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焦ってない…? 注目作『29歳問題』から学ぶ正しい30代の迎え方

エンタメ

人生において、女子が一度はぶつかる30歳の壁。仕事か結婚か、答えの見えない問いかけに揺れ動く気持ちは誰もが経験したことがあるはず。そこで、アラサー女子なら共感せずにはいられない注目作をご紹介します。それは……。

どこの国でも起きている『29歳問題』!

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【映画、ときどき私】 vol. 162

2005年、香港に暮らすキャリアウーマンのクリスティは、あと1か月で30歳を迎えようとしていた。そんななか、勤め先の化粧品会社では高く評価されて部長に昇進。長年付き合っている恋人もいて、順風満帆に見えていた。しかし、実際は仕事のプレッシャーに押しつぶされそうになり、忙しさのあまり彼氏ともすれ違うばかり。

しかも追い打ちをかけるように、家主から突然の退去勧告を言い渡され、紹介された仮住まいに移ることになる。そこは、クリスティとはまったく違うタイプの女性ティンロの部屋。彼女がパリに旅行している間、住むことになったのだが、クリスティはティンロの日記を読むうちに、気持ちが大きく変わり始める……。

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タイトルの通り、29歳は女子にとって、さまざまな困難に見舞われやすい年ごろ。そこで、そんな女子たちのリアルな心情を映し出すことに成功したこちらの方に、悩みを乗り越える心構えや本作の成功までの道のりを聞いてきました。それは……。

長編デビューをはたしたキーレン・パン監督!

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もともと、香港では有名な舞台女優であり舞台演出家としても活躍中のパン監督ですが、この作品は2005年に制作・脚本・主演を兼ねた自身のひとり芝居を映画化したもの。

では、そもそもこの題材を選んだきっかけは何ですか?

監督 その当時、私自身がちょうど30歳のときでしたが、周りの女友だちは30歳を目前にしたら、まるで台風がやってくる前の「戸締りをしなきゃ!」みたいな感じで一斉に大騒ぎしだしたんです。

私には全然そういう気持ちがなかったのですが、「なんでそんなに大変なの?」と見ているうちに、もしかしたらこういうテーマを描いたらおもしろいのかなと思うようになり、舞台版の脚本を書き始めたんです。だから、登場するキャラクターは、私の女友だちがモデルになっていたりします。

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そんなふうに周りが騒いでいるなか、監督は29歳から30歳になったときはどのような心境でしたか?

監督 そのとき、私は自分のために脚本を書いていて、これを演じたいと思っていたので、それより先の将来がどうなるのかについては、実はあまり考えていませんでした。周りの人たちは、それぞれ志を持って、30歳のときにはこうならなければいけないとか、いつまでに結婚しなければいけないとか、そういうのがあったみたいですけど。

でも、私はわがままなので、自分のために芝居を制作するということしか頭になくて、恋愛のことでさえも考えていなかったですね(笑)。

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日本でもクリスティのように仕事に重きを置いている女性が増えていますが、香港の女性はどのような感じですか?

監督 香港も日本と近い状況だと思いますよ。それどころか、今回来日して、こんなにも似ているのかと感じたくらいなんです。どこでも、女性たちは同じようなプレッシャーを感じているんですね。

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海外の映画祭などでも上映されたそうですが、ほかの国でも万国共通の反響がありましたか?

監督 以前、アメリカの地方にある小さな町の映画祭で上映したとき、観客の多くは年齢層が高い方々ばかりだったので、「この映画を観てどう思うのかな」とすごく心配したことがありました。

ところが、上映が終わると観客たちが私のところにやってきて、「この映画はまさに自分の状況を描いている」と泣きながら話す女性や、「大都会に住んでいる娘の考え方や仕事の大変さがよくわかった」という男性、さらに70代のゲイカップルにいたっては、「自分たちが若い頃に下した決断は正しかったと確信した」と言ってくれました。

観客によって、作品が持つ違う側面にも気づかされたということですね?

監督 そうなんです。ヨーロッパやアメリカの観客の方々はこういう角度でも映画を観て感動してくれるんだとびっくりしました。だからこの映画は単にアラサーの女性が抱えている問題について語っているわけではなくて、誰もが人生で直面する問題を描いた映画なんだと改めてわかったんです。

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この作品は、もともと舞台劇であり、クリスティもティンロもパン監督が女優としてひとり二役をこなしたひとり芝居。

なぜそのような形にしたのですか?

監督 理由はいくつかありますが、まず一番の理由は、最初に話したように自分のために脚本を書いてみたかったということ。ただ、脚本は書いたけど自信がなくて、プロの役者や監督にお願いしたら「この脚本は下手だな」と思われるかもしれないと怖かったんです。それだったら、自分で演出して演じればいいと思ったんですよ。

あと、2つ目の理由としては、ひとりなら好き勝手に何でもできるし、意外と楽しいというのもありました。そして最後の理由は、お金がなかったんです……。舞台はけっこうお金がかかるので、政府の助成金を申請したんですけど、5か月間の舞台をするのにもらえたのは、3万3000香港ドル(約46万円)。そのうち、私の給料は4000香港ドル(約5万6000円)だけ。5か月間の給料ですよ(笑)!

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そんな苦労が報われるかのように舞台は大成功を収め、その後8年間にわたって何度も再演されるほど人気の舞台になったそう。

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