夫婦げんかが絶えなくなって、もう限界……。離婚をしたいと思ったときに、まず何から始めるべきなのでしょうか。今回は、夫婦問題・離婚カウンセラーの北村貴子さんに、「夫婦問題の今」や「離婚を決断する前に考えるべきこと」について、お話を伺いました。
教えてくれたのは……北村 貴子さん
「夫婦関係カウンセリング すまいる相談室」代表カウンセラー。
夫婦問題・離婚カウンセラーの資格保有。プラットフォーム型カウンセリングの登録カウンセラーとして離婚相談やDV問題に従事。その経験を経て2019年独立。メンタルケア心理士として精神医療の研究にも取り組む。現在は横浜市を拠点に、オンラインでは国内のみならず海外からも依頼多数。
ライフスタイル、年代とともに変化していく「夫婦問題」
――夫婦問題で、最近目立って増えていると感じるケースはありますか?
コロナ禍以降にテレワークが導入され、一緒にいる時間が増えることで価値観の違いが顕在化されてしまい、夫婦げんかが多くなったという相談者の方が増えました。コロナ禍自体は落ち着いても、その働き方はずっと継続しているので、不満が改善されないといったご相談を多くいただいています。
主な不満の内容としては、家事分担や育児の仕方、考え方の違い、コミュニケーション上の不満が多い印象です。
具体的にいうと、奥さんは子どもを連れて土日ぐらいは出かけたいと思っているけれど、旦那さんは気乗りせずに意見が合わない。
自宅で仕事をしているとオンオフの切り替えができずに、食事をとったらどちらかが部屋にこもってしまうなど、コミュニケーションに対する考え方の違いが出てきやすいようです。
――テレワークにまつわる夫婦問題は、たしかによく耳にしましたね。どの年代の相談件数が多いですか? 年代によって、相談内容に違いはあるのでしょうか?
相談件数で一番多いのは30代・40代です。ただ、飛び抜けて多いわけではなく、20代・50代・60代の相談者の方もいらっしゃいます。若い方だと価値観や性格の相違、産後クライシスのご相談、50代・60代になってくると、離婚問題も踏まえて修復できるのか、また熟年離婚のご相談が多いです。
「夫婦カウンセリング」は変わりたい人のためのサポート
――夫婦カウンセリングは、夫婦そろって受けるのですか?
夫婦お二人が問題に対して向き合っていて改善したいと思い「夫婦カウンセリング」を希望する方も、とても多いです。もちろん、お一人でご相談に来られる方もいらっしゃいます。その場合には、相手方への伝え方やコミュニケーションの考え方等をアドバイスしています。
――カウンセリングに対して前向きではないパートナーも多いイメージがありますが、実際はいかがですか?
やはり、誰でも成立するわけではないのが実情です。2人が問題に対して向き合っていて、さらに双方が自分から変わる気がないと、修復は少し難しくなってしまいます。「先生から相手に注意喚起してほしい」とご相談いただくこともよくあるのですが、カウンセラーが人を変えるのではなく、カウンセリングは変わりたい人のための支援だと捉えていただけたら、とお伝えしています。
――どのようにカウンセリングをおこなうのでしょうか?
たとえば、ご相談の多いケースで「相手がすぐにヒステリックなるために冷静な話し合いができない」といった問題だとすると、健全なコミュニケーションを説明したうえで、アンガーマネジメントに取り組んでいただくなど、理学的なアプローチ方法をとることもあります。
「相手が話を聞いてくれない」といった問題であれば、お二人だからそうなってしまうのではなく、どの夫婦にも起こりやすいことなのだと、男女の脳の違いや傾向についてお話しさせていただいて、お互いが歩み寄れるようなアドバイスから始めることもあります。ご相談される方や、その相手方の性格に合わせて進めていく形です。
離婚を決断する前に考えるべき「3つのこと」
――修復が難しく、「離婚に向けて動きたい」となった場合にすぐに決断してもよいのでしょうか?
離婚を決断する前に考えるべきポイントは、3つ挙げられます。
1つ目は「離婚後の生活設計」です。住む場所、生活費の工面をどうしていくのか。仕事をもっていて自立をしている、実家に頼れるという方はまだよいのですが、パート主婦や専業主婦の方はまずは自立の準備から考えていかなければなりません。
2つ目は「別居の選択肢」です。すぐに離婚できなくても、別居というステップを踏む考え方もあります。相手方と話し合いができる状態で、相手が協力的であれば、生活費をもらいながら自立の準備をしていくなど、離婚に向けての助走期間として別居を検討するのもひとつの方法です。
3つ目は「お子さんの環境を整えること」です。お子さんがいらっしゃる方は、お子さんファーストで考えていただきたいと思います。生活圏内が変わると転校しなくてはなりません。学校をどうするのか、相手方の育児の参加をどうするのか、などを話し合う必要があります。相談者の方の中には、2人だったら離婚しているけれど、お子さんのために修復を選択する方も多くいらっしゃいます。