今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
神さまの味がする
今週のかに座は、食べ、味わい、内に取り入れていく対象を、改めてきちんと吟味していこうとするような星回り。
「gustus」というラテン語のごとし。英語でいうと「taste」のことで、味覚や趣味とも訳される言葉です。哲学者の山内志朗によれば、12世紀の神学書にはこの「gustus」という語が頻出してくるのだとか。
聖体拝領の際のパンと葡萄酒はキリストの肉と血である訳ですが、キリストの肉を食べるということは、じつはキリストに食べられるということでもありました。構成員になるということは、キリストの身体の一部になるということを意味し、聖体拝領とは、そのための通過儀礼だったという訳です。
あなたもまた、ある意味でそうした「食べる」こと、感じることを通してどうしたら自分を越えた何か大いなるものの身体の一部となりえるか、そしてその神秘的な身体に生気を与え、活気づけることができるかということが問われていきそうです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
聖なる瞬間を求めて
今週のしし座は、自分の力ではどうにもできない采配の妙に直面していくような星回り。
『湯気立てて来世のやうに二人をり』(櫂美知子)という句のごとし。旅先の緊張感からやっと1日の疲れを癒せるという気の緩みへの落差も手伝って、ついついそんな現実離れした景に見えてしまったのかも知れません。
自分の力ではどうにもできない天の采配としか言いようのないものの痕跡があり、立ち込める「湯気」が視覚的な効果だけでなく、そこによりなまなましい質感を伴って迫ってくるような触覚的な効果をもたらしているのだとも言えます。
あなたもまた、そんななまなましい質感やぞっとするような体感を切実に求めていくようになるはず。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
絶妙な酸味を目指して
今週のおとめ座は、みずからをあえて時代の影響の外に置いていこうとするような星回り。
「眠るジプシー女」などで知られるアンリ・ルソーという特異な日曜画家がピカソによって奇跡的に見出され、発掘されたというのは有名な話です。ある日、古道具屋でたくさんの絵の中から一部はみ出している絵に視線を落とし、全体を見るなりピカソはその絵を買ってしまったのだそう。
砂漠の月光を浴びて眠っているジプシー女と、女の首のあたりにライオンが頭を下げて鼻を近づけているという、状況としては緊迫しているはずなのに、どこまでも静寂な絵なのですが、横尾は「ライオンの尾の先がピンと上を向いて立っている」ことで、どこか不穏な絵にもなっているのだと書いています。
あなたもまた、あなたなりの不穏さをまぎれこませていきたいところです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
重荷をおろす
今週のてんびん座は、味気ない人生を救ってくれる絶大な偉力を、探し求めていこうとするような星回り。
『葬の前の物争ひや冬日落つ』(石島雉子郎)という句のごとし。作者はあえて物争いを非難してもおらず、かと言って、賛成してもいないのである。代わりに、ただ起きた事実をそのまま書き起こし、同時に、冬日が落ちかかった物淋しい光景を描いている。
すなわち、作者はここで物争いの善悪是非を論ずるよりも、それらをことごとく矮小な些事であるかのごとく圧倒する大自然の在りように、慰めを見出していたのかも知れません。
あなたもまた、さりげなく些事に寄り添ってくれているこの世界の神秘にできるだけ目を向けていきたいところです。