「生理前になると別人みたい……」「イライラして周りに当たってしまう」「からだが重くて何もしたくない」など、PMSに悩まされる女性は多いのではないでしょうか。PMSの主な原因は、 西洋医学ではホルモンバランスの変動とされていますが、東洋医学では特定の臓腑の機能失調がPMSを引き起こすと考えられています。今回は、PMSのタイプ別にケア方法をご紹介します。
PMSはなぜ起こる?東洋医学で考えるPMSのメカニズムを解説
PMSは日本語でいう「月経前症候群」のこと。生理が始まる数日前から、心やからだの不調が起こり、生理が始まると症状が軽くなる状態です。なかには日常生活に支障をきたしてしまうほど重い症状が出る方もいるので、PMSが起こるメカニズムと対策を知ることが大切です。
西洋医学では、ホルモンバランスの変化が主な原因とされますが、東洋医学では「気(き:目に見えない生命エネルギー、精神エネルギー)」「血(けつ:血液そのものと、血液によって運ばれる栄養、熱)」「水(すい:体内の液体のうち血液を除いたもの)」の巡りや臓腑の働きの乱れがPMSの根本原因と考えられています。
PMSと気血水との関係
PMSは「気」や「血」の流れを整える働きをもつ「肝」の不調と関係しています。肝は感情との関わりが深く、ストレスや過労、感情の抑圧などが続くと、肝の働きが滞ってイライラや抑うつ、不眠などの精神的な症状があらわれやすくなるのです。
肝臓の不調で「血」が不足すると、集中力の低下や倦怠感、めまいなどの症状が出やすくなります。また、「気」が滞ることで「脾(ひ)」や「腎(じん)」にも影響を及ぼし、消化器症状やむくみ、冷えなどの不調につながる場合も。
つまり東洋医学では、PMSは単なるホルモンの問題ではなく、からだ全体のバランスの崩れによって引き起こされると考えられています。(※1)(※2)
あなたはどのタイプ?体質から考えるPMSの症状
一概にPMSといえど、人によって症状の出方はさまざまです。ここからは体質別のPMSの症状について詳しく説明します。
①「気虚」体質
体内の「気」が不足している状態です。息切れ、だるさ、やる気の低下、食欲不振、風邪をひきやすいなどの症状が挙げられます。(※3)
②「気滞」体質
体内を巡る「気」の流れが滞っている状態です。イライラ、憂うつ、胸やおなかの張り、のどの詰まり感などの症状がある場合は「気滞」体質の可能性が高いです。(※3)
③「瘀血」体質
「血」の流れが滞り、体内に古くなった血や汚れた血がたまっている状態です。慢性的な痛み(刺すような痛み)、肩凝り、頭痛、生理痛、生理不順、肌荒れなどをを引き起こします。(※3)
④「血虚」体質
東洋医学でいう「血」が不足した状態です。めまい、立ちくらみ、顔色の悪さ、動悸、爪の割れやすさ、肌や髪の乾燥、不眠、集中力の低下などの症状が見られます。(※3)
⑤「水滞」体質
体内の「水」、すなわち体液の巡りや排出がうまくいかず、余分な水分が滞っている状態です。むくみ、めまい、頭重感などを感じます。(※3)
体質別のPMS対策&おすすめの漢方薬は?
より効果的にPMS対策を行うには、自分の体質に合った方法を取り入れることが大切です。東洋医学的な原因に基づき、漢方薬を服用するのも一つの方法。漢方薬は不調に根本からアプローチしてくれるので、PMSの解消だけでなく、予防にも効果が期待できますよ。ここからは、体質別のPMS対策とおすすめの漢方薬をご紹介します。
①疲れやすい「気虚」体質
過労や睡眠不足、不規則な食生活などが原因だと考えられています。そのため、休養を十分にとること、バランスの取れた規則的な食事を心がけることが大切です。
<おすすめの漢方薬>
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
補中益気湯は、疲れやすい方や体力が低下した方に向いています。疲労、倦怠感、食欲不振を緩和します。胃の消化吸収を整え、風邪などの消耗性の疾患にも用いられます。(※4)
②イライラしやすい「気滞」体質
PMSでよくみられる症状のひとつで、ストレスや感情の抑圧が原因になりやすいため、気の巡りをよくする生活習慣が大切です。適度な運動や深呼吸、ストレス発散などが効果的です。また、香りのよい食材(柑橘類、しそ、ミントなど)を取り入れるのもおすすめですよ。
<おすすめの漢方薬>
加味逍遙散(かみしょうようさん)
疲れやすく、肩が凝り、気分の落ち込みやイライラなど精神不安がある方に向いています。栄養と潤い、エネルギーの巡りを促すことで、自律神経を整え心を落ち着かせます。(※5)
③手足が冷えて顔がほてる「瘀血」体質
冷えやストレス、過労、外傷などが原因になっていることも多いようです。対策としては、血流を促す生活習慣がポイントで、適度な運動や入浴でからだを温めること、ストレスをためないことなどが効果的だと考えられます。
<おすすめの漢方薬>
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
体力が比較的あり、肩が凝りやすい方に向いています。血行をよくして血の滞りを取り去り、下半身の冷えを改善することで婦人科系の機能を高めます。生理痛、子宮内膜症、生理不順、月経困難などに用いられます。(※6)
④貧血傾向がある「血虚」体質
血が足りないことで起こり得る血虚。過労や栄養不足が原因になることもあるので、十分な休息と栄養バランスのとれた食事が大切です。とくに血を補うためには、鉄分の多い食材(レバー、干しエビ、ひじきなど)を積極的に摂取しましょう。
<おすすめの漢方薬>
四物湯(しもつとう)
疲れやすく手足が冷えやすい貧血傾向の方に向いています。
血液の流れを促し、栄養を補うことで生理不順や生理痛、更年期障害、貧血、冷え、しみに働きかけます。(※7)