吉祥寺駅の近くという都会にありながら、週末限定で牧場の魅力を感じることができると評判なのが「武蔵野デーリー クラフトミルクスタンド」。もともと100年ほど前から続いている牛乳屋さんで、現在は放牧牛乳を中心に全国各地の牧場主さんのさまざまな思いが込められた、こだわりの牛乳を取り揃えています。
牧場主さんの思いとともに牛乳を提案する「武蔵野デーリー クラフトミルクスタンド」
吉祥寺駅から井の頭通りを三鷹方面へ歩いて5分ほど。100年ほど続く牛乳屋さんが、トラック置き場だったという店先と冷蔵庫だったスペースを利用して、週末限定のクラフトミルクスタンドを開いています。お店のSNSをチェックすると、全国各地にある牧場のリアルなレポートが盛りだくさん。運営している方はさぞかし牛乳好きなのかと思いきや「実は牛乳が嫌いでした」と話します。
平日は広告代理店で働いているという取締役の木村充慶さん。「牧場主さんの著書に感銘を受けて北海道まで見学に出かけた際に、放牧による牛乳の繊細な味わいにも感動しました」と、30歳を過ぎてから北海道旭川市にある「斉藤牧場」がきっかけで牛乳好きになったそう。それ以来、全国100カ所以上の牧場をめぐっている充慶さん。さまざまな牛乳の味わいだけでなく、乳牛が育てられている環境や牧場主さんの考え方などを含めた「牧場で感じることを追体験」できるようなお店を考えたといいます。
70歳を過ぎても毎日トラックで牛乳などの飲料を運ぶ父・義之さんを心配して、運転などの負担が少ない仕事環境を築こうとしたのもきっかけだったとか。自動販売機の商品を扱う仕事が中心だったこともあり、その面影は店先にも残されています。吉祥寺にある自家焙煎シングルオリジンコーヒーショップ「LIGHT UP COFFEE」とのコラボ限定商品など、入荷直後ながら大人気ですでに売り切れのコーヒー牛乳もありました。
味わいだけでなく牧場の環境や仕組みの違いまで伝わる「3種飲み比べセット」
牧場から取り寄せたフレッシュな牛乳が入っている大きなミルク缶。充慶さんが実際に牧場で味わったなかから、月替りで3種類ほどを厳選して提供しています。牛の品種や与えているエサ、育て方、製造方法により味わいはさまざま。
まずは牧場や牛乳の情報がまとめられたカードを読みながら、それぞれの違いが楽しめるという「3種飲み比べセット」700円から頼んでみました。
印象的だったのが東京都八王子市の住宅地のど真ん中にあるという「磯沼ミルクファーム」の「みるくの黄金律」。立地としては放牧などが難しい環境なのですが、建物の区分けをせず牛たちが自由に動き回れる工夫をしたり、地域で余った食材をエサに利用したり。ガンジーやエアシャーといった珍しい品種を含む6種類の乳牛から絞られた牛乳はひときわ甘みが強かったです。
広島県三次市にある「二本松牧場」の「やさしい牛乳」は卵のような甘さがあって後味はすっきり。こちらの牧場は使用されなくなった田んぼを再活用し、ジャージー牛たちの健康を第一とする自然循環酪農を実現しているそうです。
特にさわやかな口当たりだったのが北海道足寄「ありがとう牧場」の「放牧牛乳」。広大な自然を利用した牛にとっても人にとっても健康的な環境で育まれた牛乳は、チーズやアイス作りにも最適だそう。
牛乳そのものの魅力たっぷり「放牧ソフトアイス」「しあわせチーズ工房 チーズの赤ちゃん」
そんな「ありがとう牧場」の「放牧牛乳」を原料としているのが「放牧ソフトアイス」400円。原材料は牛乳、砂糖、塩だけで添加物などは一切使用せず、丁寧に時間をかけてアイスにしているそう。サックリとした軽めの食感で、「放牧牛乳」の自然な甘さが広がるたまらない味わいです。充慶さんが牧場をめぐりながら数十、数百と食べ比べたアイスのなかでも最も衝撃的だったものだそう。
同じく「ありがとう牧場」の「放牧牛乳」を原料としているのが「しあわせチーズ工房 チーズの赤ちゃん」700円。レンネットという酵素の混合物で牛乳を固め、本来であればここから水分を抜き発酵させるなどしてチーズを作るのですが「牛乳の味をそのまま楽しんでいただきたい」と、そのまま「チーズの赤ちゃん」の状態で提供しています。こちらも味わいはピュアな牛乳そのもの、杏仁豆腐のようなプルンとした食感でした。お好みでカナダ産のオーガニック・メープルシロップをかけてもらえますよ。
牛たちがのびのびと暮らす牧場に思いをはせつつ、牧場主さんの考え方がどのように牛乳の味に反映されているのかまで分かる「武蔵野デーリー クラフトミルクスタンド」。本来であれば牧場でしか味わえないような、加工段階のチーズを楽しめるのも興味深かったです。こちらの牛乳を飲んで興味がわいたら、充慶さんのように気に入った牧場まで直接足を運んでみるのもステキだと思いますよ!
■武蔵野デーリー クラフトミルクスタンド(むさしのでーりー くらふとみるくすたんど)
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-25-3
TEL:0422-22-0023
営業時間:土曜9〜17時(日曜〜16時)
定休日:月〜金曜(平日は不定期で営業)
Text&Photo:柴山たき(effect)
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