今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
家は宇宙の外科手術だ
今週のかに座は、自分なりの別世界を築き上げ、周囲に幻覚を引き起こしていこうとするような星回り。
現代イタリアの哲学者エマヌエーレ・コッチャは『家の哲学 家空間と幸福』で、「わたしたちは書くことを欲するのと同じ理由で、住むことを、家を欲する。」と書いている。
どんなにささやかな棲み処であれ、手つかずの自然の住みつくことはできない私たちは、この世界に住むことで世界の在り様やその構造を不可逆的に変化させ、(家と環境をはじめとした)現実におけるあらゆる連続性を破っていこうとしているのだと。
あなたもまた、家や住まうことへの発想の転換と実践が少なからずテーマになっていきそうです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
消え入りそうで消えない私
今週のしし座は、ゆらめきそよぎつづける何かとして、みずからを解放していこうとするような星回り。
『千年やそよぐ美貌の夏帽子』(摂津幸彦)という句のごとし。作者はある句集のあとがきで、自身の底流をつらぬく「私」探求の試みについて、次のように述べています。
「何故に書くかという問に対する答の一部に、どうやら、私は私らしいものでありたいとする希望が含まれるらしい。しかし、何故に、私が私であってはならないのかと反問するや、再び何故に書くのかという問が重たく私にのしかかってくる。私がまさに私である時、一体、私は何を何故に書こうとするのだろうか。」(『與野情話』)
あなたもまた、確固とした「私」なんて消えてしまうくらい徹底的に、もんで、ほぐして、消え入ってしまうといいでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
不意に別人になっていく
今週のおとめ座は、霊的・感情的乾燥の危険から脱するべく、自己の新しい在り方を純粋に熱望していくような星回り。
日本語の「変わる」という言葉をヘブライ語では「ヒトハレフ=入れ替わる」といい、頭のHTは再帰動詞を示す接頭語で、語幹のHLCh(ハラフ)は「過ぎ去る」という動詞。聖書には、関連語のHFCh(ハファフ=ひっくり返す、逆の状態にする)という言葉が多く使われています。
人生においても、ひっくり返しや入れ替わりが起きることがあり、何かが自分に決定的な変化をもたらすとき、人はそれを運命の介在と見ることが少なくありません。
あなたもまた、どこかでそうした「ひっくり返し」や「入れ替わり」が促されていきやすいでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
草生える
今週のてんびん座は、タイムラインの片隅をみずみずしいみどりいろで覆っていこうとするような星回り。
『平凡な言葉かがやくはこべかな』(小川軽舟)という句のごとし。
成功か死か。そのあまりに男性的で、一直線な生き様とは対照的に、「はこべ」のような草は春が来て芽吹き、枯れてはまた再生するといった、四季を繰り返す永遠の循環のなかで、私たちに束の間の夢を見させてくれる。
あなたもまた、人とかかわるたびに勝ちだ負けだと鼻息を荒くする代わりに、しずかに草でも生やしていくといいだろう。