にも角にも彼の顔が好きすぎて、「彼と付き合いたい!」というよりも、「この顔をずっと見ていたい!」という気持ちが大きくなり、瞬く間に彼はまるで推しのアイドルのような存在に。

令和になってもう廃れた説かもしれませんが、当時は“付き合ってはいけない3B職業”なるものが存在しまして、「美容師・バンドマン・バーテンダーはやめておけ!」と声高に注意喚起をする記事があちらこちらに散見していました。

かつてわたしも、結婚の約束をしていた美容師の彼にある日突然蒸発され……いい感じだったバンドマンに「おれの手には負えない」という言葉を残して去られ……そして、ここへきてバーテンダー。

いやいや、さすがに3Bコンプリートはねぇ……笑えないだろ……と自制心を働かせてみても、もう手遅れ。ドストライクの顔を前にすれば、わたしはもう無力。ひれ伏すしかありません。

まだ大学生でお金がなかったくせに、顔を見たさに足繫く彼の勤めるバーに通う日々。何度か顔を合わせるうちに連絡先を交換し、個人的に連絡を取る関係になりました。

あわよくば付き合えたりなんかしちゃったりして……と期待していなかったと言えば嘘になりますが、「たとえ付き合えなくても彼の顔を見て癒されたい」「顔が見れるポジションだけは守りたい」という気持ちが何より強く、思考力をストップさせていたのでしょう。

都合のいい女、爆誕

彼と個人的に連絡を取り始めるようになってからのわたしは、そりゃあもう都合のいい女でした。

頼み事を断らない・無理難題を吹っ掛けられても反抗しない・いつでもどこでも行けるフットワークの軽さ。どこぞの企業の営業マンだったら素晴らしい成績を収めていたことでしょう。

しかし、わたしは営業マンでもなんでもない、ただ男の顔に魅了されただけの大学生。彼から「今店に太客が来てるんだけどさ、女の子と飲みたがってるんだよね。今から来られない?」と呼ばれたらすぐさま駆けつけ、初対面のお客さんの気分を害さないように振る舞い、盛り上げつつもお酒を飲んではタダ働きのようなことをしたり。

彼に「タバコ買ってきて」と500円玉を渡されたら、嬉々として近所のコンビニまで買いに走ったり。

夜中に「明日朝に起こしに来て」と連絡がくれば、それが試験前であろうとも勉強道具を抱えて彼の家まで行って起こしたり。

過去に戻れるのなら、「一銭の得もないのに接待みたいなことしに行くな!」「自分で買いに行かせろ!」「お前はママじゃないだろ!」と浮かれポンチの自分の頬を打ちたくて仕方がありません。嗚呼、なんて愚かな女なのでしょう。

夜中、ひとり知らない土地に捨てられてようやく覚醒

そんなひと昔前の舎弟のように、生まれたばかりの雛鳥のように、彼の要望をニコニコしながら受け入れ奉公を続けていたある日、いつも通り彼から「友達と23時くらいから飲みに行くからさ、ちょっと顔出してよ」と連絡がきました。

当時、わたしは実家で暮らしていました。終電の時間は早く、乗り過ごしでもしたら歩いて帰れる距離ではありません。学生でお金がなかったため、家までタクシーで帰ることも、どこかのビジネスホテルに泊まることもできないのです。

これは……お泊まりコースだな⁉

そんな浮かれ気分で足取り軽く、彼のもとへと向かいました。

彼と彼の友達と談笑し、時折彼の顔を見て(はー、相変わらず美しい……)と肴にしながら飲んでいると、気づけば終電はとっくに行ってしまった深夜2時。

(さて、そろそろ家に行くんだよね……?)と期待しながら、お会計を済ませて店を出たところで「じゃあおれたちは別の友達の店で飲み直すから、またね」と無慈悲にサヨナラを告げられました。

彼からしてみたら、呼べばすぐ来るうえに文句のひとつもこぼさず、付き合いたいだの好きだの求めてこない都合のいい女のことなんて、心底どうでもいいのでしょう。わたしは闇夜に消えていく彼らの背中を呆然と眺めるしかありませんでした。

深夜2時。初めてきた土地。家まで帰るお金も、どこかに泊まるお金もない。

スマホの充電もなかなかピンチ。
家までは25km、とてもじゃないが歩いて帰れない。
財布の中身は2,000円ちょっと。
詰んだ、完全に詰んだ。

酔いが回った頭をフル回転させ、かすかな記憶を頼りに比較的近いところに住んでいそうな友達に迷惑を承知で電話をかけました。

「もしもし」
「……もしもし? どうしたの?」
「知らない土地に捨てられた、助けてくれ」
「ハァ⁉ よくわかんないけど……困ってるならとりあえずうちに来れば?」

捨てる神あれば拾う神ありとはこのことか!!!!

友達に家に向かうため、(大丈夫かな、足りるかな……)と財布の中身をチラチラ確認しながらタクシーに揺られ、無下にされたショック、そして自分の情けなさに泣けてきたのは言うまでもありません。

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