今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
金太郎飴のような私は本当に私なのか
今週のさそり座は、自分自身という“自然”の当たり前を捉えなおしていこうとするような星回り。
フランスの庭師ジル・クレマンが、自身の庭づくりやそこで大切にしている“生きた自然”という考え方について語った『動いている庭』という本には、「生はノスタルジーを寄せ付けない。そこには到来すべき過去などない」という一文が出てきます。
すなわち、様々な時間サイクルの中で醸成されている“生きた自然”というのは、時間の流れを直線的に捉えてしまいがちな人間の尺度には決しておさまらないのだということ。例えば、自然豊かな“田舎”に対して、都会に住んでいる人はどうしても“遅れている”、“古き良き昔がそのまま残っている”と感じがちですが、それは都市化することに価値を置く考え方を前提にしているのであって、生きた自然は多様な共生関係がつくりだす循環のなかでたえず再生され、刷新され続けている訳です。
その意味で今週のあなたもまた、どうしたら自分を硬直した直線としての時間意識から解放し、循環を取り戻していくことができるかが問われていくことになるでしょう。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
生命感覚の発露
今週のいて座は、いのちの本質としてのせめぎあいを追求していこうとするような星回り。
「牡蠣啜るするりと舌を嘗めにくる」は、殻を外したばかりの生牡蠣を食べようとして啜った人間の舌を、逆にするりとなめに来た牡蠣に対する純粋な驚きを詠んだ一句。ただし、ここで重きが置かれているのは、牡蠣の滑らかな舌触りや、食体験としての珍奇さだけでなく、自分が食べようとしているモノがまさに生き物の「いのち」であることを、作者は改めて再確認させられたということではないでしょうか。
上五の「啜る」から、中七の「するりと」「舌に」と、S音が続くのも、そうした他の生命を屠らんとする者と食べられまいとする生命の側とのせめぎあいを、じつになまなましく実感させるという点でじつに効果的です。
13日にいて座から数えて「好きな実感」を意味する2番目のやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自分にとって望ましい“なまなましさ”がどんなものかということを、改めて手探りしていきたいところ。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
隠遁入門
今週のやぎ座は、社会離脱ないし人間離脱を何らかの仕方で試みていくような星回り。
人間はひとりでは生きていけない未熟で弱い個体として生まれてくるという特性から、社会的動物として半ば群れとして生きることを運命づけられた存在と言えますが、そんな中、時おり個が抑圧された自己を取り返そうとして、群れから離脱しようとする現象が置きます。
それは単なる気まぐれや病気のためばかりという訳ではなく、ふと個のうちに宿り、あるいは噴出した大いなる夢や抑えきれない悲しみに目をくらまされたのかも知れません。
その向こう側に待ち受けているであろう無限の苦難を忘れさせるだけの魅力を放つ離列という行為のことを、日本でも「隠遁」として尊ぶ文化を特に中世以降育んできました。今週のあなたもまた、そんな隠遁者の系譜に連なるように、みずからの離列を模索していくことがテーマとなっていくでしょう。