工芸品のような風合いに
「ARAS 大皿ウェーブ」は、プレートの表面に波を打ったような凹凸があるのが特徴です。複数の料理を盛り合わせてもソースなどの水分が流れにくい機能性に加え、工芸品のような自然な風合いを醸し出します。
seccaが手彫りで波状の凹凸に加工した石膏の原型を3Dスキャンし、デジタルデータに取り込んで工芸品のような揺らぎのある形状を生み出し、射出成形という製法で大量生産できる仕組みをつくりました。
射出成形の工程などにロボットを導入し、5年間で生産性を2倍にした工場改革の記事はこちら
Seigo Ito
こうした揺らぎや「色ムラ」は不良品とされることが一般的ですが、ARASはそれを逆手に取り、むしろ意図的に筋状の色ムラを発生させています。
「そういった質感であれば傷が目立ちにくいため、永く愛してもらうための施策でもありました」(上町さん)
樹脂が悪者ではない
「プラスチックなのに」ではなく「プラスチックだからこそ」、工芸的な価値を取り入れることに成功し、ARASは誕生しました。2年間という長い開発期間に拠りどころになったのは、77年にわたって樹脂と向き合ってきた石川樹脂の知見と素材への愛着でした。
原料の樹脂ペレット。色や素材を混ぜ、溶かして成形することでさまざまな製品になる
Seigo Ito
「樹脂の歴史はまだ100年ほどで、この先も進化の可能性があります。プラスチックは使い方次第では長く使え、リサイクルも容易な素材です。ものづくりによって起きた問題を少しでも解決する製品開発ができればと思っています」(石川さん)
「プラスチックゴミが社会問題になったのは事実ですが、樹脂への偏見を生んだ面もあります。問題は素材ではなく、人間の振る舞いのほうだともいえるのではないでしょうか」(上町さん)
※ARASの売上拡大を支えた石川樹脂の工場改革に迫った記事はこちら。
特集:時を超えた価値
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