平成が終わりを迎える今、本の力を借りて知識や思考のブラッシュアップと、心身の浄化を。書店員の方々に分析していただいた2018年のベストセラーの傾向から、来る新時代、幸せに生きる手がかりを探ります。
新時代を生きるヒント:好きなものに“狂う”その熱量が道を拓く。
『死ぬこと以外かすり傷』箕輪厚介 売り上げ:10万部
NewsPicks Bookの編集長としてベストセラーを連発する著者が革命的な仕事術や生き方を語る。「まず、タイトルがセンセーショナルで、思わず手に取らされます。そして『無知こそ武器だ。バカになって飛べ!』『こっちの世界に来て、革命を起こそう』など、既存の価値観をぶち壊して新しい道を切り拓こうという熱量、熱狂ぶりが読者に伝播した、そんな印象です。20~30代の男性を中心に、今も売れ続けています」(紀伊國屋書店・吉野裕司さん)
マガジンハウス 1400円
新時代を生きるヒント:誰かと一緒にいるから人は幸せになれる。
『大家さんと僕』矢部太郎 売り上げ:76万部
お笑いコンビ「カラテカ」の矢部太郎さんが80代の大家さんと過ごした日々を綴ったエッセイ漫画。くすっと笑えてほろりと沁みる。「時代は一巡していて、今、懐かしいが新しい。隣人の顔が見えなくなったからこそ、この作品で描かれる“昭和の人情”が身に沁みて、読者の支持を集めたのでしょう。『九十歳。何がめでたい』(佐藤愛子著 小学館)の大ヒットの流れも受けて、親、子、孫の3世代から反応がありました」(三省堂書店・内田剛さん)
新潮社 1000円
新時代を生きるヒント:甘えない強い女性のしなやかさと美しさ。
『Lily ―日々のカケラ―』石田ゆり子 売り上げ:20万部
大好きなものや衣食住にまつわるエッセイから、仕事や恋愛について語ったインタビュー、お気に入りレシピ、愛猫の成長記録まで。著者流の暮らしと哲学がぎっしり。「石田ゆり子さんの好感度の高さを実証した作品。SNSで発信するライフスタイルが女性たちの憧れの的になり、それが書籍の大ヒットに直結しました。立ち読みできない内容の濃さで、紹介されるファッションのブランドなど、細かい部分にも反響が」(内田さん)
文藝春秋 1800円
新時代を生きるヒント:多岐にわたる教養が自分を高める武器に。
『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』デイヴィッド・S・キダー 、ノア・D・オッペンハイム 翻訳 小林朋則 売り上げ:30万部
アメリカのベストセラーを邦訳。芸術、科学、哲学など7つの分野から、教養を高める知識を1年分収録。「2017年あたりから“教養”がヒットのキーワードに。“世界”と渡り合っていくために、あらゆる教養を広く身につけなければという意識を感じます。1日1ページで無理なく読み進められるのも人気の理由でしょう。爆発的に、というよりは長く売れ続けている印象で、美しい装丁ゆえか、女性もよく手に取っています」(吉野さん)
文響社 2380円
新時代を生きるヒント:体を整えれば自分らしさがより輝く。
『ゼロトレ』石村友見 売り上げ:80万部
舞台女優でもある著者が、縮んだ体の各部位を本来の位置(ゼロポジション)に戻すことで、体型と体調を整える「ゼロトレーニング」を考案。「ゼロトレ呼吸」を使ったエクササイズや心をゼロにする方法を紹介する。「ニューヨークで開発された画期的なダイエット法が初上陸という触れ込みで話題に。1日5分、寝ながらできる、取り組みやすいところも支持を集めたポイントです。テレビで取り上げられてさらにヒットしました」(丸善・丸の内本店・高頭佐和子さん)
サンマーク出版 1200円
新時代を生きるヒント:誰かを傷つけた後悔でまた一歩、大人になる。
『青くて痛くて脆い』住野よる 売り上げ:23万部
大学に入ったばかりの楓は、自分と同じように周囲となじめない秋好と出会い、「モアイ」という秘密結社を始めるが…。『君の膵臓をたべたい』の著者が青春のきらめきと残酷さを痛切に描く。「デビュー作“キミスイ”が小説投稿サイトから書籍化され大ヒット。それ以降、新作が期待される作家となっただけにこの作品のヒットも想定内です。10~20代の若い世代から圧倒的な支持を集め、ネット発の作家の出世頭に」(内田さん)
KADOKAWA 1400円
紀伊國屋書店・吉野裕司さん 新宿本店で文庫、新書を担当。司馬遼太郎が好き。読者に読んでほしい本は『仕事にしばられない生き方』(ヤマザキマリ著 小学館新書)。
三省堂書店・内田 剛さん 有楽町店で文芸書、文庫を担当。吉田修一や薬丸岳ら同世代作家を熱烈に支持。通を唸らせビギナーを立ち止まらせる棚作りを目指している。
丸善・丸の内本店・高頭佐和子さん 丸の内本店で文芸書を担当。読者に読んでほしい本は『これからの私をつくる29の美しいこと』(光野桃著 講談社)。おすすめの作家は中山可穂。
※『anan』2019年1月2・9日号より。写真・中島慶子 取材、文・熊坂麻美
(by anan編集部)