今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
人外的戦略
今週のかに座は、単なる効率的な魅了や生殖に還元しえない、性の多様性を取り戻していこうとするような星回り。
周辺のくずを拾い集めて芸術的な小さな箱庭を作り、メスを誘惑するコヤツクリ科の鳥のオスの求愛行動。
思想家のジャン=クリストフ・バイイは、これは単なる美しい儀式ではなく、不測の緊急事態が現われ続ける、果てしない悩みの種であるかも知れず、潜在するリスクの中で何事もなく表出したものが、“はかない刺繍”のように人間側に見えているに過ぎないのだと考えられるだろうと述べています。
あなたも、そんな鳥たちのごとく、定型から外れた動きとたえざる問いかけを、自身の性(セクシャリティ)に取り戻していくことになるでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
何かを嗅ぎとる
今週のしし座は、まだ誰も気付いていないような春の気配をたぐり寄せていくような星回り。
『暖かし寄目をすれば鼻が見ゆ』(南十二国)という句のごとし。ここで作者が見ようとしているのは、すぐ目の前にあるはずの「花」であり、それは春が胎動し始めるにつれて色濃くなるどこかあまい匂いであり、暖かく湿ったいのちの手触りなのです。
結びの「見ゆ」という古い動詞形も、能動態の「見る」でも受動態の「見える」でもなく、今この瞬間に見えつつある何かによって自分が開かれつつあるという、陶酔的なメタモルフォーゼの過程にあることを指し示す表現なのでしょう。
あなたも、そんな目と鼻の先にある「花」の兆しにまみれていくべし。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
気韻生動
今週のおとめ座は、心身が静かに充溢していく「空」へと傾斜していくような星回り。
資本主義社会を牽引する企業は人間にとって著しく心身のバランスを崩し、メンタルを不安定にさせる環境を今もなお形成し続けています。彼らの戦略の根本は「人びとを“息つく間もない”ような絶え間ない消費に巻き込む」ことであり、「自然な呼吸の抑圧ないし圧迫」という事態を招いているのではないでしょうか。
例えばヴィパッサナー瞑想やヨーガなど、呼吸の鍛練に基づいて「心身一如」の境地を探究してきた東洋の伝統においては、極致として完璧な静まり=「止」としての解脱ないし生命エネルギーの全焼ということが求められたのです。
あなたも、自分なりの「心身一如」すなわち精神と肉体を同時に生かしていく道を見出していきたいところ。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
余計なものが落ちていく
今週のてんびん座は、大人としてのしがらみをどこかに置き去りにしてくるような星回り。
『蝋梅は面会室を満たしけり』(澤田和弥)という句のごとし。「蝋梅(ろうばい)」は12月から2月にかけて、寒中に咲く蝋細工のような黄色い花で、薫り高いことでも知られています。
とはいえ、日常に追われていればほとんど感じない程度のものであり、忙しい大人にとって、そうした“冬のにおい”はしないも同然なのではないでしょうか。そんな大人のひとりであった作者にとって、ただ「待つ」ことに集中させられる面会室は、たまたま日常の忙しなさを寸断する一種の解放区となったとのこと。
あなたも、そんな冬のにおいを感じるだけの余裕や感性を取り戻していきたいところです。