今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
石ころころころ
今週のかに座は、「雄弁と沈黙のはざまで物思う石のごとく、ただそこに在ろうとするような星回り」。
占星術では人間の中に星を読みますが、時に「石」が読み取れる時があります。ロジェ・カイヨワが生前最後に残した『アルペイオスの流れ』では石に関してつづられており、「絶対的な啞者である石は私には、書物を蔑視し、時間を超えるひとつの伝言を差し出しているように思われるのだった」とのこと。
人はときどき自身の中に密やかな言葉という名前の驚くべき沈黙を見出し、その前にひれ伏すのでも、踏みつけるのでもなく、ただそばに在っておのずから語り始めるのを待たなければいけない状況に直面するのです。
今週のあなたもまた、すぐに意味が分からない出来事や相手に対して慎重かつ粘り強く関わってみましょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
自然な呼吸を楽しむ
今週のしし座は、「生活に自分なりのリズムをたおやかに刻んでいくような星回り」。
それはまるで、「うき草や今朝はあちらの岸に咲(さく)」(中川乙由)という句のよう。まだ涼やかな夏の朝、水面でゆらゆらとうごめく水かげろうのように浮き草が次々に咲いているさまに、だんだんと作者の心は引き込まれつつあるのかもしれません。
同じリズムを刻むのでも、人間がやれば最初はどうしてもぎこちなくなるものですが、それはどこか瞑想することと行動することを対立させざるを得ない、心の在り方とも通じているように思います。
今週のあなたもまた、人間や“動物”という種に自分を重ね過ぎるのではなく、実際に「うき草」になったつもりで日々を過ごしてみては。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
人間嫌いをほぐす
今週のおとめ座は、「たましいの充電を行動力に転換していくような星回り」。
トーマス・マンの小説『選ばれし人』のグレゴリウスはみずからの罪(明らかに彼の責任ではない)をあがなうため、湖の真ん中にある島で暮らすことを決意。しかし食べ物が十分に取れなかったために、ハリネズミほどの大きさに縮んでしまいます。
ローマ教皇が亡くなり、ふたりの老人が啓示により小さくて剛毛の生えたグレゴリウスを陸へと連れ出す運びとなったのですが、ここで奇蹟が起きます。グレゴリウスが「汝を許す」という言葉を自分自身に向けて唱えると、陸にあがるやいなやもとの人間の姿となり、史上最も素晴らしい教皇となったと言うのです。
今週のあなたもまた、自分自身を許し、愛する勇気を持つという大きなテーマに直面していくことになるでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
闇をとぼとぼ
今週のてんびん座は、「ひとつの決断。その重みを感じていくような星回り」。
「夏雲むるるこの峡中に死ぬるかな」(飯田蛇笏)という句は、当時24歳の作者が、学業の中断余儀なくして帰郷した甲府の山中で詠んだもの。
視線は「夏雲」という高きところにありつつも、実際に自分が身を置いていかねばらないのは低き「峡中」であり、死ぬまでのその落差に引き裂かれながら自分は生きるのだという覚悟のほどが既に伺われます。
この天と地、時代と生まれのあいだに引き裂かれながらもそれを引き受け、重心を出来る限り低めていきつつ、何らかの決断を下していくというのは、今年のてんびん座の大テーマとも通じていくでしょう。これから歩んでいく道を確かなものにしていくためにも、今どんな決断が求められているのか改めて意識していくべし。