今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
成熟と発心
今週のさそり座は、意識と無意識との距離感がグッと縮まっていくような星回り。
無頼派を代表する作家・坂口安吾の、短い教員時代を振り返った自伝的作品『風と光と二十の私と』という作品に、「私はそのころ太陽というものに生命を感じていた」という1文から始まる箇所があり、その中に次のような一節があります。
「私と自然との間から次第に距離が失われ、私の感官は自然の感触とその生命によって充たされている。私はそれに直接不安ではなかったが、やっぱり麦畑の丘や原始林の木暗い下を充ちたりて歩いているとき、ふと私に話かける私の姿を木の奥や木の繁みの上や丘の土肌の上に見るのであった。」
あなたもまた、自分を根本のところで突き動かしている衝動に改めて繋がっていくことになるかも知れません。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
絶妙な塩梅を探る
今週のいて座は、大局的な視点から自分たちを見据え、応えていこうとするような星回り。
『百年後皆笑ひ者ビール注ぐ』(加藤静夫)という句のごとし。掲句の作者は、自分を含めたいまの社会全体を見据えて「百年後皆笑ひ者」と書いたのでしょう。
そして、ともすれば不安と敵意にハマりこみがちな自分たちの心理を「まあ落ち着け」と和らげるつもりで「ビール注ぐ」と結んだのかも知れません(それとも、集団的狂気をより加速させ、もう引き返せないのなら行く処まで行ってしまえという意図か)。
あなたもまた、そんな作者のごとく、どうしたら自分たちの混乱と分断とを和らげていくためのムーヴをとっていけるかということが問われていくでしょう。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
戦慄、うめき、不可解
今週のやぎ座は、不可解な邂逅をその不可解さごと受け止めていこうとするような星回り。
作者の綿密な観察と記憶とによって綴られた『怪しい来客簿』に収録された一篇に、「空襲のあと」という終戦前後の実体験に基づく話があり、そこに不可解な老婆が出てきます。
白い鼻汁をたらしながら焼け跡を歩き回る老婆の姿には、もっと黒いユーモアが込められているように思われ、なぜそうなってしまったのかが不可解であるために、ますます不気味さを増して、人間が生きていく限りの本質が確かにここに描かれているように感じられるはず。
あなたもまた、より奥深いユーモアをこそ求めていくことになるでしょう。