ガラスの表面をカットして、美しい装飾を施した江戸切子。そのカップでコーヒーを味わえるお店が東京・錦糸町にあります。江戸切子と言えば、贅沢な高級品というイメージですが、それを気軽に手にして、いつものコーヒーを何倍も美味しく飲むことのできるお店、「すみだ珈琲」をご紹介します。
スカイツリーのお膝元・錦糸町の落ち着いたカフェ
東京スカイツリーも近い錦糸町は、大きなショッピングモールなどもあって、休日は特に大勢の人で賑わう町。「すみだ珈琲」は、JR錦糸町駅から徒歩10分ほど。昭和31年に建てられたお店は、靴やわらじの町工場だった建物をリノベーションして作ったのだそう。一歩店内に入れば、何となく懐かしい、落ち着いた空気に包まれます。席数14席のこじんまりとした店内には、ガラス製のランプシェードや切子のカップなどが並べられ、普通の喫茶店とは一線を画す雰囲気を演出。その切子のカップでコーヒーを味わうのが、この店を訪れる人の目的のひとつなのです。
桃のジュースのようなコーヒーと出会って、カフェオープンを決意
店主の廣田英朗さんは、前職、「無印良品」を経営する株式会社良品計画で飲食事業の立ち上げに携わっていました。将来的に独立も視野に入れていたので、職務をこなす傍ら、自分で扱える食材がないか、いろいろと探していました。その中で、驚くようなコーヒーとの出合いがあったのだそう。
「2000年ぐらいだったと思いますが、あるコーヒー専門店でエチオピアの『ミスティバレー』というコーヒーをカッピング(ティスティング)する機会がありました。それは、桃のジュースのような甘さと香りがして、それまで私がコーヒーに対して持っていたイメージがすっかり覆りました。世界には、まだまだ自分の知らないものがいっぱいあるのだなあと思い、コーヒーをビジネスとしてやっていくのも面白いかももしれないと考えたんです」(廣田さん)。
独立して起業する同僚が身近にいたことにも背中を押され、廣田さんは会社を辞めてコーヒー専門店で修行を始めました。
実家のガラス工芸店で縁のある錦糸町に
廣田さんは、コーヒー専門店での修行と並行して、自分の店を開くための物件探しも始めたのだそうですが、意外に難航したのだとか。
「その頃よく読んでいた雑誌に古民家が紹介されていて、古い建物をリノベーションするのもいいなと思い、いろいろ探しました。でも、なかなか条件に合う物件が見つからないんです。あるとき、父親から墨田区のキーマンを紹介され、その方と区内の飲食店を回りました。自分でも自転車で墨田区中を走ったりもして、住所を聞けばだいたいどんなところかわかるぐらいになりましたよ」(廣田さん)。
そんな経緯を経て、今のお店がある物件と出合ったのだそう。錦糸町は、廣田さんの父親が当時営んでいたガラス食器会社があるところ。子供の頃の錦糸町のイメージともだいぶ変わり、人も多くなっていたので、ここでお店を始めるのもいいかもしれないと思い、開店に至ったということです。
父親のアイディアを借りながら、熱に強い切子のカップを開発
子供の頃から馴染み深い錦糸町にすみだ珈琲をオープンするにあたって、廣田さんが考えたのは「地域に根ざした店」にしたいということ。ガラスの食器等を手がけるお父様とは、「何か一緒にやれると良いね」と常々話をしていたのだそう。そんな話の中から、切子のカップのアイデアが出てきたのだとか。
「切子は高価で、ハレの日に使う物というイメージです。それを、どうしたら日常的に使えるようにできるのかと考えた時に、カップにすればいいと思いつきました。ガラスは割れやすいですから、熱いコーヒーを淹れても割れないようにするにはどんな方法があるのか。父にはいろいろ相談しましたね」(廣田さん)。
その結果できた切子のコーヒーカップは、模様別に11種類。店頭で購入することもできます。
コーヒーと濃厚チーズケーキで豊かな時間を
すみだ珈琲で味わえるのは、コーヒーのほかトーストやチーズケーキ・コーヒーソフトクリームなど。コーヒーは、浅煎り、やや深煎り、深煎りの3種類から好みの味を選べる「すみだブレンド」と「本日のおすすめ珈琲」があります。今日は、やや深煎りの「すみだブレンド」とモカチーズケーキをいただきました。香り高いコーヒーに、オリジナルの「コーヒーソース」を使った濃厚なチーズケーキは絶妙の組み合わせで豊かなコーヒータイムを過ごすことができました。現在、すみだ珈琲は席数14席と若干少なめで土日は混雑することも多いので、2号店のオープンも考えているのだそう。新しい店舗がオープンするのが今から待ち遠しいですね。
photo / すみだ珈琲、reeeko
すみだ珈琲
東京都墨田区大平4-7-11
営業時間:11:00~19:00
定休日:水曜・第2、4火曜日