「あの人、どうも苦手」と思うことって、多かれ少なかれ誰しも経験したことがあるはず。メンタルコーチの中島輝さんによると、その感情は自己肯定感と関係性があるとのこと。そこで、中島さんに、苦手な人との人間関係も良好になる、自己肯定感の高め方を教わります。
「エクスプレッシブ・ライティング」とは、1980年代に生まれた心理療法の一つで、自分が感じている負の感情やストレスに思っていることをひたすら紙に書き出していくだけの方法です。
ルールは、自分の思いのたけを正直につづること。誰かに対して「上司の〇〇、裏切りやがって!」「責任を押し付けるな!」とつづったり、自分自身に対するもどかしい思い「自分が情けない」「こんなはずじゃなかったのに」なども書き出します。
とにかく書き出すことで、今、自分が抱えているネガティブな感情をしっかりと認識することができます。自分の感情を客観視できると、感情をコントロールできるようになるため、自分の「自己受容感」も高まり、「自己肯定感」が勝手に高くなるのです。
また、イライラとモヤモヤが頭の中から取り除かれます。ある実験でも、うつや人間関係が改善した例もあります。
この「エクスプレッシブ・ライティング」を行うと、自然とネガティブな感情から解き放たれ、やがてポジティブなほうへ目が向くようになります。そこから“いいこと”を探していきます。
2.「イフゼンプランニング」
「イフゼンプランニング」とは、簡単に言えば、いざというときのために自己肯定感を高める仕掛けを書いて用意しておくことです。
「(if)もし〇〇〇が起きたら、(then)行動△△△をする」と前もって決めておくことで、行動を促します。
例えば「もし相手のことが苦手で話しかけづらいと思ったら、~~~~~~と考える」とノートに書いておくと、行動を促してくれます。そして状況を客観視し、継続的に行動できる自分へと変わっていくことができます。
すると、自分の欲求とは関係なく、自動的に行動を起こすことができるようになるため、そこで得られる小さな成功体験が自尊感情、自己受容感を回復させ、自己肯定感も高まっていきます。
自己肯定感を高め自分を大切にする技術
1. 人間関係には「2:8」の法則があると認識する
苦手な人は、世の中に80%いると思って付き合いましょう。あなたにとって気の合う人、あなたが大好きな人は残りのわずか20%程度です。これが「2:8」の法則です。それを認識したうえで、苦手な人が自分にとってポジティブとなる要素に目を向け、自分を大切にしましょう。例えば、「この人は~~~といういいところがあるから、自分にプラスの影響がある」などと思うとよいでしょう。
2. 自分を大切に扱い、好きと思える自分を育て、自分をほめる
例えば、ひとりごはんのときだからこそ、自分のために時間をかけて、 野菜たっぷりの料理を作る、自分で自分にごほうびをあげるなどして、世界で一番大切な人として、自分を扱います。
そして日々を丁寧に過ごし、「好きと思える自分」を育てましょう。 例えば、誰も見ていないところでゴミを拾う、公共のトイレに入ったとき、少しだけきれいに掃除するなど。
そうしたあなたの小さな努力、小さな変化を探していきましょう。 「昨日の自分」から少しでも変化したこと、うまくできたことがあれば、 しっかり認めて、「自分は素晴らしい」とたくさん感じてください。 ほめてあげてください。失敗しても、まるごと受け入れて許し、そんな自分自身と一緒に進んでいきましょう。
3. 人の心に幸せを運ぶ
嬉しいと思ったら、心で思うだけでなく、「ありがとう」と言葉にして相手に感謝を伝える、笑顔で挨拶をする、「大丈夫?」「お疲れさま」「素敵ですね」といういたわりの言葉をかけるなど、一緒にいる相手が心地よくなるようなことをしてみましょう。
幸せの数やあなたの自信は、あなたが自分に「ありがとう」と言った数、 「よくやった」と思った数、それに比例していくのです。 あなたの価値や素晴らしさを誰かにわかってもらおうとせず、 あなたがしっかり認めてあげること。それが「自己肯定感」を高めるのに大切です。
苦手な人がいるなど、人間関係に悩んでいるなら、あなたの「自己肯定感」が低くなっているかもしれません。まずは自分を振り返り、もし低くなっていると感じたら、「書き出す方法」と「自分を大切にすること」を実践してみてはいかがでしょうか。
Profile
中島輝さん 「自己肯定感カウンセラー講座」などを開催し、自己肯定感を広く伝えるメンタルコーチ。トリエ代表。30年間の自らの体験で習得した技法を用いたセラピー・カウンセリングとコーチングを実践し続ける。
©Joerg Steffens/Gettyimages
©martin-dm/Gettyimages
©Dougal Waters/Gettyimages
©Westend61/Gettyimages