今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
虫・人間・苔
今週のかに座は、虫の生き死にと同等くらいに、人間の生き死について取り扱っていこうとするような星回り。
1971年に刊行された人生相談本『人間滅亡的人生案内』で、寄せられたさまざまなお悩みに回答している作家の深沢七郎は、ある意味で「薄情な回答者」の元祖といえる存在です。
彼は人間の手前勝手な相談にはあくまで無責任に、薄情に応じるだけであり、相談者の望む解決になんか話を向ける気はなく、だからこそ相談者も安心して相談してくるのです。
あなたもまた、深沢ほどまでとはいかずとも、人間の目論見になどあくまで無頓着を心がけていくべし。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
井戸のほとりで何を思う
今週のしし座は、自分が肩の上にのっている巨人のあらましを眺望していくような星回り。
『井の底に天文學は受け継がれ』(橋本輝久)という句のごとし。古代ギリシャの数学者・天文学者であったエラトステネスは、ある時シエネの地では夏至の日に太陽光が井戸の底まで届くことを知り、それがきっかけで地球の円周の長さを計算できることに気が付いたとされてます。
夏の井戸を前にして、作者はふとそんな故事を思い起こし、気が遠くなるほどの努力と手間をかけて引き継がれてきた知識の連鎖を、無言のうちに想起したのでしょう。
あなたもまた、普段何気なく使っている知識や情報が、長大なる努力の連鎖の上に依って立っているものなのだということに、改めて思い至っていくはず。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
罠から脱け出す獣
今週のおとめ座は、自分が手を伸ばしかけているモノの正体について看破していこうとするような星回り。
大都市というのは、経済の中心地であると同時に、快楽と幻想と記号の世界であり、経済を回すための欲望が無限に喚起され続けるよう出来ています。
そして、そうした街に身を置いていて、「まず狂うのは金銭感覚だ」と言い切っていたのは、18歳で九州から上京し、36歳で『東京を生きる』というエッセイ集を出したライターの雨宮まみさんでした。
あなたもまた、自分の知らない深い深い快楽へと手を伸ばしていくことの恐ろしさに、改めて思い至っていくことになりそうです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
非合理性をまとう
今週のてんびん座は、誰かに溺れつつも、その誰かに醒めていくような星回り。
『ゆるやかに着て人と逢ふ蛍の夜』(桂信子)という句のごとし。6月も中旬を過ぎると各地で蛍が見られるようになりますが、掲句もまた普通に考えれば、どこか蛍の出やすい水に近い場所へと約束して出かけていったのでしょう。
掲句はそこはかとなく官能的な空気感は漂っているけれど、官能に溺れていないというところに特徴があるのだと言えます。
あなたもまた、誰か何かとの関わりの中に軽くたゆたっていくくらいのつもりで過ごしてみるといいでしょう。