今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
解釈の余白にそっとたたずむ
今週のかに座は、冗談や誤解で言ったりやったりしたことが、意図せず自分の代表作の1つになっていくような星回り。
国文学としての「超芸術トマソン」のごとし。超芸術トマソンとは、赤瀬川原平が野球のトマソン選手にちなんで命名したもの。
日本の伝統的な美意識とされる「侘び寂び」というのも、ズレたもの、歪んだもの、そういう人びとの意識の“外側”にあって、人びとの恣意を超えて鮮やかなものをこそ味わう楽しみという点で、路上で「無用の長物」を見つけては観察し楽しんでいた赤瀬川らのやっていたこととまったく同じなのではないでしょうか。
あなたもまた、奇しくも何の意図もなく始めた楽しみが茶や能や俳句などの国文学とつながっていった赤瀬川のごとく、「ちょっとした変なもの」をこそ追い求めていくべし。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
回復の道をゆく
今週のしし座は、アイロニカルな把握を通して平静を取り戻していくような星回り。
『胡瓜揉み吾をにくむ人面白く』(上田信治)という句のごとし。掲句は、自分自身も含めた人間存在の弱さや悲しさ、そして運命の皮肉を一歩引いた目線で見つめているのだとも言えます。
そして、そういうことというのは、何もしないでボーっとしたり、逆に深く考えを巡らせている時ではなく、かえって忙しく働いていたり、無心で家事をこなしているときに、ふっと起こるものなのでしょう。
あなたもまた、無理に気持ちをおさえつけていく代わりに、落ち着くべきところに落ち着いていくべし。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
特異な役割を演じる
今週のおとめ座は、みずからの人生を輝かしいものにするための気づきを、みずから掴んでいこうとするような星回り。
10代で天涯孤独となり、放浪しながら職を転々としつつ、40歳でやっと港湾労働者として定職につきながら、大学で講義するまでの社会哲学者となったエリック・ホッファー。
労働は彼にとって生活を営むための手段であると同時に、そこで出逢った人びとや経験を通して、自身の思索を深くするための糧ともなりました。そして一緒に働く仲間の働きぶりや愛すべき人間性を観察するなかで、社会不適応者の弱者にこそ特異な役割があることに気づくのです。
あなたもまた、自分がどんな役割に徹していくべきか再確認していくべし。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
念力と恬淡
今週のてんびん座は、苦しみを力に変えて生を書き換え続けていこうとするような星回り。
『念力のゆるめば死ぬる大暑かな』(村上鬼城)という句のごとし。耳が不自由で生活も苦しかった作者は、おそらく念力が衰えれば暑さで死ぬかも知れないという実感がからだの芯から湧き上がったのでしょう。
「念力のゆるめば」という言い方から、作者は普段から弱者としてこの世を生き延びることは地獄さながらの苦しみを伴い、つねに気を張っていなければとてもではないが継続不可能であるという実感を抱いていたのかも知れません。
あなたもまた、一句ができるくらいの「念力」をおのれの奥底から絞り出していきたいところです。