免疫機能の低下は、風邪やウイルス感染など様々な不調や病気を引き起こす原因です。そんな大事な免疫力を上げる方法について、免疫外来も設けているエミーナジョイクリニック銀座の伊東エミナ院長にわかりやすく解説していただきました。腸内環境を整える食事やサプリの活用、運動などの生活習慣で免疫機能を向上させましょう。
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1.そもそも免疫力って?
免疫は「疫(えき)から免れる(まぬがれる)」という文字通り、伝染病などから逃れること、つまりウイルスや、ばい菌などの病原体から体を守ってくれる反応のことを言います。
さらに言うと、免疫は自己(自分)と非自己(自分に悪さをする存在)を区別しているものとも言えます。例えば、花粉や体質に合わない食品など、異物が体内に侵入すると人間の体は「自分の組織じゃない」と判断して抗体を作ったり、炎症反応を作って拒否したりします。そうした体を守る働きを「免疫力」、その時に起きる反応を「免疫反応」と総称しています。
よく知られた病気だと、リウマチも免疫の異常で自分の組織を破壊していく、自己免疫が関わっている病気です。免疫を理解しづらい方は「自分に対して脅威を与える存在かどうか」を想像してみてください。その脅威を免疫細胞や自律神経がパトロールしていると考えると、免疫の仕組みがわかりやすいと思います。
教えてくれたのは......エミーナジョイクリニック銀座院長・医学博士 伊東エミナ先生
東京女子医科大学医学部卒業後、同大学内分泌内科勤務。米国ヴァージニア大学留学にてホルモンと老化の研究を行う。その後、同大学インスティテュート助教授を経て、2010年にエミーナジョイクリニック銀座を開設。脳疲労、コロナ後遺症、アレルギー等の根本治療の専門家としてマルチに活躍中。
2.免疫力が高い人の特徴&低い人の特徴
免疫力が高い人は、風邪や病気の治りが早いという特徴があります。体内にウイルスや細菌が侵入しても、自己治癒力が高いので早期に回復できます。反対に、風邪を引いても数日で治らないのは免疫力が低い人の特徴。免疫力の低下によって体を外敵から守る力が弱まり、花粉症やアレルギー症状のような炎症が出やすくなります。
免疫力が低いとあらゆる感染リスクが高まる一方で、やみくもに免疫力が高ければいい訳ではありません。しかるべき時にしかるべき形で機能し、活用できることが大事。加齢とともに免疫機能も弱まるので、日常のちょっとした意識で取り戻していきましょう。
3.免疫力を上げる5つの方法
伊東先生に免疫力を上げるためにはどうすれば良いかを尋ねると、「頑張りすぎず、いい意味で自分のペースで心身を労わること」が免疫機能を高める秘訣だそう。「栄養バランスのいい食事」「高体温の維持」「適度なストレス解消」という3つの土台を整えると、さらに免疫細胞が働きやすくなります。ここからは、それを叶えるための具体的な5つの生活習慣を紹介します。
【免疫力を上げる方法①】免疫力を高める効果のある食べ物&飲み物を摂取
免疫力を高めるには、まず「栄養バランスのいい食事」を意識してみましょう。具体的に摂取したほうがいい食品や成分、また避けたほうがいい食品についても紹介します。
1:腸内環境を整える食品
じつは免疫細胞の70%が腸に存在するため、腸内環境を整えることはすなわち免疫力を高めることにも繋がります。腸内環境を整えるには、繊維質が豊富な根菜やきのこが特におすすめ。食物繊維には免疫バランスを整えたり、お通じを良くする作用もあります。また、冬場に旬を迎える根菜類はビタミンやミネラルが豊富に含まれるので、体を温める効果も期待できます。
さらに、粘膜の潤いを守り免疫細胞の働きを活性化するビタミンAも積極的に摂りたい栄養素のひとつ。にんじんやブロッコリー等の緑黄色野菜も、体内でビタミンAに変換されるカロチンが豊富で、免疫を高めてくれる作用があります。
便秘症状がない場合は、発酵食品や乳酸菌の摂取もおすすめ。一方で、便秘気味な方が発酵食品を摂取しすぎると、ガスが溜まったり臭くなったりと腸内環境に良くないこともあるので注意が必要です。
2:水分+ミネラル
免疫力を上げるには、こまめな水分補給も大事。こまめに補給することで血流が改善し、白血球などの免疫効果が全身によく行きわたるようになるからです。
水分補給をする時に大事なのが、水分と一緒に適量の塩分でミネラルを摂ること! 水だけを飲むと体内の塩分濃度が薄まり、塩分濃度を保つために尿が排出され、ますます体内の水分量が減ってしまいます。また、免疫力を上げるには水分とミネラルを体内に保持できる飲み方を意識することも肝心。例えば普段の水分補給時に、500mlのペットボトルの水の中にひとつまみの天然塩を入れ、そこへビタミンCが豊富なレモンを絞ると風味が増して飲みやすさもアップしますよ。
昨今、減塩が良しとされる風潮がありますが、適量の天然塩ならミネラルが豊富で健康にも良く、血圧を上げません。昔の人は梅干し、味噌汁、鮭やめざしなどで質の良い塩分を補給していましたが、パンやパスタなどの洋食が多い現代では、食事だけで補える自然塩はじつは少ないのです。なので、飲み物と一緒に塩分を摂ることで水分補給とミネラル摂取が同時にできるようにするのが大事です。
また、カフェインを含むお茶やコーヒーの飲み過ぎは、利尿作用で余計に体内から水分が出てしまうので注意しましょう。氷入りのお冷や飲み物もなるべく避けて。冷たい飲み物で内臓が冷えると、免疫力がかえって下がってしまう原因になってしまいます。
避けたほうがいいのは乳製品と小麦
牛乳を含む乳製品を摂取するのは、西洋から伝わった健康習慣。そのため、日本人の3人に2人は乳製品が体質に合わない、いわゆる乳糖不耐症で、牛乳を飲むとお腹を壊しやすい体質だと言われています。また、日本人は小麦が体質に合わない人も多く、小麦に含まれるグルテンを免疫細胞が異物とみなしてアレルギー症状を引き起こす場合も。当院でも、遅延型フードアレルギー検査を受けた方の多くが乳製品と小麦の項目で引っかかります。
また、免疫の専門医のお話では、500gのヨーグルトを1日10パック摂らないと整腸作用が期待できず、それだけ食べてもまだ足りないそう。免疫力を高めるには、何を食べるべきでないかを考えることも大事なんです。