今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
芸術と人間
今週のさそり座は、いま自分のなかで花開きつつある真実を開花させていこうとするような星回り。
「旅は風雅の花、風雅は過客の魂」という言葉は、俳聖・松尾芭蕉の弟子・許六による『韻塞(いんふたぎ)』という書物に収められた「風狂人が旅の賦(ふ)」という文章の冒頭の一文。弟子の言葉ではありますが、芭蕉の説くところに従ったのでしょう。
一定のルーティンや安定した居場所に自分を置くのではなく、それらを捨て去った漂泊において様々なものを眼にし、交わることで結露する真実を感じること。そして、感じたままにしておくのではなく、それを何らかの仕方で表現し、言いとどめられてはじめて、真実はその人のものとして定着するのだ、というのです。
今週のあなたもまた、逃避でも休暇でもない、これまでの固定された文脈からの逸脱を遂げることで、心を揺り動かしていくことがテーマとなっていくでしょう。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
愛し願うもの
今週のいて座は、失われていくものの甘美な思い出に浸っていくような星回り。
「手を出せばすぐに引かれて秋の蝶」(高浜虚子)は、作者67歳の秋に、幼くして死んだ孫娘を思い出して詠んだ一句。こちらが手を出してやれば、黙ってその手に引かれて歩いていく。そんな様子だったのが、風に吹かれる秋の蝶のように、どこか遠いところへ引かれて行ってしまった。
あるいは、道すがら蝶を見かけたのかもれません。そして美しくはかない蝶に、在りし日の孫娘の魂を見出した気がしたのでしょう。どこまでも淡い句ですが、一度は失われたものも自然の中を経めぐり、また違うかたちで眼前に現れるはずという、どこか力強い思想の影が差しているようにも思えます。
逆に言えば、思想や哲学というものは、そうした喪失や痛みを通すことで初めて切実さを持って追求されていくものなのかもしれません。今週のあなたもまた、いったんは浸った感傷や自己憐憫の沼底から這い出していこうとする抑えがたい衝動に気が付いていくこともあるはずです。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
難しさと楽しさのせめぎあい
今週のやぎ座は、何かを人に伝えていくことの難しさと個人的課題とを、認識していこうとするような星回り。
あまりに直接的な事実だったり、余りにでたらめなウソばかりでは、人の胸には真実らしさとして迫ってこない、リアリティもない。虚と実との微妙な“あわい”にあって、起伏をつくり、その境界をあいまいにすることによって初めて、一抹の真実を含んだ芸術となり得るのだと、江戸時代最大の劇作家・近松門左衛門は『難波土産』の中で説いています。
それを体現している装置が、例えば人形浄瑠璃における「黒子(くろこ)」。慣れない最初こそ人形を操る黒子の存在は目障りで気になりますが、やがて黒子によって人形に命が吹き込まれ、その演技がこちらの想像力を増幅させることに気が付いていくはずです。
今週のあなたもまた、今の自分に足りないのが虚なのか実なのか、はたまたそのバランスにあるのかということについて、改めて考えてみるといいでしょう。