オスカー女優も絶賛の寺島しのぶさん!

【映画、ときどき私】 vol. 158
これまでも国内外から高い評価をされている寺島さんですが、本作ではアメリカのインディペンデント・スピリット賞で主演女優賞にノミネート。並みいるハリウッド女優たちのなかで唯一の日本人としてノミネートされましたが、その際には今年のアカデミー賞主演女優賞を獲得したフランシス・マクドーマンドから賞賛されたほど。
そこで、役づくりのことから現場の裏話、そして悩める女子へのアドバイスなどを語ってもらいました。今回、寺島さんが演じたのは、アラフォーで地味な独身OLの節子。淡々と毎日を過ごしていた彼女が、イケメンの英会話講師に恋をしたことで人生が急展開してしまう様子が描かれています。
節子はこじらせ気味な女性なので共感しやすい役ではなかったと思いますが、どのような印象を受けましたか?
寺島さん 節子は、いそうでいなさそうなタイプ。なので、同世代の人たちは「痛すぎてわかる!」と共感してくれた人と、「ここまではちょっと……」という人に分かれていたみたいですね。
でも、監督が「偶然は必然である」とよく言っていたんですけど、ふとした出会いからドラマが始まっていくというところに関しては普遍的なものだと思っています。監督は日本人ですけど、長年アメリカに住んでいるので、日本の感覚とは違うところから日本の会社に切り込んでいて、そういうバランスもおもしろいなと感じました。
変に説明過多ではないから、もしかしたら万人受けする映画ではないかもしれないですけど、いろいろなことを考えたりもできるので、こういう映画もあっていいんじゃないかなと思っています。

演じるうえで難しかったことはありましたか?
寺島さん 監督が人間のなかにある心のひだの部分をとても大事にしていたので、私の演技もわかりやすくしないでいいよと言ってくれていて、それはすごく助かりました。監督とも意思疎通がきちんとできていたので、撮影現場で困ったことはなかったですね。
好きな男性を追いかけてアメリカまで行ってしまう節子ですが、そこで心境の変化はありましたか?
寺島さん 日本のシーンでは、グレーの地味なスーツを着て会社にいましたが、そうすると私自身も湿った気持ちになっていたんです。でも、いざロスに行くと空気は乾いているし、広いので、そこで気分が変わったんですよ。それに、日本だと人との距離があまりにも近いんですけど、アメリカではその距離感が一気に遠くなるので、それによって生まれた解放感は節子を演じていくうえで活かされた思いますし、それだけで表情も全然違うものになったんですよね。
ギュッと縮こまっていた人がポンッとはじけるとこうなるんだろうなというのも感じましたし、ロスの太陽と広大な土地は人をあんなふうにオープンにさせてしまうんだとわかりました。

今回、節子が恋に落ちるアメリカ人男性を演じたのは、ハリウッド俳優のジョシュ・ハートネット。以前はトップスターとして数々の主演作をこなしていましたが、私生活を優先するためにハリウッドからは一時期離れており、ここ数年で本格的にメジャー復帰を果たしたばかり。
実際にジョシュと共演してみて、どういう印象でしたか?
寺島さん 気取ったところもまったくないし、とにかく普通にいい人なんですよ(笑)。「自分を見失ったから、一回ハリウッドを出ちゃおう」と思うような素朴で健康的な考えがある人なんだなとも感じました。
それに、彼はこれまですごいキャリアを積んできたにも関わらず、新人監督である平栁監督の言うことでも真摯に受け取っていて、一生懸命がんばっていました。だから、一緒に仕事がしやすい人でしたね。