「仕事もプライベートも充実している」「すごく嫌なことがあるわけではないんだけれど、なんだか不安でモヤモヤしてしまう…」そんな風に感じている人、いませんか? 原因不明のモヤモヤは放置しても解決しない
本当の自分って?「心にメイクは必要ないんだ」と自分に教えてあげましょう
前回お伝えしたように、今まで頑張りすぎたり、人の期待に応えるために「心のメイク」をしてきたのは、自分を守るために必要だったからです。でも、これからの人生には、必ずしもそれは必要ありません。
だから、「心のメイク」を落とし、本来の自分に戻ることが、問題解決につながります。結果としてあなたの心のモヤモヤも晴れます。
「自分の魅力なんてわからない」「本当の自分と言われても、今更どうすればいいのか……」と思う人もいるかもしれません。
今回は、3つのタイプの「心のメイク」を取り上げて、それぞれに対し、「心のメイク」落としのトレーニング方法をお伝えします。
プライドが高く強い競争心に苦しめられている人〜苦手な人にこそ、「負け」を認める
プライドも競争心も、必ずしも悪いものではありません。
「自分はこの仕事にプライドを持ってやっています」
「あの人が頑張ってるんだから、私も頑張ろう!」
と、自分をポジティブな方向に導くものでもあります。
しかし、負けることへの怖れや不安など、ネガティブな気持ちも生むプライドや競争心は、自分を追い詰めるものになってしまいます。
怖れや不安が積もり積もって、行き詰まってしまった人は、その原因となったプライドや競争心を、次のようなトレーニングで手放していきましょう。
①「負け」を認め、白旗を振る
「負けを認める」とは、勝ち負けの世界から降りることを目的としています。
まず、「誰に負けを認めればよいか」を直感で思い浮かべます。それは上司かもしれないし、同僚かもしれないし、お母さんかもしれません。
思い浮かべた人に対し、「◯◯さんの勝ちです。私の負けです」と心の中でつぶやきます。
つぶやいた時点で屈辱的で嫌な気持ちがしたとしたら、それは当たりです。
つまり、あなたはその人と競争していたことが、不快な反応からわかります。
何度もその言葉を心の中で繰り返してみましょう。「負けを受け入れる(=競争をやめる)」ことを選ぶのです。
また、その人に対して「白旗を振る」というイメージをするのも効果的です。実際に、白旗を作って職場のデスクやキッチンなどに置いておくのもいいでしょう。
競争を手放した世界に何が待っているか?
それは、「対等な関係性」です。上下関係ではなく、お互いに対等なのです。
そうすると、お互いを尊重し合い、相手の話を素直に受け入れることができ、同じ目的に向かって協力し合うことができるようになります。
②相手の長所や価値、魅力を認める
強い競争心、高いプライドは、無意識に相手を見下したり、相手の問題点ばかりを見つけて批判・攻撃したくなる要因です。
このワークは、屈辱感や惨めさ、敗北感などの抵抗を強く感じますが、そうした感情が強く出てくる分だけ、競争心が高く、プライドが高いことを表しています。
まず、あなたがつい張り合ってしまう相手の名前を書き出します。そして、その人の長所/価値/魅力と思えるところを、一人あたり20個以上は書き出してみます。
強い競争心を感じる相手に対しては、たくさん書き出したほうが効果的です。
このワークに取り組むことで、今まで見ないようにしていた相手の長所が見えてきたり、相手に助けられている部分があると気付かされるでしょう。
私たちの競争心は家族にルーツがあることも多いので、父、母、きょうだいに対しても、このワークをやってみると、プライドや競争心の根っこを癒やすことができるかもしれません。
③相手に感謝できることを見つける
感謝とは、愛の表現のひとつであり、許しの行為でもあります。
その相手に感謝できることをひとつひとつ書き出していきましょう。
そのさい、「相手が〇〇だから〜が得られた」という構文を使ってみると、より感謝できるポイントが見つかりやすくなります。
例えば、
「上司が無能だから、企画力やプレゼン能力、他部署との折衝能力が養われた」
「後輩の仕事のペースがルーズだからこそ、タイムマネジメントやモチベーションをあげる方法を学べた」
「彼がだらしなかったからこそ、私がしたいことができた」
という風に、うまくポジティブな方向へ転換していきましょう。
自然と、相手に感謝できるポイントを探せるようになります。
期待に応え続けることがつらい人〜心に「のしかかっているもの」を具体化する
①「期待に応えられなかったら?」を想像する
あなたがもし誰かの期待に応えようとする癖があるなら、一度立ち止まって次の質問に答えてみてください。
(1)もし、△△さんの期待に応えられなかったらどうなると思うか? どうなることを怖れているか?
(2)その怖れは本当に起きることなのか? 自分の勝手な想像ではないか?
(3)なぜ本当に起きると思ったのか? 過去に似た体験をしたのか?
(4)過去の体験は具体的にどのようなことか? 自分は何を感じていたのか?
これらの質問にできるだけ丁寧に時間をかけて取り組んでみると、思い込みに気付けたり、過去の傷が癒せたりします。
(1)であえて「△△さん」などと具体的に名前を書いている点にご注目ください。ここには「会社」「上司」「彼氏」「親」などを入れてみましょう。
思い当たる人が複数の場合、実は(3)が共通していることに気付いたり、より深く自分の心を見つめることができるようになります。
②親が自分にかけた「期待」を理解する
期待に応えてしまう背景の多くに、親の存在があります。
例えば、学歴コンプレックスの強い親を持つ人は、その理由を考えてみると、親の人生について考え直したり、親が抱えていた怖れや不安などに気付けたりと、さまざまなことが見えてきます。
そして「親は親で苦しんでいたんだな。それで私たちにそんな期待をかけてきたんだ」と理解できると、不思議なことに誰かの期待に応えようとする気持ちが少しずつ減っていくのです。
同様に、親だけでなく、ほかの親族や学校・塾の先生、クラブの顧問、そして同級生たちなど、あなたに期待をかけてきた人たちの「その理由」を理解すると、期待を手放すことは容易になっていくものです。
その上で「私は△△の期待には応えません!」と心の中で宣言してみてください。
それだけでスーッと肩の荷が下りて軽くなるでしょう。
③自分軸を確立する
「期待に応えようとする」とは、じつは「他人軸」な姿勢を表します。
誰かからの期待には「応えなければいけない」と強く思い込み、期待に応え続けている人は、無意識のうちに自分の気持ちよりも、相手の気持ちを優先させてしまうようになります。つまり、物事を考える軸が他人になっている「他人軸」なのです。
だから、考え方を「他人軸」から「自分軸」に移行させることで、周りの期待に応えるかどうかを自らが選択できるようになります。
「期待に応えてもいいし、応えなくてもいい」
心の中に、そうした選択肢を持てるだけで、するっと心の「メイク」が剥がれるのです。
「自分軸」を確立する方法は様々ありますが、ここでは最もシンプルかつ象徴的なアファメーションを紹介します。
「私は私、人は人」
※「人」の部分には、具体的な名前を入れてみてください
この言葉を、自分と相手との間に線引きをするつもりで、1日に何度も何度も口に出して言ってみます。
これだけでも非常に効果的ですので、ぜひ試してみてください。
なお、この自分軸を確立する方法については、『人のために頑張りすぎて疲れた時に読む本』(大和書房)に詳しく書いています。
誰かのために自分を犠牲にしてきたと感じている人〜自分の「わがまま」を掘り起こす
「犠牲」は、怖れや寂しさなどからくるネガティブな行為で、愛ではありません。
一方、似たような行為に「与える」がありますが、それは愛からの行為です。
やっていることは間違いではありません。行う人がつらい気持ちでいるかどうかの違いなのです。つい犠牲をしてしまう人は「与え上手な人」であり、実は「与える才能が豊か」とも言えるのです。
犠牲をしてしまう人には「自分軸」をきちんと確立することも大切な「メイク」落としになります。前提として、上で紹介した「期待に応え続けることがつらい人」の③を実践してみてください。
①犠牲や我慢してきたことを思い出す
今まで犠牲にしたり我慢してきたことを、思い出せる限り書いてみましょう。そのさい、1〜2行ほど開けて次を書き出すのがポイントです。
そして、「偉かったなあ」と自分を褒める(承認する)ことと同時に、そのひとつひとつに「本当はどうしたかったの?」と自分に聞いてあげます。
「我慢するんじゃなくて、本当はどうしたかったの?」と。
「本当は◯◯がしたかった」という答えがわかったら、それを先ほど開けておいた1〜2行に書き出していきます。
《例》
「お母さんの話をちゃんと聞いてあげた」
→本当は私の話も聞いてほしかった
「学費やお母さんを心配して、家から通える学校に行った」
→本当は弟や妹みたいに東京・大阪に出たかった
こんな風に自分の本音、気持ちを聞き出してあげます。
そうすることで、自分の心とのつながりを取り戻すことができます。
自分の心の声が聞こえるようになると、だんだん自分を後回しにできなくなっていくものなのです。
②思い切りわがままになることを許可する
まず、次のアファメーションを日々何十回も言葉にしてみましょう。
「もっとわがままになっていいよ。
もっと自由になっていいよ。
もっと好きなように行動していいんだよ。
大丈夫。そんなことで嫌われないから!
私はそのままで素晴らしいのだから大丈夫!」
この言葉が口癖になるくらいになると肩の力が抜けて、少し胸を張れるようになっていきます。
自信が持てるようになってきたら、「わがままリスト」を作ってみましょう。欲しいモノ、やりたいこと、何でもいいのでノートに書き出しておくのです。
③「本当にしたいことは何?」と問いかける
自分を後回しにしてきた人はなかなかこの質問に答えられません。
しかし、自分を承認し、わがままになることを許していくと、徐々に自分が本当にしたいこと、自分が本当に欲しいものがだんだん見えてきます。
「あなたが本当にしたいことは何?」と自分に問いかけ続けます。
答えが出ないからといって焦らなくて大丈夫。だんだんしたいことがわかってくるようになります。
ちなみにこの「あなたが本当にしたいことは何?」の答えは人生を左右するような大きな答えは求めていません。
「ゆっくり休みたい」「今日は誰にも会いたくない」「思い切りワインを飲みたい」「ゆっくり買い物がしたい」みたいなことでOKです。
そして、その本当にしたいことを可能な限り「実現」させてあげます。これは「自分の願望を実現する」というトレーニングになるのです。
④誰かのために頑張ってきたことを承認する
この「メイク」をしているあなたは、きっと誰かのために相当頑張ってきたし、与えてきたのです。
それらをリストアップし、そんな自分を「偉いなあ、すごいなあ、頑張ったなあ」と自ら承認してあげるのです。頑張ってきた自分が報われることになり、自己肯定感も高められます。