相手のことを配慮した「返信不要」と添えたメール。実はこれが失礼な理由とは? また、これを受け取った場合、本当に返信はいらないのでしょうか。敬語講師で、All About「手紙の書き方ガイド」を務める井上明美さんが言葉のマナーを解説します。
メールや手紙などの文章で「返信不要」という言葉を目にすることがあります。
この「返信不要」という表現、時に気になるという人もいるようですが、ビジネスシーンで使ってもいいのでしょうか。
今回は、相手に「返信不要」という旨を送る場合、また相手からそれを受け取った場合の2パターンについて、好ましいマナーを考えていきましょう。
「返信不要」とは?
まずは、この言葉の意味を考えてみましょう。
「返信」とは、文字通り手紙やメールを送ることを指しますね。一方「不要」とは、こちらも文字通り、必要ないこと、いらないことの意です。
ですから、相手に返信がいらないことを伝える言葉の意味としては問題ないことが分かります。
では、なぜ、使っていいのか迷ったり、気になったりということが起こるのでしょうか。
相手に「返信不要」というのは失礼?
前述の通り、言葉の意味としては間違いというわけではありません。また、それを送ったとしても必ずしもそうしなければいけないという決まりがあるわけでもありませんから、間違い、マナー違反というものでもありません。
やや事務的できつい響きの「返信不要」
しかし、言葉の響きとしては、特に目上の方宛や改まった場面では、言い換えが好ましいという印象を受けます。
「切手不要」とか「〇〇在中」のような内容を表す表示ならばわかりますが、「返信不要」という表現は、事務的であったり言葉としてもややきつい感じを受けたりと、響きがやや強いのです。
目上の人にはより敬意をこめた表現を
また「返信」や「不要」という語にも敬意は含まれません。そのような点から、目上の人宛や、やや改まった場面では、言い換えるほうが言葉も柔らかく敬意も強まるといえます。
敬意と柔らかさを含んだ「返信不要」の敬語表現
「返信不要」という語を使うならば、以下のような言い回しにするとていねいで柔らかく、相手への敬意を感じさせる表現になります。
・「返信不要でございますので、どうぞご心配なく」
また「返信」を言い換えて
・「ご確認いただけましたら、返信には及びませんのでどうぞご心配なく」
・「ご返信いただかなくても差し支えありませんので、どうぞご心配なく」
・「先日の○○の件で、お知らせまでに……。どうぞご返事のご心配なく」
・「このたびはありがとうございました。ひと言御礼を申し上げたくてメールいたしました。どうぞご返事のご心配なさいませんように……」
・「ありがとうございました。どうぞご返事等のお気遣いなく」
など。「返事、返信に及ばない」の「及ばない」とは、する必要がない、しなくいてもよいという意味ですが、不要やいりませんよりも婉曲的な感がありますね。
「差支えない」とは、何かをする際に都合の悪いようなことがない、さまたげや支障がない、問題ないという意味です。 相手側に対して尋ねるような場面でも、もしよろしければの意で「お差支えなければ、お教えいただけますでしょうか」などのように用いられる表現です。
このように、言葉の正誤だけでなく、言葉の響きや全体の調和、柔らかさといったものも心配りのひとつといえますね。