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丘陵地帯の家坂のある街に建つ地に足の着いた住まい

丘陵地帯に建つ家は、斜面に沿った設計。外の景色や小さな庭とつながる家で、自分たちに合う暮らしをつくる。

場所は都心の喧騒から離れた、坂のある静かな街。写真家の松村隆史さんと絵本作家の真依子さん、そして二人のお子さんの4人家族が暮らす家を訪ねた。

松村隆史
真依子

以前は古いマンションに住んでいたが、子供が小学校にあがるタイミングを目標に家探しを始めた。「1年半ぐらいは場所にもこだわらず、いろいろなところを見に行って探しました。でもなかなかいい物件もないし、ここだ!と思ったところがタイミング悪く買えなかったり。この家は住宅情報サイトで見つけました。冴えない写真が掲載されていたのですが、間取りが気になったから見に来て見たらすごく気に入って絶対ここだ!と」。築年数はおよそ35年ほどと古すぎず、住み始めるには現実的だった。さらに、設計者が吉村順三の所員だったことも判明した。

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目の前には緑地に植えられたもみの木や桜の木が借景に。

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キッチンはPacific furniture serviceに設計してもらった。木目もこの家に合うものを。

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レンジの向かいには実用的にも装飾にも使える穴あきボードで壁を。

「普通は斜面の土地を平らにして建てると思うんですが、土地の形に合わせて設計されているところが良かったです」と話す隆史さん。丘陵地帯に建つこの家は、その地形を活かした三層構造で設計されているので、まさに地に足が着いているというような安心感が漂う。一層目の小さな仕事部屋脇を通って階段を上がったところが二層目で玄関ポーチがある。中に入ると正面の水周りスペースを挟んでLDK側と寝室側に分かれる。LDKは正面に大きな開口がスクリーンのように設けられ、外の景色を切り取っている。さらに三層目の2階の部屋の広さもそこそこに吹き抜けで天井高をとっているので、自然の明るさと実際の面積以上の開放感を感じられる。
入居するにあたり、大きくはキッチンをつくり変えた。「前に住まわれていた方用にとても低いキッチンだったので思い切ってつくりました。壁の白いタイルも普通のなんでもない壁にしたくて、貼り方もなんでもない感じを模索して」。つくり付けのダイニングテーブルも、設計されていたかのような馴染み具合。真依子さんは使い勝手がとてもいいという。

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壁面のユニットシェルフはドイツのインダストリアルデザイナー、ディーター・ラムスが1960年にデザインした「ヴィツゥ」のもの。

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子ども机は松村さんお手製。友人でもあるMOBLEY WORKSでつくらせてもらったという。

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LDKに真依子さんの絵を描くためのスペースがある。こちら側にも大きな開口があり気持ちがいい。

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真依子さんがつくった絵本たち。

外観からは見えないが、庭はもちろん植栽スペースがところどころにあり住まいに潤いを添えている。寝室は低い位置に配されたL字方の開口が庭木の景色を切り取り、しっとりと落ち着く空間になっている。開口の位置が低いので、隣家との距離が近くても視線が気にならず、地面に近い高さで過ごせる。
鉢植えも枯らすようなタイプだった、と話す真依子さん。「広くないとはいえ、庭の手入れはすごく大変です。こまめにやらないとあっという間にジャングルになっちゃう。洗濯物干したついでにここだけ、という感じでちょこちょこ草むしりしています。でも無心になれるから気持ちがいいですよ」。
「ここは川も近いし環境はいいですね。たぬきが出たりもするし、ふくろうもたまにいるんですよ」と話す隆史さんは、庭に小さな畑コーナーをつくり、ミニトマトや紫蘇、パクチーなど、摘んですぐ食卓に添えられるものをつくり始めたそうだ。この家で少しずつ、自分たちの暮らしをつくりはじめている。

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寝室の壁のシックな色合いとイサム・ノグチの和紙の照明がマッチしている。

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玄関建具は腐食していたので、元の扉に忠実に作り直してもらい、下部には補強も兼ねてコッパーを廻した。

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エントランスまでのアプローチ脇にも植栽スペースがある。右手には仕事部屋がある。

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すっきりと無駄がなく、さりげない佇まいの外観。

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