今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
正直戦車
今週のかに座は、第一感で違和感を感じたものはバッサリと切り捨てていこうとするような星回り。
ギター演奏家で作家としても成功した深沢七郎は、42歳のときに民間伝承の姥捨て伝説を題材にして書いた処女作『楢山節考』でデビュー。その評価は高く、三島由紀夫をして「慄然たる思ひ」を只一度感じた「不快な傑作」と言わしめたほどでした。
深沢にとってに世界とは、「私とは何の関係もない景色」であり、「面白きゃいいんだよ、ただ」という小説観もまたそうした世界観と表裏の関係にあったのだと思います。
あなたもまた、そうした「飄々としたさま」をどれだけ発揮していけるかということが問われていくでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
内省と開け
今週のしし座は、面倒や厄介に巻き込まれるのを嘆く代わりに、ただ端座していくような星回り。
『露の世のもめを淋しく坐りをり』(清原枴童)という句のごとし。揉めごとや争いごとというのは、どんな組織においても人と人との関わりにおいて成り立つ以上決して無縁ではいられないもの。
高度ストレス社会と言ってもいい現代では、「不快な思いや我慢をさせられる相手などさっさと縁を切って然るべき」といった割り切りが加速化していたり、些細な不満や理不尽であってもSNSに書き込んで世情に問うたり、時には事実をねじ曲げてでも自分を被害者に仕立てて正当性を訴えたりするような向きが横行しているように感じます。
あなたもまた、人間関係の面倒や厄介に巻き込まれた時こそ、作者のような控えめな姿勢を思い浮かべてみるべし。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
情熱の才を燃やす
今週のおとめ座は、恋愛やしがらみに持ち込まれた自己愛をほどいていこうとするような星回り。
ミケランジェロの聖母子像は、マリアが十字架から降ろされたイエスの亡き骸を抱いて慈しみ悲しんでいる姿が表現されたものですが、そうしたマリアの姿をあらわした絵や彫刻のことを<ピエタ>と言います。
イタリア語の<ピエタ>は「慈愛」という意味だけでなく「共感共苦」という意味も兼ねており、この点について取り上げた哲学者のショーペンハウアーは、あらゆる真実の純粋な愛は共感共苦であり、そうでないようなあらゆる愛は自己愛であり、利己心なのだと述べています(『意志と表象としての世界(世界の名著45 ショーペンハウアー)』)。
あなたもまた、「泣くこと」を通じて自分が抱え込んでいた苦悩の中身を再確認していきやすいはず。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
海と妖怪
今週のてんびん座は、日常を取り囲んでいた境界線の外へとふっと出ていくような星回り。
『夜長びと海に向く扉を押しにけり』(田中裕明)という句のごとし。
秋の夜長に、人が扉を押した。その向こうには海がある。それだけと言えばそれだけの句ですが、まるで夜長を一身に宿したかのようなその人の気配や、見えないはずの海の余韻がどこまでも後を引くようでもあります。「海へ」ではなく「海に」とあるので、海がすぐそばにあるように感じられる。扉が開けば、そこに広がるのはどんな海だろうか。
あなたもまた、自身の身体を重さや軽さを占うつもりで、そっと「扉」に手をかけてみるといいでしょう。