今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
さながら捨つべき
今週のかに座は、コウモリと共に活動を始めるくらいのつもりで過ごしていくような星回り。
精神科医・中井久夫の「世に棲む患者」という概念は、患者を制限の多く抑圧的な「世の中」の“普通”に適応させるのではなく、むしろ「世の中」それ自体をもっと多層的なものとして捉え、その中での特異性を発明しつつ生き延びる人々を肯定するために使われたもの。
まさに、自分のことをカナダで「もっとも経験を積んだ世捨て人」と呼んでいた天才ピアニスト、グレン・グールドのような人のための言葉と言っても過言ではないでしょう。
あなたもまた、今季のかに座もまた、グールドのように生き延びるために“異常さ”をつぎつぎと発明するくらいの気概が欲しいところです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
循環を促していく
今週のしし座は、あらぬ方角からの作用をこそきちんと受けとめていくような星回り。
『ニュータウンの短き坂よ木の実降る』(宮本佳世乃)という句のごとし。
どことなく『平成狸合戦ぽんぽこ』の世界線を思わせる一句。落ちているどんぐりをひたすら拾い集めることに無心になれた日々ははるか遠く記憶の彼方。とはいえ、そうした日々の感覚をよみがえらせるためのスイッチというのは、案外ふだんは素通りしているような何気ない日常の中に転がっていたりする。
あなたもまた、ほんとうは自分の身ひとつとっても、自分だけではどうすることもできず、人の手を借りるのでも足りず、土地や自然や記憶などに支えられギリギリのところで倒れずに済んでいるのだということを、改めて胸に刻んでいくべし。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
大河の一滴
今週のおとめ座は、心朽ちた巷からの逃げこみ先に目ぼしをつけていこうとするような星回り。
宗教学者の釈徹宗は、『法然親鸞一遍』の中である韓国の宗教学者の弁として「日本人の宗教性を最もよく表しているのは『夕焼け小焼け』の歌だ」という言葉を紹介しています。
大正時代に書かれたこの歌詞の言葉はもはや現代ではすっかりリアリティを失ってしまったように思えます。とはいえ、日本人から宗教的情緒そのものがなくなってしまった訳ではないはず。現代において「いっしょに帰るところ」を指し示す日本語があるとすれば、それはどんな表現になるのでしょうか。
あなたもまた、それくらい大きな視点から自分のこころの支えとは何かということについて、考えを巡らせてみるといいかも知れません。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ひょいとカオスをまとう
今週のてんびん座は、決まりきった目的や行き先から自身を解き放っていくような星回り。
『赤とんぼじっとしたまま明日どうする』(渥美清)という句のごとし。掲句では、ただ遠くから赤とんぼを眺めたり観察したりしているところから、一歩踏み出して、お前さん、明日はどうするんだい、と(なんとなく優しく)呼びかけている。
もちろん、この呼びかけは自分自身に対するものでもあります。お互い、風に吹かれて流れていく身の上同士じゃないか、と。そんな密かな連帯感が、この句になんともいえない抒情味をもたらしているのでしょう。
あなたもまた、みずからに「明日どうする」と呼びかけてみるといいでしょう。