2.「夫婦の呼び方、呼ばれ方」の未来とは?
VERYモデル 牧野紗弥さんの場合
「私は“主人”をやめました。
でも、相手の配偶者の呼び方にはまだ悩んでいます。
まずは家庭の中から言葉を見直していきたい」
「これまで特に深く考えることもなく『主人』という呼び方を使っていました(親しい人の間では『あだ名』を使っていましたが)。今は『夫』に変わりました。
呼び方を変えたのは昨年のVERYのジェンダーに関する特集企画がきっかけでした。上野千鶴子さんのインタビューを読んで、これまで私が感じていたモヤモヤは私や夫の個人の問題ではなく社会の仕組みの問題であると学びました。不満を持つのは私がわがままだから、私の我慢が足りないから、私が至らないからではない。そして、夫の理解のなさも彼ばかりのせいではない。この気づきは私にとってターニングポイントになり、以来、『育児・家事は女の仕事』などこれまでの思い込みを見直して、自分はどうしたいのかを考え始めました。
当たり前だと思っていた『主人』という呼び方をやめたのもその一つ。主従ではなく対等な関係でいたい、という考えから今はどんなシーンでも『夫』を使っています」
夫婦は対等! 家庭の中の言葉から心がけたい
「ただ、相手の配偶者の呼び方となると難しいですよね。私も相手の配偶者に関しては今も『ご主人』を使うことが多いです。大人同士であれば本音と建前を使い分けることもできるし、重要なのは夫婦2人の意識なので時代に合わせるのも間違いではないと思います。
今後は『パートナーの方』や『配偶者の方』など男女対等な呼び方が一般的になっていくかもしれない。そうであって欲しいと思いつつ取り巻く環境や社会の常識を今すぐに変えるのは難しいので、まずは家庭から。ママたちが感じたモヤモヤを“そういうものだから”と見過ごさずに夫婦で冷静に話し合っていく一歩一歩が大事だと思っています」
3.「夫婦の呼び方、呼ばれ方」の未来とは?
社会学者 田中俊之先生の場合
「未だ変わらない相手の配偶者の新しい呼び方はVERY世代がこれから作っていくのかもしれません」
「夫婦の呼称という問題は実は歴史が深く、なんと1975年には「行動をおこす会」が夫婦は対等であるという視点から『主人』を『夫、つれあい、配偶者』、『ご主人』を『ご夫君』と呼び方を変えるようにNHKに提案。さらにその20年前の1955年の日本母親大会でもすでに『主人と呼ばず夫と呼ぼう』という提案がされていました。今はジェンダーも問題に敏感な世代を中心にお互いの呼称には対等な『妻』『夫』を使う人が増えてきているようですね。一方で、他人の配偶者の呼び方はアンケート結果を見ても変化しているとは言いがたい状況です。
90年代頃から夫婦は対等であるという目線に立って他人の配偶者を『妻さん』『夫さん』と呼ぶ提案もありましたが、なかなか定着しないのは少々語呂が悪いからかもしれません(笑)。ニュートラルな関係を表すなら『パートナー』は既婚未婚を問わないので事実婚などの夫婦の形態・相手の性別も問わない便利さがあります。でも、やはり定着していないのは一歩前を行っている感がまだ少し鼻につくからかもしれません。いずれも従来の呼び方に替わって広まっているとは言いがたい、改まった場で相手の配偶者を呼ぶ場合はとくに失礼がないように無難さから『ご主人』『奥さん』が選ばれがちなのでしょう。
ジェンダーの問題に限らず社会を変えようとするには長い時間を要します。『たかが呼び方に目くじらを立てなくても』という圧力はあっても当人が即座に得られる利益はないので、現状の秩序に合わせて生きていこうという方向に落ち着いてしまう。でも、次世代に目を向ければ、今、変えていく必要性が出てくるのでは。『子どものため』と思えば、違和感を放置せずに言葉に対するこだわりを持とうと思えるかもしれません。
使いやすいものがないのであればVERYが提案してしまってもいいのではないでしょうか(笑)。必要は発明の母ですから、今、VERY世代が対等なパートナーを示す言葉を求めるところから始まるはずです」
男女問題とも密接な関係がある夫婦の呼称についての議論は歴史があり、最近始まったものではないことを教えてくれた田中先生。
時間をかけて広まってきた『夫』『妻』のように、今後は相手の配偶者の呼び方についても議論を重ねることで変わっていくのかもしれませんね。
10月2日に配信されるVERY Academy第2弾ではお2人も登場し、夫婦の呼称だけでなく家庭内の思い込みについてさらにじっくり話していきます!
■■VERY Academy第2弾10月2日21:00~VERY公式Twitterで配信!■■
「映画『82年生まれ、キム・ジヨン』から考える、夫婦の呼び方、呼ばれ方 〜家庭内の思い込みから自由になるヒント〜」
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韓国で130万部を超えるベストセラーを記録し、日本でも大ヒットした話題作が映画化。1人の女性の人生を通し社会に根付く女性差別を描き、過去にVERY内で取り上げた企画も読者から大反響が。劇中では日常に埋め込まれた家族や夫婦、社会での男女の性差が問題提起されています。この作品をきっかけに夫婦の呼び方など、違和感を覚えつつ見過ごしていたり、無自覚に順応している男女問題について改めて考えてみませんか。