(写真はイメージです)
Adobe Stock / UTS
中野 私たちが小学生だった頃は名簿が男女別で、集団行動は「男子が先、女子が後」だったり、男子は「くん」付け、女子は「さん」付けで呼ばれたりしていましたよね。最近は、男女混合名簿で全員を「さん」付けにするなど、「隠れたカリキュラム」(教育する側が意図しているかどうかに関わらず、児童が自ら学び取っていく事柄)を可視化する動きが進み、以前よりはジェンダーフリーになっていると感じます。
ただ、大人との関わりについては課題がありますよね。教員個人のジェンダーバイアスがこどもに伝わることに介入する方法がありません。
中野 著書でも触れたのですが、約50年前に米アイオワ州の小学校でおこなわれた「青い目、茶色い目」という有名な実験をおさめた動画があります。
白人女性である担任の先生が、児童に「今日は青い目のほうが優れていることにしよう」と言い、黒人やアジア人を差別する言動をすると、児童があっという間に適応して同級生を差別し始めるという衝撃的な実験です。翌日、先生が今度は「昨日、先生は間違っていました。本当は青い目のほうが劣っている」と言うと、児童の立場が逆転します。「劣っている」とされたほうは、意欲や成績が下がる様子も観察されました。
こどもは大人の言動に敏感に反応し、親が期待することや教員が示したことを内面化して、それに沿った行動をしがちです。就学前後や小学校の低学年あたりで、近くにいる大人、特に「この人の言うことは基本的に正しいと思っている人」からバイアスのかかったことを言われると、影響を受けやすいのだろうと想像します。
森口 その時期は、学校以外でも大人との関わりが増えますしね。特に習いごとは、指導者から偏ったジェンダー意識を与えられやすい場のような気がしています。ピアノであれバレエであれサッカーであれ、能力と性差を混同して指導されているケースがあります。
中野 指導している大人は無自覚ですもんね。「男なら泣くな!」といった、危うさを感じる発言を耳にしたことが何度もあります。
習いごとや塾は民間の企業や団体であり、指導者の資格や研修もあったりなかったりするため、価値観のアップデートがしづらい構造です。
森口 無自覚なだけに、気づきのチャンスがないことは大きな問題だと感じますね。
【後編】娘が全身ピンクを選ぶとなぜモヤモヤするのか。こどもの「好き」を邪魔しない声かけとは