今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
なんだそれ?
今週のかに座は、これまで潜在的に抱いていた違和感を表出していくような星回り。
藤子・F・不二雄の「サンプルAとB」という短編作品では、ロミオとジュリエットの物語のような現実が展開される地球上の模様を、異星人が母星に調査報告したレポートのような文体で描いています。しかしその一方で「彼等の行動の意味は我われには理解しがたいものであった。上肢に持った金属片を相手の体の中に挿入するのが目的のようである」と、剣による決闘の場面について報告も。
こうした報告を読んでいると、なんだか笑ってしまうような、困惑するような、奇妙な気分になってくる人は少なくないのではないでしょうか。つまり、これは「異星人からの視点」の態で違和感が表出されている訳ですが、果たして、地球人同士でさえも、私たちはお互いの行為の意味について了解しあえているか。あるいは、言葉は通じていても話は通じていないという状況にごく日常的に接しているのではなかったか、と。
今週のあなたもまた、あえて異星人の視点を持ち込んで普段の日常や周囲で当たり前のように展開されている現実について、見つめ直してみるといいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
兆しを招きいれる
今週のしし座は、自分が受け取ったり、逆に手を離れて流れていくものに敏感になっていくような星回り。
昔から縁起物として親しまれてきた宝船の絵は、正月明けに枕の下に入れて寝ると良い初夢を見ることができると言われていますが、「宝船ひらひらさせてみたりけり」(西村麒麟)という句では、それをただ「ひらひらさせて」みているだけ。
本来なら俳句にもならないような些細な動作ではありますが、汗がにじむまで握りしめるのでもなく、厳重に保管して確実にそのご利益にあずかろうとするのでもなく、ひらひらさせてみるというのは、それはそれで縁起物への正しい関わり方であるという気もするのです。
これまで富やお金というのは目に見える形で蓄積され、それゆえに隠され、守られるべきものでもありましたが(だからこそ分断の形も分かりやすかった)、ほんらい縁起物というのは、宝船と同じで、どこからか流れてきては、またどこかへと流れていく漂流物であり、その質は基本的にはふだん誰と関わり、どんな情報に触れているかでまったく変わってしまうはず。あなたもまた、自分の身体や仕事道具の風通しを調えていくといいでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
一点突破
今週のおとめ座は、自分の思ったことを自分がしたいようにやって何が悪いと、啖呵を切っていくような星回り。
中野重治の「歌」という詩では「おまえは歌うな」と繰り返され「すべての風情を擯斥(ひんせき)せよ」などと述べられていますが、最後には「もっぱら正直のところを 腹の足しになるところを 胸さきを突きあげてくるぎりぎりのところを歌え」と締めくくられています。
この特に最後に訴えかけるところのものは、身の内の熱を最大限に高めてぶつけようとするという意味でしし座的ではありますが、いまのおとめ座にとってはこれくらいでちょうどいいのではないでしょうか。
13日におとめ座から数えて「命懸け」を意味する5番目のやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、相手を抉るのでなければ、自分を食い破るのでなければ「歌う」などという表現行為は成立しないのだということを、改めて痛感していくことになるはずです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
だんだん頭が消えていく
今週のてんびん座は、心の奥底に沈んだまま思いや衝動をすくい上げていこうとするような星回り。
「土器に星まつる火をともしけり」という句に詠まれている「星まつる」は“星の恋を祭る”ということで、牽牛と織姫の七夕伝説に由来するもの。1年に1度の逢瀬を、それしか遭えないと哀れとする見方もあれば、逆にそれをうらやむ人もいるのが地上の現実の姿でしょう。特に結婚生活わずか2年で夫を失い、夫なき後に生まれた子供を女で一つで育ててきた作者の場合は、それは単なる想像とは違う現実の重みが加わってきます。
掲句もまた、句としては気品と正しさが感じられますが、やはり同時に底知れない情念のようなものの気配がうごめいているのも無視できません。「ともしけり」という句の結びには、地上のそれとはまた勝手が異なる天上の恋の作法に則って、厳かに儀式次第を進めていこうとしているようなある種の凄味さえ感じられます。
13日にてんびん座から数えて「腹の底」を意味する4番目のやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、頭で考える以前ところで抱き続け燃やし続けている思いや衝動を少しでも昇華していくことが求められていくでしょう。