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[市川紗椰の週末アートのトビラ]国立新美術館「ルーヴル美術館展 愛を描く」をご案内

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市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第12回は国立新美術館で開催中の「ルーヴル美術館展 愛を描く」を訪問しました。

今月の展覧会は…ルーヴル美術館展 愛を描く

「愛」を描いた名画を通して今の自分にとっての「愛」や「美」を知る

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パリのルーヴル美術館は、とにかく広大で濃厚な大作ぞろい。何度か訪れたことがありますが、私は『モナ・リザ』前に集まる世界の観光客の表情や動きについ注目しちゃいます。その膨大なコレクションから、「愛」をテーマに絵画作品を選び、編み直した企画展を訪れました。

現代の私たちが「愛」と聞くと、身近な恋愛を連想しがちだけど、美術の世界では少し違う。古代の神々の愛、キリスト教の神の愛など、西洋文化のベースにある「愛」の絵が登場します。愛の神アモル(キューピッド)のハートを射る矢や、つがいの鳩、バラの花など、象徴的なモチーフが色々なかたちで描き込まれ、それを探し出すだけでもたっぷり楽しめそう。真珠だけを身につけた裸婦像や、陶器のような肌など、人が何にエロスを感じてきたのかもうかがえます。

18世紀末作の『アモルとプシュケ』で描かれているのは、若く美しい愛の神と人間のお姫さま。二人とも、大人になる前の未成熟な体つきが表現されていて、「無垢な愛」を象徴しているそう。え、ピュアなの? 確かにきれいだけれど、キスをされたこの少女の表情って……?と、私は逆に、見てはいけないものを見ているような、背徳的なものを感じてしまいました。怪訝な顔の私に、研究員の宮島綾子さんが、16〜19世紀の絵画は「男性が注文し、男性が描き、男性が見る」ためのものだったことを教えてくれました。そうか、時代の価値観を知ると、今の自分との歴史的な距離がよくわかる。違和感の奥を知ると、絵の見方が立体的になるのが面白い!

情報量がめちゃ多くて、勉強になる西洋絵画。何よりの収穫は、今、自分が何を美しいと思っているか、自分にとって愛は何か、と考えられたこと。絵を見ることは、自分を知ることに行きつくのだな、とあらためて実感しました。

絵の中にちりばめられたモチーフをひもときながら、普遍的な愛からエロスや欲望まで、たっぷり堪能!

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ルイ=ジャン=フランソワ・ラグルネ(兄)(右)『眠るアモルを見つめるプシュケ』1768年・(左)『ウルカヌスに驚かされるマルスとヴィーナス』1768年ともにパリ、ルーヴル美術館蔵ルイ15世の寝室に飾られていた18世紀の2作品。丸い額縁ものぞき穴のようで、男女の“視線”に注目です

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フランソワ・ブーシェ『アモルの標的』1758年 パリ、ルーヴル美術館蔵

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展覧会の最初の部屋はピンク色。大作『アモルの標的』が出迎えます。ハートの的に矢が刺さり、愛が生まれる瞬間を描いた18世紀の作品

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サミュエル・ファン・ホーホストラーテン『部屋履き』1655〜1662年頃 パリ、ルーヴル美術館蔵
脱ぎ捨てられた女性のスリッパ、誰かを迎え入れるために慌てて片づけたような部屋の様子が意味深な『部屋履き』。メインに人物が登場しない絵画は珍しくて、印象に残る

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フランソワ・ジェラール『アモルとプシュケ』、または『アモルの最初のキスを受けるプシュケ』1798年パリ、ルーヴル美術館蔵
この展覧会のメインビジュアルになった作品『アモルとプシュケ』は最後の部屋に

トビラの奥で聞いてみた

展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは…国立新美術館主任研究員 宮島綾子さん。

市川 最初の展示室がピンク色! 大胆だなと思いました。

宮島 いちばん初めに皆さんが訪れる場所なので、愛というテーマにふさわしい色を考えました。「わあ!」と引き込まれますし、ピンクは伝統的に愛を象徴する色なので、ルーヴル美術館の方とも相談して決定しました。

市川 ここに飾られている作品は『アモルの標的』ですが、シンプルな額なので、受け取る印象が少し変わりました。

宮島 こういった古い作品は、豪華な装飾が施された金色の額に入っていることが多いですが、日本で展示するときは、輸送用のシンプルで軽い額に入れ替えられることがあります。

市川 たとえば丸型の絵画は「のぞき穴」からの構図が際立ちますね。額がモダンなのが意外な効果で、面白かったです。

宮島 今回のようなテーマ展では、ルーヴル美術館の常設展示では別々の場所にある作品が隣り合わせに並んだり、額が変えられていたりと、現地で見るのとは異なるかたちで作品を鑑賞していただけます。作品の新たな魅力を発見していただけたら嬉しいです。

訪れたのは…国立新美術館

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