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誰からも愛されなくても。馬場ふみかが大切にする「自分の人生を幸せに生きるコツ」

あこがれの人、がんばってる人、共感できる人。それと、ただ単純に好きだなって思える人。そんな誰かの決断が、自分の決断をあと押ししてくれることってある。20~30代のマイナビウーマン読者と同世代の編集部・ライターが「今話を聞いてみたい!」と思う人物に会って、その人の生き方を切り取るインタビュー連載。

取材・文:瑞姫
撮影: 渡会春加
編集:杉田穂南/マイナビウーマン編集部

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毒親、虐待、性暴力など家族間で生じる問題から社会のひずみに切り込みつつ、その世界をサバイブする彼女たちの清々しさと、「不幸中毒」からの脱却までを鮮やかに描いた映画『愛されなくても別に』。

本作で過酷な家庭で育つ過去を持ち、主人公の宮田陽彩(みやた・ひいろ)と徐々に心を通わせていく江永雅(えなが・みやび)役を馬場ふみかさんが演じている。

雅という難役を演じるにあたり、映像には描かれてない部分までも作り込んで挑んだと語る馬場さん。そんな彼女に“他者に依存しない幸せ”を築くために大切にしていることを聞いた。

映らない部分まで作り込んだ作品

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“江永雅”という人物を「一見冷たくてそっけない人に見えるけど、内側に優しさを持っているかわいい人」と表現してくれた馬場さん。劇中では明確に描かれていないものの、途中で家を飛び出し、高卒認定を取り、大学に入る……という雅の「自分で選択して人生を切り開いていこうとする力強さ」が、ドライでありつつもどこか優しい言動や、生き抜いてきた世間に絶望仕切ってはいない真っ直ぐな瞳で表現されている。

どのようにして“江永雅”という複雑なバックグラウンドをもつ人物を演じ切ったのかと聞いてみると、個別でアクティングコーチのレッスンを受けたことを教えてくれた。

「本編では描かれていない、自分の母親に『身体を売れ』と言われるシーンをレッスンでやったんです。雅のお父さんとお母さんは実際の映画には出てこないんですけど、家を出る前のそういった映像になってないシーンまでしっかり演じたことが、陽彩に話す時の役作りの手助けになりました」

さらに、「生まれてから今日までの雅の人生を書いたファイルを井樫さん(監督)にもらったのは自分の中で大きかったです。すごく丁寧に役作りができる期間があったなと思います」とも明かした馬場さん。“雅が生きてきた人生”を台本の中の情報だけで想像するのではなく、劇中にはないシーンまで辿って実際に演じることは、雅の人生そのものを生きるような表現方法だ。

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また、今回のような特殊な役作りはそれだけに止まらない。雅の少し伸びて地毛が見えた金髪ヘアも「染めたてのきれいな金髪は嫌だなと思って、インする1ヶ月ぐらい前に染めた」と説明してくれた。切り取られたシーンだけを演じて繋ぐだけではない、井樫監督と馬場さんの役への作り込みや想いが感じられる。

「脚本にはない部分で雅が何回も髪の色をチェンジしているっていうのは、井樫さんが普段の私を見て雅に投影したらしいんです。私自身、作品と作品のちょっとした合間にすぐ髪の色を金髪にしたり、ピンクにしたり、青にしたりするんですけど、今までやってきた私の髪色をピックアップしてくれたみたいで。

髪色だけじゃなく、ファッションも井樫さんと2人でご飯に行った時に『どういう服を着ると思う?』『どういうもの持ってると思う?』ってお話をしました。割と男っぽい大きめのシルエットがダボっとしたお洋服を着ていることが多いんですけど、それは多分、女っぽく見られたくないっていう気持ちもあると思いますし、そういうところから理解できる部分はすごく大きいなと思います」

他人に自分の人生を左右させない

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本作では彼女たちが「不幸中毒」から脱却していく様子が描かれているが、昨今、SNSなどが普及したことで無意識のうちに他人と比べ、“自分は幸せ”であるにも関わらず、 “自分は(他人と比べて)幸せではない=不幸だ”と感じてしまうことも多いように思う。

そのことを馬場さんに話すと「本当にそうだと思います」と同意しつつも、「キラキラしたように見える投稿も、そうやって見せているからといって、実際に華やかな生活をしているかというと、それは本人にしか分からない。なので、エンタメだと思って見たらいいと思います。他人と比べて、“自分はこんなにみじめな生活をしてるのに”みたいな不幸な気持ちになってしまうのも分かるんですけど、まあ無駄ですよね」とアドバイスをくれた。

「向上心があるのはすごく素晴らしいことだけど、実際に接するわけでもない他人によって自分の人生が左右されることほど無駄なことはないし、凄くもったいないなと思う。私も身近な人を見て“いいな”と思うことはもちろんありますけど、人生って人それぞれなので、他人は他人だし、その人なりの苦労がある。あまりそこで自分の幸せを左右されないで、自分でどうにか幸せになることを考えるほうが、絶対に早いです」

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今回の役を通し、「これまでの人生や環境ってその人にしか分からないので、“自分が正しくて誰が悪い”ということではなく、いろいろな環境の人がいるというのを分かった上で人と接することがすごく大事だなっていうのは改めて思いました」とも語っていた馬場さん。人には人の地獄があるとはよく言ったものだが、美しく見える切り取られた世界も、現実ではそうはないかもしれない。

「自分にとって“良いこと”だと思っていることが、他の人からしたら“嫌なこと”でもあるので、接し方や言葉の選び方はきちんと考えて生きようと改めて感じましたね」

目の前に存在しない世界に振り回されず、逆にその切り取られた世界だけで判断しないことは、自分にとっても他人と関わる上でも大事なことだと改めて感じた。

自分に目を向けて“小さな幸せ”を積み重ねていく

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本作の“愛されなくても別に”というタイトルを最初に聞いた時、“傷つきたくないから、他人と関わりたくない”というような、自分の弱さからくる一種の「強がり」や世の中に対する「諦め」のようなものだと思っていた。

しかし、実際はそうではない。望まない愛からは逃げていいし、自分で自分を愛し、自分が好きな道を進んでいれば、幸せでいられる。自分の幸せを他者に委ねないことで、どんな状況からでも幸せな道へ進むことができる。他人や自分が掛けてしまう哀れみという束縛から解放されることや、不幸であることの安心感から抜け出すことが、幸せの一歩だったりするのだ。

雅を演じた上で馬場さんは「他者から愛されたら幸せですけど、そうじゃなきゃいけないということももちろんないし、それだけが正義でもない。だから、自分で自分を幸せにする方法を考えるのはいいことだと思う」と話す。

「これをやったら自分が楽しいな、幸せだなって思う小さなことを積み重ねるのが大事。他者からの施しによる幸せにフォーカスしないこと。本当は、自分が自分にしてあげられることの方が多分多いはずなんですよ。だから、他人に目を向けすぎるのはよくない。

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