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セックスする時に"愛よりも大切"な5つのこと

エコーチェンバー現象や排外主義の台頭により、視野狭窄になりがちな今、広い視野で世界を見るにはーー。フェミニズムやジェンダーについて取材してきた原宿なつきさんが、今気になる本と共に注目するキーワードをピックアップし紐解いていく。

「愛のないセックスはしてはいけない」という人がいる。この言葉は、「愛のあるセックスならOK」という意味にも捉えられる。

しかし、愛し合うふたりであっても、不本意なセックスになることはあり得るだろう。しなければよかったと後悔することも、あるはずだ。

『若者の性白書 第8回 青少年の性行動全国調査報告』(日本性教育協会/小学館編)によると、少なくない数の人(特に女性)がセックスを相手から強く要求され、性行為をしたことを後悔している。

初めてのセックスのきっかけを問うアンケートでは、女子高校生の16.7%、男子高校生の5.5%、女子大学生の13.9%、男子大学生の1.8%が「相手から強く要求され」た、と回答している。また、初めてのセックスを「経験しなければよかった」と答えたのは女子高校生の10.1%、男子高校生の4.2%、女子大学生の7.7%、男子大学生の3.5%だ。

つまり、女子高校生の2割弱が主体的にではなく相手から強く求められたために性行為を行い、1割が経験したことを後悔しているのだ。ここでは相手との関係は問われていないが、多くは恋人同士であることが予測できる。

恋人同士で、お互いのことが好きでも、相手にセックスを強要したり、望まない行為をさせたりするケースはあり得る。愛のあるセックスであっても、不本意な結果になる可能性があるのだとしたら、どういった条件が揃った時、ハッピーなセックスができるのだろうか?

セックスに必要なのは、曖昧な愛よりも、「納得・同意・安心・安全・快適」

『3万人の大学生が学んだ 恋愛で一番大切な“性”のはなし』(KADOKAWA)で、著者の村瀬幸浩は、「愛が相手への支配や強制を生み出したり、自己犠牲を強いたりする要因になり得る」とし、「とらえどころのない愛という言葉よりも、納得、同意、安心、安全、快適という言葉で、自分のからだ、心、セックスにつながる相手との関係を分析・点検したらどうか」と提案している。

納得・同意・安心・安全・快適

「納得・同意・安心・安全・快適」とは具体的には、下記のことを意味している。

納得:理解した上で承知すること。

同意:反対ではないとか黙認ではなく、「私もそう思うし、そうしたい」という積極性のある態度表明のこと

安心:予期しない妊娠や性感染症の心配がない。

安全:セックスは無防備な形で関わり合うこと。もしもどちらかに邪な気持ちがあったとしたら、それほど危険な関係はない。場合によっては命さえも危うくなる行為になり得る。よって安全は絶対条件。

快適:初めから相手に対し快適を分かち合おうという気持ちのないセックスは犯罪であり、虐待。お互いの快適さを追求するため、言葉で望んでいること、望まないことを伝える必要がある。

この5つを意識するということは、セックスの主体になることを意味している。女性は特に、性的なことに受け身であることを社会的に求められがちだが、セックスは受け身でいていいほどリスクの低いものではない。それゆえ、この5つをしっかり点検し、安心安全なセックスを目指すことは有意義だろう。

後悔のないセックスのために

特にまだセックスをしたことがない時期には、「何を基準にセックスをすればいいのか」がわからない人も少なくないだろう。まだ「したい」という気持ちになっていないのに、「付き合っているんだから、した方がいいのかな?」と考えて、明確な同意や自分の意志なしにセックスしてしまう人もいる。「相手から強く要求されて」初体験をした女性が少なくないのは、「付き合っているなら、セックスするもの」という女性にとって非常にリスクの高い考え方が広まっているからだろう。

セックスで後悔したり傷ついたりする人を減らすためにも、セックスをするか否かの基準として、「納得・同意・安心・安全・快適」の5つを確認することが一般化することが望まれる。

セックスによる男女の非対称性

『3万人の大学生が学んだ 恋愛で一番大切な“性”のはなし』は、性についての基礎知識を学べる素晴らしい一冊だと感じた。しかし、引っかかる点が一つあった。

それは、男性がコンドームをつけたら、女性が賞賛と感謝を示すことで、「この次もまた自分から着けようという気持ちを生み出す」べきだと書かれていた点だ。男性がコンドームを着けるくらい当たり前でしょ!というのではなく、感謝し、称賛しろ、と書かれている。

正直、この言い分には呆れた。まるで、「皿洗いをしてくれた夫を褒めてあげましょう」という昭和初期のアドバイスのようだ。大学でセックスについて教えているなら、コンドームをつけるのは当たり前、つけようとしない男とはセックスしてはいけないと教えるべきだろう。

なぜなら、コンドームをつけないことで、性感染症や妊娠のリスクが高まるのだから。妊娠という恐ろしいリスクを、コンドームを装着するだけで下げることができるのに、面倒だから、感度が落ちる気がするからという理由で装着しないのだとしたら、それはもはや暴力と言えるだろう。コンドームをつけた男性に賞賛と感謝をすべきという言い分は「暴力を振るわないでくださって、ありがとうございます」と言っているのだと同じことだ。

著者は性についての専門家なのにも関わらず、なぜそこがわからないのだろう。やはり、妊娠というリスクがない男性だからなのだろうか? どうしたって、セックスにおけるリスクは、女性の方が圧倒的に高い。だからこそ、著者が言うように、「主体的なセックス」以外はするべきではないのだろう。

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