あこがれの人、がんばってる人、共感できる人。それと、ただ単純に好きだなって思える人。そんな誰かの決断が、自分の決断をあと押ししてくれることってある。20~30代のマイナビウーマン読者と同世代の編集部・ライターが「今話を聞いてみたい!」と思う人物に会って、その人の生き方を切り取るインタビュー連載。
取材・文:高橋千里
撮影:大嶋千尋
編集:鈴木麻葉/マイナビウーマン編集部
小学生時代、“後藤真希”は憧れの女性だった。
私の小学生時代はモーニング娘。(以下:モー娘。)一色だった。初めて自分のお小遣いで買ったCDは『LOVEマシーン』だし、楽曲に合わせて見よう見まねでダンスを踊ったり歌ったり、友達と推しメントークで盛り上がったりした。
そんなモー娘。の中でセンターを張り、一際クールに輝いていたのが、彼女だった。
2001年にソロデビューを果たし、その後もハロー!プロジェクト(以下:ハロプロ)内で数々のユニットを結成。2007年にはハロプロを卒業し、ソロで歌手活動を続ける傍ら、最近はYouTubeチャンネル『ゴマキのギルド』でゲーム配信などをし、老若男女問わず新たなファンを増やし続けている。
そして2021年には、10年ぶりの有観客ライブ、そして10年ぶりの写真集を発売することになり、世間を騒がせた。まさに「後藤真希の集大成」ともいえる1年だが、今年36歳になった彼女は今、何を思っているのか。
世間に求められる理想像とのギャップ
“オトナになった今が一番飾らない自分でいられる”
この一文は、11月に発売された写真集『ramus』の告知文に添えられた、後藤真希の本音ともいえるメッセージだ。
「“自然体な私”というのは、気を使わないというか、変にかっこつけず、思ったままの雰囲気でそこにいる姿のこと。この写真集を撮ったとき、カメラの先にファンの方々を思い浮かべたんです。そうしたらすごく楽しい気分になって、自然な表情でいられたんです」
芸能界デビューを果たしてから今までずっと、目の前のファンの存在を一番大事に考えてきたという後藤真希。ハロプロで活動していた頃も、それは変わらなかった。
「モー娘。時代のライブでDVD撮影用のカメラが入っていたときも、私はあえてそこに目線は送りませんでした。今思えばカメラマンさん泣かせだったかも(笑)。それだけ、会場に来てくれたファンの方々に向けてパフォーマンスしたかったんですよね。そのほうが私自身も楽しかったですし、目の前にいるファンを大事にしたかったので」
当時から、自分の信念を貫くタイプだったという。「楽しくないときに、無理にアイドルスマイルを作らない」「自分の好きな髪型でパフォーマンスする」など、誰に何を言われようと自分のやりたいことをする、という姿勢は今も変わらない。
ただ、それでもグループに所属している以上、“世間に求められている後藤真希”のイメージに応えなければいけないこともあった。
「新曲やツアーのたびに、前回よりダンスや歌のレベルアップを期待されていたので、プレッシャーは大きかったですね。それをどうやって、いい意味で裏切って超えていくかが課題で。私自身も理想が高くなるし、『このレベルに達しないと私はダメだ』と思ってしまうから、なかなかそこに辿り着けなくて苦しんだこともありました」
“天才肌”として見られていた後藤真希ならではの苦悩。完璧なパフォーマンスやカリスマ的な魅力は、天性の才能なんかではなく、影の努力によって作られていたものだった。
“自分らしさ”は誰もが元々持っているもの
現役アイドルや元アイドルの方に取材をしていると、「会社員とアイドルは似ている」と思うことがある。特定の組織に所属しながら、複数人でのチームワークやパワーバランスが求められるところ。そして、その組織が求める成果を出し続けなければいけないところ。
組織の中にいると安心感はあるが、その一方で、自分の意見を言いにくかったり、やりたいことができなかったりといった不満が生じることもある。自然体でいることとのバランスを、どのように取っていけばいいのだろうか。
後藤真希に聞くと、「うーん……」と天を仰ぎながら、当時を思い返してこう語った。
「やらなきゃいけないことをちゃんとやった上で、それを“やらなきゃいけないこと”だと思うかどうか。自分が楽しいと思えば、それは楽しくなる。疲れると思えば、本当に疲れてくる。気持ちの面で切り替えることが大事ですね」
返ってきたのは、たくさんの山場を超えてきた彼女ならではの、現実をまっすぐに見据えた答えだった。しかし、今やっている仕事が、本来自分のやりたいことでないとしたら?
「今の仕事は、いずれ自分がやりたいことへのステップ段階だと捉えるのがいいと思います。先に歩きたい道があるのに、今は全然違う道を歩いているって感じるかもしれないけど、それは違う。ステップの一つなんです。どうしても今やっていることだけを見てネガティブになっちゃいがちだけど、そうではないんだよって、伝えてあげたいですね」
とはいえ彼女も、ハロプロ時代は「ただ何も考えず、がむしゃらに目の前のことをやっていた。当時はそれしかなかったから」と話す。