今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
虚実の妙
今週のかに座は、木と木のあいだにあるものを見つめることで、森を知っていこうとするような星回り。
医者が病名を決めないと安心できないのと一緒で、私たち近代人というのは、疑わしい人間が二人いれば、どうしてもどちらかがクロでどちらかがシロだと決めないと安心できないようにできています。
実際には、あれかこれか、クロかシロかはいつでもふとした拍子に返っていくものであり、見方によっては、寄せては返す波のように、「かわるがわる」起きていくものなんです。強いて真理がどこにあるかと問われれば、「かわる」と「がわる」の間にあるということになるのではないでしょうか。
あなたもまた、いったん落ち着いていた答えがひっくり返って、問いや謎が深まっていきやすいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
きれいはきたない、きたないはきれい
今週のしし座は、内なる野生の新鮮味をできるだけ殺すことなく周囲にもお届けしていくような星回り。
『あんずにあかんぼのくその匂ひけり』(室生犀星)という句のごとし。
ふつう、複雑なニュアンスを言葉で表現しようとすると、どうしても奇をてらった言葉遣いだったり、一風変わった比喩だとかに走りがちですが、掲句はむしろ平易すぎるくらい平易な物言いがなされています。
あなたもまた、自分の体験の特異性をできるだけありのままに表現していくことがテーマとなっていくでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
点と点とを結んでいく
今週のおとめ座は、1/fの心地よいゆらぎのリズムを刻んでいこうとするような星回り。
江戸時代の乞食僧で日本史上屈指の漢詩人・歌人であった良寛の歌には、「毛まりつきつつこの日暮らしつ」といったように「つつ」という言葉がひんぱんに登場してきます。これは二つの行為が並列にならんでいることとは全然違います。
良寛の「つつ」は、もっとこうAをしていてBをしているの、AとBとが少し互いに近寄りあっているというか、時間的な前後がありながら、空間的に同居していて、まさに手まりのようにずれあいつつ響き合っている、差分的リズムがそこにあって、それが微妙な震えとか、繊細なゆれのようなものをもたらしているんです。
あなたもまた、そんなふうに自分をいい感じに振るわせてくれるような「つつ」を、日々の中で探求してみるといいでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
探し物は何ですか
今週のてんびん座は、意識の底に沈んでいた原体験が再浮上していくるような星回り。
『短夜の明けゆく水の匂ひかな』(久保田万太郎)という句のごとし。
作者は隅田川のほとりの浅草に育った人でしたから、川の流れがしらじらと明けてゆくにしたがって、水の匂いがただよってくるというのが、ある種の原体験として記憶に深く刻み込まれていたのかも知れません。
あなたもまた、いつも気付かぬうちに受け流してしまっていることを、自覚的になぞっていくべし。