女性の身体の不調と深く関係すると言われている、ホルモンバランス。年齢を重ねるごとに、さまざまな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。今回ピックアップするのは、閉経前後の女性に見られる「GSM」と呼ばれる疾患です。金沢医科大学医学博士、日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医の中澤佑介先生に「GSMの症状や、日常生活の中でできる対策方法」などについて教えていただきました。
教えてくれたのは……中澤佑介(なかざわゆうすけ)先生
金沢医科大学医学部医学科卒業。
「患者さんに近い立場で専門的医療を提供したい」という思いで2021年、なかざわ腎泌尿器科クリニックを開設。2023年6月、JR金沢駅前にメンズヘルスクリニック(Gran Clinic)を開院。
閉経後に起こりやすい「GSM」とは?
なかなか人に相談しにくいのが、デリケートゾーンの悩み。一人で悩みを抱えて我慢してしまう方も多いと思います。
最近よく耳にする「GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause)」とは、どのような症状なのでしょうか?
中澤先生「GSMとは、閉経関連泌尿生殖器症候群と呼ばれる女性の疾患です。
閉経後、エストロゲンが減少することで、外陰部や腟の粘膜、皮膚組織は萎縮し脆弱化します。それによって泌尿器、生殖器の不快症状が顕著に起こるのがGSMです。
症状は、外陰部や腟の乾燥、灼熱感、かゆみ、尿もれ、頻尿・尿意切迫感、繰り返す膀胱炎(再発性膀胱炎)、性交痛など多岐にわたります。
日本における40歳以上79歳以下の女性のうち、11.6%がGSM症状を有していることが確認されています(※)。
日常生活に関わることなので、QOL=Quality of life(クオリティ オブ ライフ)を低下させると考えます。また、GSMは放置していても決して治る病気ではありません。」
GSMを改善するためにできること
放置しても治る病気ではないとなると、どういった対策や治療ができるのでしょうか? 日常生活の中で気をつけるとよいポイントと、治療方法について教えていただきました。
日常生活の中で気をつけること
中澤先生「外陰部、いわゆるデリケートゾーンの痛みや乾燥などのGSM症状に対しては、市販の医薬品や保湿剤の使用、外陰部に触れるおりものシートなどは、肌・腟粘膜への刺激が少ない素材の製品を選択することで、GSM有病率が低下する可能性があると考えられています。
日常生活での治療の基本は、保湿になります。粘膜の衰えがあるのに高圧・高温なシャワーやウォシュレットの使用は適切ではありません。」
治療方法
中澤先生「GSMの治療は、下記の方法が挙げられます。
・全身ホルモン補充療法
・局所エストロゲン療法(膣錠・クリームの使用)
・レーザー治療
・保湿剤の使用(普段のお手入れとして重要)
・潤滑剤の使用(性交痛のある場合や性交時に)
・膣ダイレーター・バイブレーターの使用(膣萎縮があるときの性交痛対策)
レーザー治療は自由診療にはなりますが、「インティマレーザー」と呼ばれるレーザーによる治療を行います。レーザーの温熱効果によりコラーゲンの生成を促進させることで、デリケートゾーンの皮膚・粘膜の弾力や水分量を改善させます。」
GSMの症状に悩んでいる方は、まずは日常生活で気をつけることから意識して、気になる症状がある場合には一度受診して相談するとよいかもしれません。これからのQOLの向上のために、参考になると幸いです。
※参考:
日本性機能学会による閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM:Genitourinary Syndrome of Menopause)の疫学的調査
Hikaru Tomoe , Yumi Ozaki , Mayuko Yamamoto et al. Menopause. Epidemiological study of genitourinary syndrome of menopause in Japan (GENJA study). 447-53. 2023