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創業者の思いを受け継ぎ、「本まつばや」4代目がリニューアルに挑んだ「刻-toki-」/人気店の定番スイーツ vol.59

グルメ
長年愛される「定番」スイーツ紹介の連載第59回は、大阪で100年近く続く和菓子店「本まつばや」の「刻-toki-」をご紹介します。

創業者が夜空に浮かぶ月と雲をイメージして創作。60年以上愛されてきた代表銘菓を、次期4代目の若き職人がリニューアル。伝統を受け継ぎつつ、さらなる進化を遂げています。通年販売品ですが、秋の名月を愛でながらいただくのにもぴったりです。

1927年に大阪で創業した「本まつばや」の歴史

「本まつばや」の初代・松下太三郎氏が、大阪で和菓子商を始めたのは1927年のこと。当初は店舗を構えず、見本箱にお菓子を入れて注文を聞きに回ったそうです。

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2年後に開業した店舗は戦災で焼失するも、戦後に天王寺区で商売を再開。そんな太三郎氏が、岡山県産の「備中小豆」の美味しさがより伝わるお菓子として考案し、1956年に発売したのが「なにわ京」でした。

羊羹を夜空、栗を月、求肥を雲に見立て、切り分けた断面にそれらが織りなす光景が現れます。

代表銘菓を新たな素材に換えてリニューアル

以来、60年以上愛されてきたこのお菓子が、2023年にリニューアルを遂げ、新たに「刻-toki-」と名付けられました。手掛けたのは、2012年、高校卒業後に、老舗の次期4代目として入社した松下壮太郎氏です。

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「なにわ京」には備中小豆を使っていましたが、「刻-toki-」には、新たに探し求めた有機無農薬栽培の大納言小豆を使用。ふっくらとみずみずしい粒感たっぷりの羊羹の中に、芳しい自家製の栗甘露煮と、とろけるようにやわらかな求肥を閉じ込めています。

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基本的な製法自体は以前と変わっていませんが、シンプルな素材使いだからこそ、重要な「小豆」を変えることで、砂糖の浸透具合や、他の素材とのなじみ感なども変化し、納得のいくまで微調整を繰り返したそうです。

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菓銘の「刻-toki-」には、“時を刻む和菓子”という意味が込められています。切る度に、羊羹の断面に現れる栗と求肥の形が少しずつ変化する様は、あたかも、夜空に浮かぶ月と雲とが刻々と変化していくかのよう。

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初代から4代目に至るまで、刻々と流れてきた時間と、変わらず受け継がれてきたもの、変化してきたものとを物語るかのようです。

4代目の新たな挑戦に注目

「生まれた時から美味しい和菓子が身近にあって、小さい頃からあんこが好きで、今でもあんこが大好きです。」という、次期4代目の松下壮太郎氏。

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「本まつばや」が大切にしている思いの一つが、日本人の食の原点に戻り、和菓子を通じて次代を担う子供たちの生きる力を育む一助になりたい、ということ。

和菓子店にとって、長年使用してきた「小豆」を変えるというのは、非常に難しい挑戦ですが、体にもやさしく素材本来の美味しさを感じていただけるようにと、敢えて取り組んだのはすごいことです。

2012年には、新しい食感の和菓子を作ろうと試行錯誤を重ね、「月あかり」という菓子も生み出しました。お干菓子とマシュマロを合わせたような珍しい食感の半生菓子で、柚子の香りが広がります。

創業者からの伝統を継承する「刻-toki-」と、若い感性から新たに生み出された「月あかり」。どちらも、月の美しさを愛でるのにぴったりのお菓子です。煎茶や抹茶と相性がいいのはもちろんですが、コーヒーや紅茶と合わせたり、或いはお酒と共にいただいたり。色々と自由に試しつつ、食べ比べするのもいいですね。

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刻-toki-/本まつばや
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