初めての妊娠・出産・育児に迷ったときに、折に触れて読み返したいあの一冊。編集部きっての読書好きVERYライターが選んだ、母として、親として揺らいだときに、そっと背中を押してくれた“お守り本”ともいえる小説・エッセイ&育児本を紹介します。
親友の妊娠時にも贈ったお守り本
きみは赤ちゃん
川上未映子 著(文春文庫) 792円
初めてでまったく知識がない妊娠・出産がどう進んでいくのか、友人の体験談をつぶさに聞いているかのように読み進められるエッセイ。妊活を始めると決めたとき、なかなか結果の出なかった不妊治療中、初めて心拍確認ができたとき、そして産休に入りいよいよ出産間近というとき……。作家・川上未映子さんの軽妙な語り口が心地よく、私自身も折に触れて何度も読み返した“お守り本”です。「親友のお腹に新しい命が宿った」と聞いたときにもプレゼントしたほどお気に入りです。
<内容紹介>
35 歳で初めての出産。それは試練の連続だった! つわり、マタニティブルー、分娩の壮絶な苦しみ、産後クライシス、仕事と育児の両立……。出産という大事業で誰もが直面することを、芥川賞作家の観察眼で克明に描き、多くの共感と感動を呼んだ異色エッセイ。号泣して、爆笑して、命の愛おしさを感じる一冊。
「丁寧にオシャレに生きなくても大丈夫」と思えた
新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく
大平一枝 著(大和書房) 1,650円
出産後、初めての育児でもはや酸欠状態のときに手に取り、「ていねいに、まめまめしく、丹念に暮らさなければならない空気に満ちた今の世の中は毎日てんてこまいの母たちには、少々窮屈だ」という一文に心底共感。長女3歳、長男7歳から始まり、子どもと共に「お母さん」も育っていく日々がまとめられたエッセイは、自分の子供の年齢に応じて読み返したく、本棚の永久スタメンです。
<内容紹介>
市井の人々の“生活”を描き続けてきたエッセイストが、自身の17年間の育児をまとめた一冊。母業は未経験だから、うまくいかなくてあたりまえ。ジェットコースターのような毎日、がんばりすぎる現代のお母さんたちのために、読んで肩の力が抜けラクになるような子育てエッセイ集。「あまりがんばりすぎず、正しいお母さんを目指しすぎないでいい」と背中を押してくれるエール本。
“だめ妊婦”でもいいじゃない!と勇気がわく1冊
予定日はジミー・ペイジ
角田光代 著(新潮文庫) 693円
妊娠したら無条件に嬉しいもの、そう思っていたけれど、未知の経験に戸惑いはあるし、夫との考えかたのギャップに悩んだことも。食べたいものも食べられない、なるべく運動したいけれど妊娠中はヒヤヒヤする……。不自由さを感じてしまうこともある妊婦生活に戸惑っていたときに手に取った一冊です。ついつい夫につっかかってしまったり、揺れ動く主人公の姿がリアルで、妊娠期の不安定な心に寄り添ってくれました。“だめ妊婦”かもしれないと思いながらも、出産に挑む主人公の姿にラストは涙がぽろぽろ…。
<内容紹介>
流れ星を見つけたとき、あ、できたかもと思った。初めての妊娠。でも、「私、うれしくないかもしれない」。お腹の生命も大事だけど、生活って簡単に変えられないよ。ひとり驚喜する夫“さんちゃん”を尻目に、頼りなくも愛おしい妊婦マキの奮闘が始まる。目指すは、天才ロック・ギタリストの誕生日と同じ出産予定日! 笑えて、泣けるマタニティ小説。
“親になる”ことを見つめるきっかけに
産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ
池田麻里奈・池田紀行 著(KADOKAWA) 1,540円
不妊治療を続けていたころ、「そもそもどうして私は子どもを欲しいのだっけ……?」と考え始めた時期に、まだ見ぬ我が子を思いながら読みました。「子どもを育てる」とは?「親になる」とは? わかっているようでわかっていなかったことに気づかされ、深く考えさせられた一冊。
<内容紹介>
10年以上もの不妊治療、2度の流産、死産。それでも育てることをあきらめなかった夫婦が、「特別養子縁組」を決意するまでの葛藤と、ドタバタだけれど幸せな子育てを、夫婦それぞれの視点から綴ったエッセイ。