ビジネスにおいて、上司や目上の人に何かを教えてほしい時、「教えてください」という言葉を使っても良いのかどうか悩んだことはありませんか? 敬語講師の井上明美さんに、「教えてください」の正しい使い方について教えてもらいました。
人に何かを尋ねたい時や、教えてもらいたい場合に使える「教えてください」という言葉。ビジネスにおいて、上司や目上の人などに対しても使えるのかでしょうか?
「教えてください」について改めて詳しく考えてみましょう。
「教えてください」はそもそも敬語?
上司や目上の人に何か仕事を教えてほしい時に「教えてください」という言葉を使っていいかどうかということですが、そもそも「教えてください」という表現は敬語なのでしょうか。
まず、「ください」から考えてみましょう。
ください
《動詞「くださる」の命令形》
1. 「くれ」の尊敬語。相手に物や何かを請求する意を表す。ちょうだいしたい。「手紙を下さい」「しばらく時間を下さい」
2 .(補助動詞)「お」を伴った動詞の連用形、「ご(御)」を伴った漢語、また、動詞の連用形に接続助詞「て」を添えたものなどに付いて、相手に何かを要望・懇願する意を表す。「お座り下さい」「ご覧下さい」「止めて下さい」
[補説]「くださる」の本来の命令形「くだされ」の音変化とも、「くださいませ」の略ともいう。
(「デジタル大辞泉」小学館)
このように「ください」の部分については敬語ですので、「教えてください」は相手への敬意が含まれた敬語表現といって良いでしょう。
「教えてください」は目上の人にも使える
「教えてください」は「ください」の部分は敬語ですし、言葉としても正しい表現ですから目上の人にも使うことはできます。
しかし、先に述べたように「ください」の部分しか敬語になっていませんから、受け取る相手によっては「丁寧さに欠けている」と捉えかねません。
そのため、目上の人に対しての言葉遣いとしては「お教えいただけますか」など謙譲語での表現に言い換えたり、次で紹介する表現を用いたりすると、より丁寧に伝わるでしょう。
「教えてください」をより丁寧に言い換える敬語表現
「教えてください」には他にも次のような敬語に言い換えることができます。
・ご教示いただけますか
・お教え願います
・お教えいただけますか
・お教えください
・ご指導いただけますか
「教えてください」よりも、「お・ご」が付いた「お・ご~いただく/ください/願う」型の「お教えいただけますか」や「ご教示いただけますか」「お教え願います」などの方が敬意は高くなります。
ですから、同じ目上の人でも、社外の取引先、お客様などの場合は、こちらの表現の方がより丁寧でふさわしいでしょう。
また、「ご指導いただけますか」などの「ご指導」「ご教示」の漢語の言葉は、文章言葉でも使われより改まった感が強まります。
より格式ある言い方でかなり改まり度は高くなりますが「ご教示賜りたくお願い申し上げます」などの表現もあります。
社内の先輩、親しい上司などの場合ならば、「教えてください」も使われるでしょうし、もう少し丁寧にしたい場合は「お教えいただけますか」「お教えください」「ご指導いただけますか」なども使われます。
ここでは上記の言い換え表現について、紹介していきます。
「ご教示いただけますか」
「お教え」というのは「教える」を和語で表したものですが、漢語で表したものが「ご教示」になります。
「教示(きょうじ)」とは、ものの知識や方法などを相手に教え示すことという意味です。
似た言葉に「教授」がありますが、「教授(する)」は、「教える」の中でもどちらかというと特に学問などを伝えるという意味をもって用いられる表現とされます。役職の「教授」もこれに当たりますね。
ですから、通常の何かを教える・教えてほしいなどの場合は多く「教示」が用いられます。