小学1,2年生は歩行中に交通事故に遭いやすい「魔の7歳」と呼ばれ、特に5月はそのリスクが高まる時期です。親がずっと見守るわけにもいかない中、こども自身が危険を察知し、身を守れるようになるには。こどもの「危険回避能力」を高めるための絵本を専門家がつくりました。
警視庁の統計によると、2023年の小学生の交通事故は全国で1109件あり、3人が亡くなりました。事故は平日の午後4時から6時、下校中や下校後とみられる時間帯に多く発生していました。
歩行中の交通事故に限ると、「魔の7歳」という言葉があります。これは死者・負傷者を年齢別にみたときに、7歳が突出していることから名付けられたもの。歩行中の事故は、小学校低学年で特に多いことがわかります。
小学生の歩行中の交通事故による死者数(学年別)
出典:内閣府「令和2年交通安全白書」
小学生の歩行中の交通事故による死者・重傷者数(学年別)
出典:内閣府「令和2年交通安全白書」
1年生は5月がピーク
2020年の交通安全白書によると、2015年から5年間の交通事故で、歩行中だった小学1年生の死者数は小学6年生の8倍、死者・重傷者数では3.7倍となっていました。
発生月別では3〜6月、10月、11月が多く、特に小学1年生は、入学して間もない4月よりも5月中旬から下旬が多く、第1のピークとなっていました。登下校中のほか、私用で歩いているときにも事故が多く発生しています。
小学生の歩行中の交通事故による月ごとの死者・重傷者数(目的別)
出典:内閣府「令和2年交通安全白書」
小学生の歩行中の交通事故による4〜6月の死者・重傷者数(目的別)
出典:内閣府「令和2年交通安全白書」
交通事故総合分析センターは2016年のレポートで、このように分析しています。
「小学生になると児童だけで登下校をし、下校後は一人で遊びに出かける機会が増えていきます。こどもの歩行中の交通事故の多くが平日の日中に発生していることから、こどもだけで行動しているときの事故だと考えられます」
「7歳をピークに死者・重傷者数が減るのは、こども自身が危険な状況に遭遇し、その経験を通して、どのような行動が危険なのかを学んだという背景があるのではないでしょうか」
「危ない」に敏感になる
「子どもの安全ブログ」の著者であり、セコムIS研究所リスクマネジメントグループ主務研究員の舟生岳夫さんは、こどもが危険を察知して身を守る力、つまり「危険回避能力」を高めるための啓発をしています。
舟生さんは防犯セミナーや書籍監修を通して対策を発信しており、2024年3月には、1年生でも読めるようにすべてひらがなで構成した『子どもあんぜん絵本』を出版。「仕事猫」で人気のイラストレーターくまみねさんが描き下ろした1年生の双子「にぼし」と「かつお」と一緒に、身の回りの10の場面それぞれの危険について考えていく内容になっています。
『子どもあんぜん絵本』(ポプラ社)
画像提供:ポプラ社
例えば、「道を歩くときはどんなことに気をつける?」。
道路の反対側に友達を見つけたときに「急に飛び出さない」「横断歩道を渡る」といった一般的な交通ルールをイラストで紹介しています。さらに、それぞれ地域の道路事情をふまえた「おうちルール」を保護者と一緒に確認できるシートがついています。
出典:『子どもあんぜん絵本』 画像提供:ポプラ社