今週のふたご座の運勢

illustration by ニシイズミユカ
物語化していくということ
今週のふたご座は、大難を小難に、小難を無難に変えていこうとするような星回り。
2004年に発表された宇多田ヒカルさんの13枚目のシングル曲『誰かの願いが叶うころ』は、「私」のもとから「あなた」がいなくなってしまった、というシチュエーションに身を置いている失恋ソング。その途中に「誰かの願いが叶うころ あの子が泣いてるよ みんなの願いは同時には叶わない」という一節があります。
ここでは「自分の幸せ」と「あなたの幸せ」が一致することは決してない、という悲観的なビジョンが提示されているのですが、それは単に相性の問題というより、「共同性」という理念の限界であり、「あなた」という他者性の肯定でもあるのではないでしょうか。
つまり、「私」の目的を叶えるために誰かを操作したり教育したりすることは、その誰かの他者性を否定することであり、この曲では複雑な心理のなかで引き裂かれつつも、ふとそうした他者性の否定の否定へと向いていこうとしているように思えます。あなたもまた、どうせ他者のことなど分からないと開き直るのではなく、今だからこそ受け入れられることはないか、探してみるといいでしょう。
今週のかに座の運勢

illustration by ニシイズミユカ
俳句も郵便も
今週のかに座は、取り組んでいかなければならない、果てしない積み重ねを遠望していくような星回り。
それはまるで、「冬山やどこまで上る郵便夫」(渡辺水巴)という句のよう。木が枯れ、石も冬ざれている、まるで山水画のような山道を郵便夫が上がって行っている。届け先の家と言ったって、どこかに1軒か2軒かが点在しているくらいの程度であるのに、郵便夫はなおも山道を上りつつあるので、いったいどこまで上っていくのだろう、とやるせない心細げな作者の心持ちが伝わってくるかのようです。
いくらそういう職業とは言え、わずか1つか2つの郵便を届けるために、際限もなく淋しい山道をゆくその果てしなさに、作者は同情しているのか、それとも、どこかで自分を重ねているのか。おそらくはその両方なのでしょう。
俳句も郵便も、考えてみれば単調な行為の果てしない積み重ねの上に成り立っており、それは今のかに座の人たちにもどこかで通底するのではないでしょうか。あなたもまた、ひとつこんな郵便夫になったつもりで過ごしてみるべし。