自分のためにやる
だからこそ、人生を終えようとしている人のところに行く人たちは、心身が最善の状態でいなければなりません。
よく「人のために役に立ちたい」と献身や貢献を掲げて医療職やケアの仕事を目指す人がいますが、私は「ここでは自分のためにやるんだよ」と伝えています。
写真提供:ほっちのロッヂ
悲しみや後悔と切り離せないタフな現場です。しかも、一方的なケアではなく、関係し合う営みです。お互いに人間ですから行動や言葉を間違えることだってあります。その瞬間に最善だと考えたクリエイティブ性を発揮したとしても、その判断が正しいかはわかりませんし、いつだって正解なんて見つからないものです。
たくさんの時間やエネルギーを、取り戻せないその1秒に全力で注ぎ、目の前の相手の「生」をつぶさにとらえていく仲間のために、私には何ができるのか。マネジメントの枠を超えて、エンパワメントを担っていきたいと思っています。そんな私も、ほっちのロッヂを訪れる人たちに日々、助けられているのです。
ほっちのロッヂのスタッフの「こんな場所にしたい」という言葉をもとに、病児保育室は「親も子も、自分の回復力を信じて過ごせる場所」と呼んでいる
Akiko Kobayashi / OTEMOTO
「ほっちのロッヂ」は、誰もが好きなことをするために集まる場所です。料理をしたり、薪割りをしたり、絵を描いたり、音楽を演奏したり。その好きなことで、誰かが誰かを豊かにできるはずです。
大切な人を看取った人も、病気や障害がある人も、学校に行きたくないこどもも、医師や看護師たちも、年齢や立場に関係なく、人と人との間から今日も何かが生まれていく。それが「ほっちのロッヂ」がある意義だと思っています。
写真提供:ほっちのロッヂ
【前編】病気の人はただ弱い存在ではない。軽井沢の森の中に「人と人とが補い合う場所」ができるまで
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