今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
大地への接吻
今週のさそり座は、徹底的なまでの救いようのなさに逆に救われていくような星回り。
ドフトエフスキーの『悪霊』に登場する小心者の自由主義者ステパン氏は、貴族の御曹司スタヴローキンの母親ワルワーラ夫人に寄生し、53歳にもなっていまだに家付き家庭教師として糊口を凌いでいる人物。
旅に出る覚悟を固めた旨を夫人に告げるものの、夫人はまったく取り合いません。強すぎるマザーである夫人を絶対的な光源として、並みいる男たちのみじめさや底の浅さをどこまでも描き切っていくことこそが、この小説の真骨頂なのです。
あなたも、自身が照らされる側に回るにしろ照らす側を担うにせよ、人間の醜悪さと徹底的に切り結んでいくなかで、一度徹底的な救いのなさに沈んでみるといいでしょう。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
虚構を用いる
今週のいて座は、「泥まみれ上等だよ」とうそぶいていくような星回り。
「ウクライナ前後」と題された50句のうちの一句、『春の野ぞブーメランミサイルはなきか』(矢島渚男)のごとし。
どっちが先に手を出したか、合法的に罪が重いのはどちらかなんて文明的な理屈は、そんな春の原野では通用しません。最後に立っていた方が勝ちなのであり、そもそも形式上の勝ち負けなどよりも、よっぽどその泥試合で熱を高めていくことの方が大事なのではないでしょうか。
あなたも、そんな春の原野に積極的に立っていきたいところです。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
真実としてのエロス
今週のやぎ座は、世間に対するあくせくとした営みをすっかり忘れて、もっと大事な狂気に心を奪われていくような星回り。
古代ギリシャにおいて、恋は真の哲学者の証しでもありました。プラトンの対話篇『パイドロス』では、ソクラテスとアテネの若者パイドロスが、主に同性間におけるエロスをめぐって語り合っていきますが、恋のはらむ狂気の側面を明らかに悪いものとして論じるパイドロスに対して、ソクラテスは真っ向から反論していきます。
ソクラテスによれば、私たちの身に起こる多くのよいことのなかで最も偉大なものは、その狂気を通じて生じるものではないかと自論を展開。恋は神から与えられる狂気であり、恋する魂はイデアの知を愛し求める姿勢に通じるというのです。
あなたもまた、そうした狂気をこそ身に宿していきたいところ。